【国会レポート】ウクライナと周辺国へは惜しまず支援したい【2022年4号】

昨年の衆議院選挙最終日、駅前での街頭演説で、ドイツ出身で日本に帰化された知り合いのご婦人から、「schon gewählt!(ショーン ゲヴェールト)もう投票したよ」と、声を掛けて頂きました。私は、統一前の西ドイツに3年半ほど会社都合で駐在しておりました。1986年4月26日に、チョルノービリ(チェルノブイリ)原発(ウクライナ)の事故があり、原発事故では汚染物質は風に乗って広がることを実感しました。国会議員になってから、チョルノービリを訪れています。

自由がないことで付きまとう閉塞感

1989年11月9日、勤務先の輸出部で、ベルリンの壁が崩壊したと一報を聞いた時の衝撃を今でも覚えています。そして、1991年に、旧ソビエト連邦が崩壊するまでは、旧ソビエト連邦(現、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、ジョージアなど)、ポーランドやルーマニアなど東欧諸国の人々が、日本やアメリカ、西ドイツなど資本主義国家に渡航することは、極めて難しかったのでした。私が、西ドイツで勤務していた時は、東西ドイツの国境には幅何百メートルもの緩衝地帯があり、東ドイツの中にポツンとある都市、西ベルリンは壁で囲まれていました。当時、東ドイツの都市、ライプツィヒで開催された大規模な見本市に出張した際に、ホテルが満室で普通のご家庭に民泊したことがあります。そのご家族と一緒にテーブルを囲んで夕食をとった際に、「あなたはどこにでも旅行できるが、私たちはユーゴスラビアまでしか行けない。」と、伝えられました。移動の自由が制限されて、閉じ込められていて、24時間つきまとう閉塞感を感じたのでした。
今、避難民をできるだけ受け入れているポーランド、ハンガリー、スロバキア、ルーマニアなどは、資本主義国家と社会主義国家とが対立する冷戦下では、社会主義国家に属していました。ですから、二度と移動の自由がない抑圧された社会に戻りたくないとの思いで、ウクライナからの避難民を受け入れていると思います。ですから、私たちが享受する自由のために、ウクライナと周辺国への援助は惜しんではならないのです。

戦争にはルールがある

まず、他国から侵略されると、当然に反撃します。ロシアに侵略されたウクライナは、自国の軍で防衛しています。この権利が個別的自衛権です。今、ウクライナには個別的自衛権しかありません。個別的自衛権の他に集団的自衛権があります。これは、国と国の間で条約を結び、締結国の一方が他国から攻撃されたら自国が攻撃されたと見做して反撃する自衛権です。ポーランド、ルーマニア、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカなど30ヶ国が加盟する北大西洋条約機構は、加盟国が外部からの攻撃に対応して相互防衛に合意することで、域内いずれかの国が攻撃された場合、集団的自衛権を行使して共同で対処することができます。ウクライナと同じようにロシアと国境を面して、他国との安全保障条約や相互防衛条約を結んでいないフィンランドは、今回の事態を受けて、急速に北大西洋条約機構への加入に舵を切っています。
我が国はどうでしょうか。我が国は、「日米安全保障条約」によって、米国との間で同様の条約を結んでいます。従って、我が国への他国からの攻撃は、自国で防衛することが基本ですが、米国が後ろ盾になっているので抑止されています。ウクライナでは、自国は自国のみでしか防衛するしかないので、ゼレンスキー大統領は、国民を鼓舞し、各国の議会で演説をし、国際社会の理解と賛同を広げることでロシアに対峙しています。相互に条約を結んでいたとしても、自国は自国で防衛する強い意志があってこそ、条約を結んでいる同盟国も、自分の国が攻撃を受けていると見做して、防衛に力を貸してくれるのではないでしょうか。
また、「日米安全保障条約」は、他国の同様の条約とは大きく異なっている点があります。それは、締結国の一方であるアメリカ合衆国が攻撃を受けた場合に、我が国は、我が国が攻撃されたと見做して反撃することは求められていないのです。ロシアのウクライナへの侵攻とウクライナ人の反撃は、自国のことは、まず自国で防衛しないと誰も助けてくれない。国際政治そのものを私たちは、目の当たりにしているのです。
学生時代、夏休みを利用して、西ドイツに渡り、ドイツの電力会社で人事管理のインターンシップをしていた時、アウトバーン(高速道路)を閉鎖してドイツ連邦軍が軍事演習をしていた光景と、東西冷戦下の西ドイツで駐在員として生活していた際の緊張感を思い出します。当時、日本へ一時帰国した際に、成田空港に降り立つとホッとしたものでした。東西冷戦下での緊張感を日本でも感じざるを得ない時代に入ったと思います。

自国のことは自国で決められるという独立国家としての尊厳を保つには

他国から侵略された際には、まず、個別的自衛権で反撃し、集団的自衛権があれば締結国と共同して防戦して、その間に国連で加盟国が協議して「侵略」となれば、国連の枠組みで対応することになります。これを集団安全保障と言います。しかし、米国、中国、イギリス、フランス、ロシアの第二次世界大戦で勝利した国は国連決議に拒否権を持っており、その常任理事国のロシア自身が侵攻したので、国連は機能不全に陥っています。第二次世界大戦前に戻ったかのような政治状況に、私たちは直面しています。
自国のことは自国で決められるという独立国家としての尊厳を保つためにも、我が国は、国力、つまり経済力を付けて行くしかないと考えます。NHKで中継された予算委員会で、そのための政策を提言しました。