【国会レポート】私の地元がテレビドラマの撮影現場に【2019年2号】

昨年暮れから今年の1月にかけて阿部寛主演のテレビドラマ「下町ロケット」が放映されました。地元のガゾリンスタンド「しんごや」さんや北本市役所が撮影に使われています。メーカー出身の私としては、製品の技術開発、特許をめぐる係争など食い入るように見ていました。

連続テレビドラマの後半は、日本の農業を強くするために、日本版GPS(測位)衛星(ドラマでは同衛星を「ヤタガラス」と呼んでいました)から降り注ぐ測位電波を利用して、無人で正確に走行する農業用トラクターを開発するストーリーでした。実は、本レポートでも取り上げたことがありますが、同ドラマのモデルになった日本版測位衛星「みちびき」は、2011年9月30日に民主党政権において閣議決定された総事業費2000億円を超える国家プロジェクトです。その閣議決定に深く関与しました。そして、これまで4機の衛星が打ち上がり、昨年12月より、サービスが開始されました。以前、衆議院科学技術特別委員会では、「大島委員が準天頂衛星導入で大変汗をかかれたことは、私も良く存じ上げています。」と科学技術政策特命担当大臣も答弁しています。

東日本大震災後、2011年5月に内閣官房宇宙戦略本部の幹部から、「準天頂衛星に大きなアンテナをつければ携帯電話の電波が宇宙に届く」と報告を受けました。震災後であり、準天頂衛星と携帯電話を直接結ぶ安否確認システムと衛星から直接私たちの携帯電話に津波情報や避難情報を発信する機能を新たに付加することを提案し、そのことで同衛星システムの緊急性が高まり、2000億円を超える事業が実現したのでした。

無人農業用トラクターを可能にした衛星の精度

私たちが使っているカーナビや、スマホの地図上で現在地を示すことができるのは、米国空軍のGPS(測位)衛星からの電波を借用しているからなのです。本来は、米国の航空機や艦船が、あるいは巡航ミサイルが、どの位置を航行し、飛行しているかを正確に把握するために、地球を覆う30機のGPS衛星が測位電波を出しています。私たちは、米国空軍の電波にタダ乗りをしているのです。

地球規模の測位衛星を持っている国は、GPS衛星を運用する米国の他に、ロシアと欧州共同体です。中国は2020年までに、36機の測位衛星を打ち上げ、他国の電波に依存することなく、自律的に自国の航空機と艦船がどこにいるかを把握できるようになります。つまり、他国に依存しないことは、国の独立そのものにかかわるのです。

そのことは、準天頂衛星の説明を受けた時に同時に考えたもう一つの視点です。インターネットもGPS衛星も米国の軍事技術に基礎を置く産業基盤です。私たちの安全保障を考えれば、自国のシステムを一つくらいは持つべきと考えたのでした。

日本版GPS衛星である準天頂衛星「みちびき」を進めたのは測位の精度です。米国GPS衛星が10メートル程度の誤差に対して、準天頂衛星は3から5センチと極めて高い精度です。その正確さが、テレビドラマ「下町ロケット」で、無人農業用トラクターを実現できることにつながったのです。

集約化、効率化で日本の農業を持続可能に

さて、先日もさいたま市にある農業・食品産業技術総合研究機構を訪れ、無人農業用トラクターと無人田植機の走行実験を視察させて頂きました。衛星からの電波を受信して、無人で正確に、しかも熟練者よりも早く正確に走行できます。まだ受信機の値段が100万円を超えますので、北海道で使用するような1500万円を超えるトラクターでは費用対効果は満足できるレベルなのですが、田植機の値段は、一台400万円程度ですので、受信機の値段が大幅に下がらないと普及は難しいと思います。しかし、普及とともに徐々に廉価になると思いますので、数年後には大きな面積の田んぼで無人田植機を見かけるようになるでしょう。

農業者の年齢は高齢化しており、無人化することが日本の農業の生産性を上げ、少ない農業者でも自給率を保つことにつながります。先日も地元で大規模に米麦を生産している米農家の方とお話しした際に、「無人トラクターは、一人で一度に複数台を同時に動かせる。購入を考えている。」と伺いました。

国会での質問で取り組みを強化する

政府の各府省では、例えば、ドローンでの物流など準天頂衛星システムを活用しての取り組みが行われています。その取り組みを後押しするために、私は、「委員会で質問する」と言う手法で対応しています。

まず、国会議員が委員会で質問するとなると、どんなテーマでも、大臣に質問内容の事前説明が行われます。そうすると質問することで、役所の担当者から大臣までの問題意識が共有され、物事がより早く進みます。なぜなら大臣は多忙で、準天頂衛星システムであっても役所の方が大臣まで進捗を説明する機会はありません。

そこで、私が前向きな質問をして行くと、前向きな答弁がなされ、大臣の発言を守るべく、政府が動いて行くことになります。私が所属する内閣委員会では、2回に渡り、国土交通省に対しては自動運転での活用など、農林水産省には無人トラクターや無人田植機の普及などについて質問しています。今後も、日本の産業基盤を強くするために取り組んで参ります。