【国会レポート】新型コロナウイルス感染症対策について【2020年3号】

新型感染症はしっかりとした対応が必要

私は、2月7日、10日、17日と後援会の旅行を予定しておりましたが、1月には、中止を決めて、皆さまにご連絡させて頂きました。新型コロナウイルス感染症のリスクを考えての判断です。

3月10日付けビルト紙(ドイツで一番発行部数の多い大衆紙)の報道によれば、メルケル首相の発言として、「ワクチンが開発されなければ、国民の6割から7割が感染する」、「感染を遅らせるためにはさらに催しは中止しなければならない」と伝えています。また、同国保健相は、「感染者のなかで8割はほとんど症状なく流行を経験する」とも指摘しています。感染症研究の長い歴史を持つ国の指導者の認識です。

さて、現代に生きる私たちは、これまで何度にもわたって、感染症の流行を乗り越えて来た人類の子孫です。ですから、産まれ持って感染症への免疫(重症化しないための抵抗力)を持っています。しかし、「新型」とは、私たち人類がこれまで経験したことのない未知の感染症なので、誰も「免疫」は持っていません。従って、毒性の強弱にかかわらず、しっかりとした対応が必要となります。

「感染爆発」と「医療崩壊」を起こさない

私が中国での視察を終えた1月15日、武漢市では普段と変わらない生活が営まれていました。その1ヶ月後には、6000万人が暮らす湖北省は交通が遮断され、省都で1100万人が暮らす武漢市は閉鎖され、自宅からの外出も制限されています。中国の危機対応は、国の威信をかけた対応となっています。しかし、3月26日現在も、武漢市の閉鎖は解除されておりません。防犯カメラがオンラインで結ばれ、顔認証システムで誰がどこにいるか特定でき、町内会単位で出入りが管理され、感染経路が追える中国でさえ、新型ウイルスは撲滅できていません。

専門家の方の話では、感染症には流行のピークがあり、いかにピークを抑えて重篤な患者を受け入れてくれる病院を確保し続けことができるかが重要になります。恐らく、武漢やイタリア、そしてイランでは、ピークを抑えきれずに「感染爆発」を起こして「医療崩壊」になってしまったのではないでしょうか。そうなると収拾には相当に手こずることになります。感染症病床、人工呼吸器、人工肺(ECMO)の受け入れ能力を超えないように感染を抑えるとともに、それぞれの能力を増強することも喫緊の課題です。我が国で、様々に自粛をお願いしているのは、「感染爆発」を起こさないようにするためです。ですから、当分はご無理を国民の皆さまにお願いすることになりますが、今のところ「感染爆発」が起きていないことは、国民の皆さまの公衆衛生への理解が深いことによっていると考えます。

ただし、武漢市は、道路の植栽が整い、30階建てのマンションが林立し、イオンモールと直営スーパーが8店舗あり、ホンダの最新鋭工場が稼働する近代都市です。武漢市都市部の人口は860万人で、人口密度は約1.5万人/km2、東京23区は920万人で、約1.5万人/km2で同じです。普段と変わらない武漢市の日常が一瞬にして「感染爆発」を起こしたことを銘記しなければなりません。

流行の段階に応じて政策提言をする

これまで、2月18日付の本レポートで、最悪のケースとして、一つは「感染が広がり病院の受け入れが難しくなること」、二つ目は「日本からの入国を米国が認めないこと」を例示し、そうならないように、まず強い対策を打ち、徐々に緩和する措置が適切と提案しています。そのためには、新型コロナウイルス感染症を「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の対象にすることが必要と付記させて頂きました。そして、3月13日には同法改正案が成立し、特措法の対象となりました。既に同法に基づいて都道府県などでは、行動計画が定められていますので、今後は法に基づいての対策が取られることになります。同法律は、2009年に世界的に流行した新型インフルエンザへの対応を踏まえて、2012年に民主党政権下で制定されています。同法は、新型インフルエンザでも、世界で何百万人も死亡するような致死率が高い新型インフルエンザを想定としています。新型コロナウイルス感染症の病原性は強毒性の新型インフルエンザほどには高くありませんが、今後、新型インフルエンザ流行時に想定していた「感染爆発」が起きるなど「緊急事態」発生の際には、1外出自粛要請、興行場、催物等の制限等の要請・指示(潜伏期間、治癒するまでの期間等を考慮)2住民に対する予防接種の実施(国による必要な財政負担)3医療提供体制の確保(臨時の医療施設等)4緊急物資の運送の要請・指示5政令で定める特定物資の売渡しの要請・収用などの措置を講ずることができるようになります。

