【国会レポート】科学的な根拠に基づいた政策決定と結論に至った説明責任を果たす【2021年3号】

オリンピックでは、マスコミに報道されるされないにかかわらず、全ての競技でその競技を極めたアスリートが集います。1年の延期で、今日まで、想像できない緊張感を維持されたと思います。ベストを尽くせる大会になることを願っています。

さて、地元でワクチンを接種した方は、皆さんほっとされています。「何回も電話したがずっと話し中で、孫に手伝ってもらってスマホで予約できた」とお話をなさる方が少なくなかったのも事実です。そして、ワクチンを接種されたご高齢の方々は、徐々に動きが活発になっているようです。旅行代理店で営業を担当している方からは、最近、高齢者からの問い合わせが増えてきたと伺いました。

これまで私が所属する内閣委員会や厚生労働委員会で、分科会は専門家として、政府が求める課題について提言を行い、提言に基づく判断は政治が責任を負うので「尾身先生、忌憚ないご意見を」と度々発言して来ました。

政府分科会尾身茂会長は、東京五輪・パラリンピックについて「無観客の開催が望ましい」と提言しています。観客を入れての開催が、アスリートにとっても励みになると思いますし、多くの方がその場でアスリートと時間を共有したい気持ちも、大会ボランティアの皆さまの東京2020に参加し支えたい情熱も叶えたいのですが、現在の感染状況を考えると、尾身会長はじめ分科会の先生が提言された無観客で開催されたことはやむを得ないと考えます。

今後も、国民の理解を深めるためには、①分科会への諮問、②分科会の提言、③政府の判断と判断に至った理由説明が必要です。感染症対策のような因果関係がはっきりしている領域では、科学的根拠に基づいた政策決定と結論に至った理由を国民に説明し続けることが、国民に安心感を与え、国民の協力を得られるのです。

自主的な検査を勧奨する

接種を行う期間は、令和3年2月17日から令和4年2月末までの予定です。しかし、接種が先行するイスラエルやイギリスで、インド株の感染が広がっているとの報道もあり、状況を見極めるまでは慎重な対応が必要です。

そして、6月21日に東京都の緊急事態宣言が解除されると、感染は時を待たずに広がり、7月12日に再び緊急事態宣言となりました。国民一人ひとりに、感染防止についての認識を新たにして頂くことが必要です。そのためにもPCR検査や抗原検査を、いつでも、どこでも、誰でも無料で受けられるようにして、自主的に検査と隔離を促すことが望ましいと考えます。無症状であっても陽性との結果であれば、その瞬間から行動が変わるのではないでしょうか。

新型コロナウイルス感染症対策は分科会が決める基本的対処方針で具体化されますので、厚生労働委員会で尾身茂会長に、私の経験を踏まえて以下の点を伝えさせて頂きました。

1私は今年になって2回ほど自主的にPCR検査を受けたが、検査キットを送ってもらい、検体を郵送すれば翌日には結果が判明した。PCR検査の検体は唾液なので負担感はない。現在、企業でも、学校でも、スポーツクラブでも集団での検査を希望すれば、モニタリング検査の一環として無料で検査できるが、都道府県が限られていることと、決められた日時での事前説明を受けなければならず、申し込んでから1ヶ月を要する。地域を全国にすることと、もっと柔軟な対応で即応できるように改善が必要である。

2また、私は出張する前日には抗原検査を行っている。抗原検査は、抗原検査キットに唾液を含ませれば10分程度で結果が判明する。市役所でも、学校でも、塾でも、スポーツクラブでも無料で配布する。例えば、飲食店には抗原検査キットが常に用意され、来店された方に配布して、その場でも、帰宅してからでも、自主的に検査することで、検査と隔離の勧奨が必要である。

治療薬開発が今後の課題

インフルエンザでも予防接種のワクチンとともに、効果的な治療薬が開発されたことで、罹患したとしても以前ほどにはつらい思いをしないで済むようになりました。

製薬会社としては、新薬として開発に成功すれば多くの利益を見込めるので、新薬開発に経営資源を投入して進めることは当然です。一方、既存薬であっても、新型コロナウイルス感染症に治療効果が見込めるものもあります。既存薬ですので、副反応についても検証済みで安全性は担保されています。しかし、新型感染症の新規治療薬として国に承認を求めるには、罹患された方に服用して頂き、安全か、効果が認められるかを試験する治験などで莫大な費用がかかります。特許切れの薬を新型感染症用治療薬として、治験を進め、承認を得るメリットは製薬会社にはあまりありません。今、見込みのある既存薬の薬事承認に向けての治験は、医師のグループが主導して細々と行われています。

北本市にある北里大学メディカルセンター(病院)の設立に尽力され、ノーベル賞を受賞した大村智博士が開発したイベルメクチンも有望な治療薬の候補です。先日、北里研究所を訪問して、新型コロナウイルス感染症治療薬として、イベルメクチンの可能性と薬事承認への取り組みを伺いました。

イベルメクチンは特許切れの薬(駆虫薬)で、「医師主導」で治験が行われていましたが、有り難いことに、7月1日に製薬大手興和が企業治験を開始すると発表し、本格的に薬事承認に向けての治験が開始しました。医師でもある同僚議員とともに、国会でイベルメクチンを取り上げることで、政府の取り組みを促しています。