【国会レポート】2020年代を通して世界と我が国のあり方が定まる【2019年4号】

今、世界は新しい秩序形成に向けて動いています。その結論はまだ見えていません。

今年から始まる2020年代を通して、次の世紀の着地点が見えて来るでしょう。

ですから、これから政治が下す一つひとつの判断が我が国のゆくえを決めて行きます。

政治は経済力によって政策の自由度が決まります。経済はその国の持っている科学技術の創造性を超えては発展しません。

政治の役割は、私たちの国の可能性を引き出すことで、次の世代にバトンを渡すことです。次の世紀を見据え、私たちの国に集う人々が多様な力を発揮できるように、全力で取り組んでいきます。

何年か前に、私の知人から頼まれて、これから帰国するウズベキスタンからの留学生に国会議事堂を案内したことがあります。日本語も流暢で礼儀正しく好青年の2人でした。

ところで、平成が始まった1989年11月9日にベルリンの壁が崩壊しました。その2年前にドイツ駐在から日本に帰国し、東西ドイツを出張で行き来しながら、両国は統一するのだろうと感じていました。会社でベルリンの壁崩壊の一報を聞いた時の衝撃を今でも覚えています。

その2年後、1991年にはソ連が崩壊して戦後の秩序が終わりましたが、ベルリンの壁崩壊の後の世界秩序が、いまだに収束していません。2017年1月に中国深圳で取材した内容を本レポートで紹介したように、「米国一極」から世界は「多極化」しているように感じられます。2020年代は、世界のそして我が国のあり方が定まって行く過程ではないかと思います。その胎動を感じるために、国会閉会中にはエコノミークラスを使って自費で海外視察に出掛けています。

今回は、地政学的に我が国にとって重要なウズベキスタンを選びました。一人で出張し、現場に入り込み、人に会い続けました。そのいくつかを紹介します。

若者の中でも日本への関心が高い

JICA/(独)国際協力機構から派遣され、ウズベキスタンの国立外国語大学で日本語を教えている先生を訪問し、受け持つ授業で大学3年生と30分ほど意見交換を行ないました。20人弱のクラスで、男性は2人。女性は早く結婚するので、既婚者や妊娠中の方、出産で授業を休んでいる方もいます。多国籍な印象です。モンゴル系の方、彫りが深くペルシャ系の方、ロシア系の方など。中央アジアの中心に位置し、かつてはシルクロードの都市として栄え、ロシア人の支配も長く、様々な背景を持った方々で構成されていることを実感します。

私が質問すると「テレビでドラえもんやおしんを見たことが日本への関心を持つきっかけとなった」と顔を輝かせて受け答えてくれます。マンガや萌えキャラなど日本のサブカルチャーが発信力を強めていることを実感します。

ビジネス分野でも日本に学び成果を上げている

ウズベキスタンには日系企業の工場はありませんが、いすゞ自動車が出資し、技術協力をしているトラックとバス工場があります。主要部品であるエンジンとシャーシは日本からの輸入で、それ以外のボディなどは現地で生産しています。ウズベキスタン国内で走っているバスはほとんどが「Powered by ISUZU」と後ろに書いてあります。

工場は整理整頓など5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)がしっかりと行われています。自主管理活動は、ようやく今年から着手したそうです。中国深圳では日本企業のものつくりの文化が根付いて、今、世界の製造業の拠点となっています。ウズベキスタンでも、日本のものつくりの文化が根付きつつあります。

そして、ビジネスマンにも日本への関心は高く、JICA/(独)国際協力機構が運営する日本センターには、6ヶ月の夜間のビジネススクールが用意されています。言語は、英語とロシア語です。学費は安くはなく、現地の1ヶ月分の給与に相当する6万円から8万円と聞きました。それでも入学への倍率は3倍程度あります。

私が、訪れた時は卒業試験の最中で、部屋に足を踏み入れることを躊躇するほど真剣に30人のビジネスマンが試験に向かい合っていました。6ヶ月でも、受講生にとって多くの気づきがあり、具体的に業務改善や新製品の企画に結びついています。

優秀でやる気のある日本語人材が育つ

視察最終日の夜は、30歳のビジネスマンと夕食を共にしました。一人は、横浜国立大学を卒業、もう一人は日本の大学院を卒業してウズベキスタンの弁護士資格を持つ経営者です。二人とも日本語は完璧です。「2年前に大統領が代わり、改革路線でビジネスし易い環境になった。特に通貨の売買が自由にできるようになって、輸出入がしやすくなり医療機器の輸入を始めたが扱い量は伸びている。これから数年で商売のチャネルが決まるので今が勝負と考えている。日本企業は契約するまでに時間が掛かるが一度決まると約束は確実に守ってくれる」と話していました。ジェトロ所長も同席していましたので、日本企業と日本語が堪能な人材との交流を深めて頂くように頼みました。

さて、日本にはあまり馴染みのないウズベキスタンですが、地理的に重要な位置にあります。中央アジア諸国の中央に位置し、アフガニスタンとも国境を接し、人口も一番多く、農業国で長期的な戦略思考を持っています、親日国であるウズベキスタンとしっかりとした関係を結び続けることが、我が国の外交上の選択肢を広げることになります。

これまでに日本は毎年20人を超える国費留学生を受け入れ、のべで600人を超える日本を理解するウズベキスタンの方が育っています。留学生の援助をさらに充実するように働き掛けて参ります。