【国会レポート】台風19号を経験して明かになった地元の課題【2019年6号】

台風19号を経験して明かになった地元の課題

台風が地元を通過する場合には、カッパを着て長靴を履いて見回りをしています。これはサラリーマン時代に台風が勤務先の湾岸にある製鉄所を襲った時など、夜通しで製鉄所の操業を確保していた経験に基づいています。

さて、今回の19号は、事前に巨大台風と予報されていましたので、これまでよりも身構えての対応でした。まず、10月12日土曜日の朝7時には私の地元の4市1町の責任者の皆さまに、危機レベルを共有するために電話で連絡をさせて頂きました。私の経験から、私たちが暮らす地域は概ね大宮台地の上に位置していますので、荒川が破堤(堤防が決壊)しなければ浸水する箇所はある程度特定できます。上尾市では、平方地区、江川、鴨川、芝川、原市沼川流域など、桶川では、江川流域、北本市では、赤堀川沿いのワコーレマンション、鴻巣市は元荒川沿い、伊奈町は栄町などの地域です。もちろん荒川の堤防が決壊すれば鴻巣市と伊奈町は大きな被害を被るので状況は一変します。

2年前の台風21号での経験に基づいて対応する

12日土曜日の午後に自宅をでて、まず向かったのが北本市朝日にあるワコーレマンションです。2年前の台風では店舗が床上まで浸水してしまいました。今回は、周辺の用水の水量はぎりぎりまで上がっていましたが、水は出ていません。次に2年前の台風では田んぼが川の様になってしまった常光経由で鴻巣市笠原に向かい、元荒川沿いの知り合いのご自宅を訪問。皆さん、家に閉じこもっていて元荒川の水位が上昇しているなど、ご自宅周辺の状況については意外と知りません。自宅でニュースなどで情報を知ることも必要ですが、2階などから自宅の周辺で何が起きているのかを観察することも重要です。元荒川の水位は上昇してぎりぎりでした。

次に、鴻巣市糠田と吹上に向かいました。荒川が破堤しなければ浸水する恐れは少ない地域です。吹上では、知り合いの農家を訪ねて、米麦の刈取り状況について伺うと、堤防内側の麦の収穫は終わっていると聞いて安心しました。武蔵水路が荒川への放流を止めたとの情報を得ましたので、武蔵水路の水位を確認してから鴻巣市御成橋に向かいました。

熊谷では氾濫危険水位まで上昇していましたので、熊谷を選挙区とする同僚議員に電話にて状況を確認しながら御成橋を渡りました。川幅日本一の地点です。東京への荒川の水は、一旦鴻巣市糠田から御成橋付近にかけての広大な川幅で受け止めてから下流に流します。

御成橋を渡ると、その時は土手の上部までの水位は余裕がありましたが、濁流が川幅いっぱいに広がり、流れる様子には恐怖感を覚えました。渡りながら地元首長にその様子を伝えさせて頂きました。渡りきった後にすぐに再度御成橋を渡って引き返し、中山道を北本に向かいました。

面談は申し込んでおりませんでしたが、北本市にある県土整備事務所を訪れました。職員の方に、同事務所にあるゼンリンの地図で上尾市平方にある川岸屋食堂さん付近がこれまでも浸水しているので気になっていることを伝えさせて頂きました。

それから北本経由で桶川市江川に向かいました。すでに夕方で暗くなってきました。車の通りも少なく、いくつかのコンビニが営業していることが不思議に思えました。私の桶川の事務所前の県道川越栗橋線は、河川が氾濫して江川を渡ることはできません。2年前の台風21号よりも水位は高く感じられました。江川については、荒川に流れ込む樋管を締めるタイミングと国土交通省からのポンプ車の派遣要請がポイントです。私も台風が来る前には電話にて関係部局にポンプ車の準備を依頼しました。

徐々に風雨が強くなりましたので見回りは中止して、その後は、地元県議と連絡をとりながら、対応させて頂きました。

自主防災会が自律的に避難活動を行う

翌日、上尾市平方地区に向かい被害状況を確認。新しく開設した老健施設を訪れると、一階がすべて水没してしまっています。「この80年間でここまで水位が上昇したことはなかった。これまでの経験では被害に遭うことはなかった。」と伺いました。

また、同地区では多くの家屋が床上浸水してしまい、地元では一番被害が多かった地域です。お話を伺うと、急速に水位が軒下まで上がり、近所の方にカヌーで救助して頂いた方もいらっしゃったそうです。自治会長さんや自主防災会の取り組みで、近くの集会所を避難所として開設することで、自宅の泥かき、片付け、修繕などがし易くなり、また、近所のお母さんたちが食事のメニューも考えて、一週間に渡る炊き出しをしていただいたと伺いました。各地域での自主防災会の取り組みが、災害時には臨機応変な対応で、住民の生活確保につながったのでした。

今後の課題と対応について

台風19号の被害から私の地元でもいくつかの課題が明かになりました。大宮台地に位置している上尾市、桶川市、北本市では、予想を超えて水位が上がってしまい、多くの家屋が床上浸水をしてしまいました。荒川の堤防ぎりぎりまで増水した際に、自然堤防(台地の荒川辺り部分)のどこまで水位が上がるかを検証し、浸水の恐れのある家屋を特定することで避難を速かに行うようにすること。また、上尾市平方地区では、堤防を作る計画がありますが、地元の方から出来るだけ早く堤防を建設して欲しいとご要望を頂きました。堤防の建設には相応の期間は必要ですが、早期の建設に向けて尽力する決意です。

今回はこれまでになく水位が上がり、熊谷では氾濫危険水位を上回りました。私が一番恐れたのは破堤です。土手の整備も引き続き進めるとともに、避難のあり方についても検証が必要と思います。吹上では1947年のカスリン台風で破堤(決壊)した経験を持っている方もいらっしゃいますので、電気が来るうちにご飯を炊いて2階で待機された方も多かったと伺いました。専門用語で言うところの垂直避難を実践されています。

国土交通省のハザードマップは良く出来ていて、ネットで、堤防が決壊した際に家が倒壊する範囲、洪水の水位、水が引く期間も表示されています。ご自身の家がどの場所にあたるのか確認すれば、垂直避難で対応できるのか、ある程度は想定可能です。是非、確認して頂くことをお願いいたします。

後日、地元の運動会に出席した際に私の同級生から、避難所の防寒対策やベットのクッションのために、梱包用緩衝材(プチプチ)が有効であり、防災資材に加えられないか相談がありました。台風19号通過の翌々週の内閣委員会での質問で、防災担当大臣に必要性を訴え、政府のプッシュ型支援の物資として検討することになりました。