【国会レポート】Made in Japan・日本産業の復権【2022年5号】

最先端の産業インフラとは

私が2030年代までに実現したい産業インフラの一つを、NHKで中継された予算委員会で紹介したところ、Twitterでは、「質疑、とても良かった。 休校中の子と、久しぶりに国会中継に見入ってしまった。」、「日本の将来に投資しようという話。久しぶりに聞いた。」など、同時並行的に多くの書き込みがありました。

Twitterでは、「大島敦さん、『どうして私の人生が1960年代の技術で終わらなければならないのか?ということをあちこちの研究者に聴いてきた』 おお、センス・オブ・ワンダー(感動)だ。」と温かい評価を頂きました。
インターネットもパソコン(使い易い画面)も、1960年代に生まれた米国国防総省の技術です。そして、世界で一番早くソビエト連邦(現ロシア)が人工衛星を打ち上げたことで、米国がショックを受けて当時のケネディ大統領が1960年代末までには月面に人類を送ると宣言し、そのために半導体が誕生し、その後、どんどん小さく安くなったので、例えばスマホなど、私たちの手に乗るようになったのです。
従って、この1960年代の技術の延長上で私の人生が終わってしまうのが面白くなく、出会う研究者に聞き続けていたところ、昨年、春にNTT社の研究部門の責任者の方から、「光電融合技術」に基づくIOWN(InnovativeOptical and Wireless Network)構想の説明を受けました。これは日本の産業基盤を変える技術です。日本の通信インフラを「光電融合技術」に置き換えて行けば、我が国の社会そのものが次の時代をリードできる技術と直感したのでした。
現時点でのインターネットでのやりとりは、送れる情報量に制限があり省略して送っています。例えば、音楽など人には聞こえない音域は省いて送信しています。「光電融合技術」ですと、そのままの情報量で送れます。つまり、これまでと比較にならない情報量になります。現在のSkypeやTeams、Zoomなどweb会議では、時間の遅れ(タイムラグ)がありますので、喧嘩しても口論にはなりませんが、「光電融合技術」では、タイムラグ(遅れ)が生じません。この環境を日本の通信インフラとして、各家庭まで敷設したときに我が国の産業競争力が他国に対して圧倒的に優位に立つことになります。
つまり、どこでも仕事や学びができ、場所にしばられない生活を実現できるようになります。例えば、PC画面を通しての会議から、VRのゴーグルを装着すれば、そこには会議室があり、参加者の表情もリアルに伝わり、さも相対で会議しているような臨場感がある。多言語であっても自動通訳でストレスを感じることなく、会議が進行するようになります。
先日、産業総合技術研究所を訪問し、「光電融合技術」について伺った際に、アメリカでの光技術研究は、中国人を中心にアジアからの研究者が多いと伺いました。今、NTT社が優位に進めている研究も、国がしっかりと我が国の産業基盤にするとの方向性を示し、2030年代に実現する社会像を示し、投資誘導しないと抜かれてしまう恐れがあります。

私がお世話になった官僚の方から、「大島議員と総理のやりとりは、大反響を呼んでいて、感激しています。お陰さまで研究者の士気も上がります。有り難うございました。」とショートメールが寄せられました。

「産業国家としてのものづくり」の復権

日本では、貿易収支が赤字傾向となり、付加価値を生み出す力は、取り返しがつかない程に弱まっています。例えば、太陽光パネルも風力発電設備もほぼ輸入に頼っています。
従って、2030年代を見据えて、国主導で、世界水準を超えた研究開発力強化と最先端の産業インフラを整備することが急務です。その分野に国費を投入することで、民間投資の予見可能性を高め、民間企業の研究開発力を強化できます。
そして、国が提供する最先端の産業インフラの上で、ビジネスでの喜びを感じられる、自由な発想が叶えられるように、規制改革や制度改革を進めることで、イノベーションを喚起することが国の役割と考えます。今、研究開発を強化して「ものづくり」を国内に回帰させることで、我が国の可能性を引き出せる時代になったことを実感しています。