【国会レポート】子供たちのコミュニケーションはSNSとメールがほとんど【2019年5号】

この夏、受け入れたインターンシップの大学生に最近電話を掛けたのはいつかと聞くと、ある学生は、ちょっと考えてから「一週間前かな」と答えるのでした。普段のコミュニケーションは、SNS(LINEなど)やメールで、電話など音声でのやり取りは、少なくなっているようです。

10代のコミュニケーションは、SNSとメールがほぼ9割で、電話など音声が1割です(総務省調査)。私のレポートを読んで頂いている方は、相談と言えば電話相談であり、ラジオでの無着成恭先生の「子供電話相談室」を思い出す人が多いのではないでしょうか。

9月からの新学期を迎え、2年前から、いくつかの自治体や文科省、厚労省では、LINEなどSNSでのいじめや自殺、虐待の相談を行なっています。先日、その相談を受ける現場を訪れ、SNSでのチャット(相互に文字を打ち込みながら画面上で会話すること)のやり取りを見学させて頂きました。

SNS やメールで見えてくる子供たちの本音

「教室に入るとドキドキする」、「あだ名で呼ばれるので、学校に行きたくない」、「宿題をしないと夕食を食べさせてもらえない」、「友だちが自殺を考えている」など、打ち込まれる相談に、しっかりと訓練を積んだカウンセラー(専門的な相談者)が、一対一で、キーボードで画面に打ち込みながら回答していきます。長ければ1時間以上、悩みを聞いていきます。場合によっては、カウンセラーがベテランのチームリーダーに相談しながら、適切な言葉を探して会話を続けていきます。子供たちが送ってくる文章の行間を読み取りながら、そして、寄り添いながら、一人ひとりに答えていきます。なかには、付き合っていたボーイフレンドから嫌がらせを受けているとの相談に、警察の相談窓口に連絡したりもします。カウンセラーの方たちの対応で多くの子供たちが落ち着いていくことが実感できます。

カウンセラーの方から、実は、真面目で責任感の強い子どもが、学校に行きたくなくなる傾向があるそうです。「学校に行こうと思うとくたくたに疲れてどうしようもない。」、いじめられないために良い子を演じるのは疲れる。だから学校に行きたくないと。地元の行事に参加すると校長先生とお話しする機会があります。「最近の子供はおとなしくて良い子ばかり」と聞いた際に、そんなものかなと思ったのですが、実はその裏には、良い子であらなければならないと考える複雑な思いが潜んでいるかもしれません。

子供たちからの、SNSでの相談内容が普段では見えない本当の気持ちと思うのです。本人が特定されない匿名での相談による安心感もあるのでしょう。

試行錯誤しながらも、子供たちの悩みに答える

2年前の当初からたずさわっていらっしゃる方にお話しを伺うと、ここまで来るまでには、試行錯誤を繰り返して来たそうです。また、10代のコミュニケーションは電話ではなく、ほとんどがLINEなどSNSかメールですので、電話相談に比べて相談件数ははるかに増えたそうです。そして、もっと子供たちの相談を受けたいのですが、行政からの受託で行なっているので、予算の制約もあり場合によっては、すべての相談を受けきれないこともあると伺いました。私が伺った団体では、30人のカウンセラーが、同時に2人の相談を受けながらも懸命に相談に応じていました。

特に家庭内の虐待では、子供が固定電話で相談することは、親もいることもあり、困難と聞きました。SNSであれば、誰にも分かることなく、連絡や相談ができるのです。カウンセラーが、子供が親に分かることなく、ポツリ、ポツリと送って来る言葉と行間を理解しながら、根気よく子供の置かれている状況に迫ることができます。

私がインターネットを使い始めたのは1995年です。その当時から、やり取りがなくてもオンラインでお互いがつながっていることの安心感が指摘されていました。対面では実現できない、いつでもどこでもスマホがあれば、誠実に相談に応じてくれる安心感がSNSでの相談にはあると思います。子供たちの孤立感や疎外感を救ってくれるメディアの一つと実感しました。

しかし、現時点では、その取り組みは試験的な段階で、十分な予算措置ができていません。今後は、相談内容の検証と事例の共有化を進めながらも、本格的な導入を図る段階と判断します。

自死される方が少ない社会を目指して

自ら命を絶たれる方が少ない社会が理想です。自殺者数は、私が自殺対策の担当副大臣として、予算を確保して地方公共団体との連携を進めるなど具体的に政府が取り組み始めてから、10年間で1万人以上減少しました。しかし、残念ながら若年者で自死する方は減っていません。

自死が増えるのは、3月と9月です。学校や職場の環境が変わる際に命を自ら絶たれる方が増える傾向にあります。その期間を国は自殺対策月間としています。これからは、従来の電話相談も大切ですが、SNSやメールでの相談窓口もさらに充実するように政策提言を行います。