【国会レポート】インターンシップ生を受け入れて気づく日本の課題【2019年3号】

私の事務所では、夏休みや春休みに大学生のインターンシップ生を受け入れています。インターンシップとは、大学生が企業や団体で、仕事を通して就業経験を積むことです。就職を控えた多くの大学生がインターンシップに参加していますし、企業も有為な人材を確保するために積極的に受け入れています。かつて私も大学3年の夏にドイツに渡り3ヶ月間、現地の電力会社の人事課に席を置き、ドイツ人の中でインターンシップをしています。その際に、私は、従業員のすべてのデータを見ることができましたし、人事課長と一緒に労使交渉の現場に立ち会ったりして、私に対してすべてがオープンでした。その時の経験がその後の私の人生を決めたので、何か貢献できないかと思い、議員になってからインターンシップ生を受け入れています。

地元では事務所でのミーティングや駅での本レポートの配布から、国会では陳情の対応や委員会での質問に備えた役所と打ち合わせにも同席願い、2ヶ月間ですべてを経験できるようにしています。インターンシップ生の何人かは、その後、新聞社や通信社に就職して、10年後には政治部記者として、取材対象が「私」ということもありました。

この20年間、上がることない初任給

さて、この3月に、インターンシップ経験者で、4月から新入社員として働き始める女子大生が挨拶に来てくれました。大学3年の夏にインターンシップを行い、その後も時々手伝ってもらい、朗らかで、文書力があり、やる気もある学生です。4月からの給与を尋ねたところ、その答えは、「月に20万円、ボーナス3ヶ月」。私が入社したのは37年前です。当時の初任給13万円に比べれば、それなりに上昇していますが、大きな改善があるとは思えません。そして、この20年間は、新入社員の給与はほとんど変わりません。また、給与を時給換算で比較すれば、英国、米国ともに1.8倍程度上昇しているのに対して、日本は、9%減で主要国で唯一のマイナス国です(OECD調査)。

さて、会社員として、20代後半にドイツで海外駐在をしていた際には、週に一回は出張していました。地続きであることは、他国との比較で「政治の成果」を実感できます。当時、ドイツからベルギーやオランダ、フランスなどに自動車で入ると、途端にガタガタして道路が傷んでいることを実感したものでした。ヨーロッパでは、国民が政治の成果や失敗を如実に認識できます。日本は、地理的に他国との比較が難しいために。長期的な停滞が認識しづらいのです。気づかないうちに世界の中で日本だけが豊かになれずにいます。

「下にこぼれない努力をする世代」

また、昨年の夏のインターンシップ生に最近の大学生は何を考えているか、尋ねたところ、「私たちはリスクを取って上にいくよりも、下にこぼれない努力をする」と20歳の大学生は答えたのでした。しかし、考えようによっては、イノベーション(これまでとは次元の異なるビジネスモデルの創造)が起こらず、経済が成長しない日本にあっては、誤った考え方ではなく、極めて合理的な判断でもあります。

しかし、円安で潤っている企業は多いのですが、その分、国の大きさであるGDPはドルベースでは小さくなっていて、国際社会での日本の存在感は薄くなっています。

日銀が毎年6兆円上場株式を購入して株価を支えるとともに、無条件に日本国債を購入し続けていることで金利はほぼゼロとなり、企業や経営者の新陳代謝が進んでいません。そのことで、イノベーションが起きにくい社会となっています。

イノベーションを生み出す社会とは

2012年、ホンダは創業者本田宗一郎氏の夢であったジェット機を生産する会社となりました。本田宗一郎氏に代わる人材を常に輩出するように、集う従業員の能力を引き出し続ける組織を作ったのは共同経営者であった藤沢武夫氏です。私が尊敬する経営者の一人で、同氏は私が卒業した高校が最終学歴でもあります。

政治の役割は、私たちの国の可能性を引き出すことで、次の世代にバトンを渡すことです。例えば、日銀が上場企業株式を買い続けることで株価が下支えされ、企業経営者に自己責任を求めなくなっています。日銀が株式を買い続けることを止め、株式市場を企業業績が的確に反映するよう原則に戻し、金利を上げることで企業と企業経営者の新陳代謝を促すことが必要です。経営者が切磋琢磨する健全な競争社会に戻し、そして、政治が既得権益の壁を打ち破り、誰でも自分の能力を試すことができる社会にすることが、我が国のイノベーションを喚起します。そのために力を尽くしていきます。

追記:10月に消費増税が行われました。残念ながら、日本経済は強くはありません。日本経済が基礎体力を付けるまでは、当分の間、低金利は続けざるを得ないとも考えています。