【国会レポート】今夏の暑さは「一種の災害」【2018年4号】

過ごし易い季節となりましたが、今夏、熊谷では41.1度を記録し、再び日本の最高気温を更新しました。そこで、8月に「熱中症対策を考える議員連盟」を設立しました。

国会議員として政策を提言し実現するには、それぞれ所属する党内での政策議論に参加して、議員の考えを所属政党の政策に反映させることと、志を同じくする議員が党派を超えて、あるいは党内で議員連盟を作り、政策提言や議員立法の提出を行う方法があります。

例えば2016年から、8月11日は「山の日」として国民の休日となりました。この法案は政府が提出したものではありません。超党派110名からなる「山の日制定議員連盟」が、2014年同法案を提出し国会で可決されたものです。

休日が増えるのですから、政府が提出する場合は経済に対する影響など様々な検討が行われ、法案提出には紆余曲折があったでしょう。しかし超党派の議連で各党ともベテランがメンバーでしたので、各政党での法案賛成への手続きがすんなり行われ、法案成立となりました。このように政府では決めきれない政策について、各政党の議員の人間関係を駆使して法案成立を目指せることが、議員連盟の強みともいえます。さて今回の熱中症対策議員連盟は緊急性がありましたので、まず党内で議連を設立しました。また与党と野党、両方の立場を経験した上で、野党の役割とは何かと考えると、旗を立てること、つまり問題がここにあると、いち早くアピールすることです。野党は残念ながら政府とは一体ではありません。しかし災害発生時などに現地に赴き、緊急性や政府が対応すべき課題を明らかにすることで、政府の対応が促されます。したがって「今年の暑さは一種の災害」との認識を気象庁が示したのを受けて、全国で一番暑い埼玉県選出議員として、問題点の指摘と対策を促すことが責務と考えたのでした。

政府と民間事業者からヒアリング

まず議連では、中央官庁から現行の取り組みについてヒアリングを行います。消防庁からは救急搬送の人数と死亡者数、気象庁からは記録的高温と今後の見通し、文部科学省からは学校でのエアコンの設置状況、厚生労働省からは生活保護世帯や社会的弱者への対応などについて説明を受け、意見交換を通して解決しなければならない課題を洗い出しました。

例えば、公立学校の普通教室でのエアコンの設置状況は、東京都は99.9%ですが、埼玉県は76.0%(私の地元ではほぼ100%)です。音楽教室や体育館などの特別教室は更に低い傾向にあります。国が設置費用のほぼ半分を負担していますが、設置を促進するためには、国の交付金算定割合を増やす必要があります。また「一種の災害」と捉えれば、天気予報によっては休校などの措置も必要でしょう。

また今年は時々「日傘男子」を街で見かけました。日傘などに遮熱素材を提供している東レの方にも、議連総会に来て頂きました。実際に日傘やテントとして使用すると遮熱効果があります。今後、学校のカーテンの設置基準に遮熱素材の仕様を入れ込むなど、普及を促進することも有効な対策となります。

酷暑にも拘らず電力需要は逼迫しなかった

さて、今年はこれまでにない猛暑にもかかわらず、電力については逼迫するとの報道はありませんでした。太陽光発電などの普及により、昼間の電力供給量の概ね1割から2割は太陽光発電で対応できています。ただし日中は電源の確保ができていますが、午後になってくると、気温は高いものの太陽光の発電量が落ちてきますので、エリア(電力会社)間の融通で対応していました。省エネが普及して、電力需要も以前に比べ約1割減っていることもあり、太陽光発電など再生可能エネルギーの普及を進めてきた結果、代替エネルギーとして十分に機能しています。

サマータイムよりテレワークの推進が必要

最後に、東京オリンピック・パラリンピックの暑さ対策で、夏の間だけ時計を一時間早めるサマータイムの導入を、政府が検討し始めました。

私は、かつて3年半ほどドイツに駐在していましたが、3月下旬にサマータイムが始まると、その日から一時間早起きしなければなりませんでした。ドイツの冬は来る日も来る日も曇りの日が続き、冬の間は一切太陽が顔を出しません。夏に日光を充分に浴びておかないと体を壊すと聞いていましたので、サマータイムに一定の合理性は感じていました。また、緯度が高く夏は午後11時まで明るいので、仕事帰りに郊外の湖では平日からウインドサーフィン、家に帰ればテニスやサッカーを楽しめるインフラも整備されています。

このようであれば早起きも有効ですが、日本では健康維持のために日光を浴びる必要性はありません。また、早起きに慣れるまでのストレスもあります。

今欧州では、日本とは逆にサマータイムを廃止する議論が起きています。周回遅れのサマータイム導入の検討よりもテレワーク、つまり在宅勤務を促進することで仕事の仕方を見直し、生活の質を高めていく政策が時代に合っていると思います。私も数年前から持ち歩いているiPadを使って、地元事務所にいない場合は、国内でも海外でもスタッフの顔を見ながらミーティングを行なっています。インドのホテルからでも、国内にいるようにリアルに打ち合わせができました。テレワークの環境は十分に揃っています。

オリンピック・パラリンピックの暑さ対策は、競技によっては東京開催にこだわらないなど、サマータイム以外にも方法はあります。これからも政府に対して働き掛けていきます。