新型インフルエンザ特別措置法の制定にあたって

新型コロナウイルス感染症を扱うワイドショーで岡田晴恵さん(白鴎大学教授)を見かけると、我が国の新型インフルエンザ対策は同氏の熱意で進んだことに改めて思いを致します。

14年前、2006年、末松義則衆議院議員が、朝、駅で街頭演説をしていると、一人の女性から声を掛けられ、新型インフルエンザ対策の必要性について熱心に訴えられました。その女性が、当時国立感染症研究所の研究員であった岡田晴恵さんです。末松議員から、「この人の言っていることは傾聴に値するから聞いてみないか」と紹介されました。その後、新型インフルエンザ対策について7回にわたって国会で取り上げて政府に注意を促しました。2009年には、当時流行した弱毒性新型インフルエンザ対策について予算委員会で取り上げて、ワクチンの開発生産体制を整備する必要性を提起しています。今回、新型コロナウイルス感染症対策の裏付けとなる「新型インフルエンザ等対策特別措置法」制定にあたって、岡田晴恵さんのご貢献があったことに改めて心より敬意を表します。

終息には相当な時間を要する

最後に、感染リスクがなくなり、例えば、安心して団体旅行ができるまでには、相当な時間を要すると考えます。1年以上かかるかもしれません。企業経営への影響は、日々大きくなる恐れがあります。リーマンショック以上であれば、倒産と失業の増加で自殺者数が増えることが考えられます。今回の新型インフルエンザ等対策特措法改正案の採決では、皆さまから頂いたご意見に基づいて、委員会での決議を行いました。その中には、政府が金融機関等に対して柔軟な対応を要請することや自殺対策に万全を期すことも明記させて頂きました。

私が責任者として取りまとめた付帯決議の一部を紹介させて頂きます。政府は本法の施行にあたっては、決議の内容に遺漏なきを期さなければなりません。

「〇必要と認められる者については、早期にPCR検査を実施するとともに、健康観察を行うための体制を確立すること。

〇今回の事態により、大幅なマイナス成長になる可能性が極めて高いことを前提に、消費と雇用に重点を置いた万全の金融・財政政策を講ずること。その際、サプライチェーンの寸断等や風評被害を含む顧客の大幅減少により大きな経済的影響を受けている中小・小規模企業、個人事業主・フリーランスのうち、新型コロナウイルス拡大に伴う減収が一定程度を超える事業者に対して、事業継続が可能となるよう特に配慮すること。

〇緊急事態おける施設利用等の制限要請等を行うに当たっては、その実効性の一層の確保を図るため、当該要請等によって経済的不利益を受ける者への配慮を十分に検討すること。

〇企業及び個人(奨学金を含む。)に対する貸付条件等について、国から金融機関等に対して柔軟な対応を要請すること。

〇生活や経済に支障が生ずる国民や企業が相談できる窓口を開設し、ワンストップで各種支援制度の申請手続が行えるよう早急に検討すること。その際、緊急的かつ深刻な経済情勢に鑑み、申請手続における提出書類や各種条件を極力簡素化するとともに、審査は迅速かつ合理的に行うようにすること。

〇過去の経験に照らせば、新型コロナウイルス感染症の影響が、健康問題にとどまらず、経済・生活問題、さらには自殺リスクの高まりにも発展しかねない状況となっていることを踏まえ、政府は一人の命も犠牲にしないという強い決意のもとに、全国の自治体と連携し、自殺対策(生きることの包括的支援)を万全に講ずること。

〇国民、企業などが、不必要な混乱を避け、冷静で的確な行動がとれるよう、科学的見地からも正確で必要十分な情報発信を適時、適切に行うこと。

〇農水産品の流通及び輸出入に支障が生じないよう努めるとともに、国産の輸出農水産品について科学的知見を踏まえて対応し、風評被害防止に努めること。

〇中小企業金融の返済期限、雇用保険の給付期間の延長などについて、東日本大震災に伴って実施された期限延長措置にならい、その実施を検討すること。」

最後に、新型コロナウイルス肺炎対策は、災害対策と同じで、党派を超えて対応するよう行動していきます。