【国会レポート】都市部近郊における農業には様々な事業展開が見込める【2018年3号】

私の地元には日本の課題がすべて入っていると考えていますので、声を掛けて下さった方のご意見は政策立案の参考にしていますし、私から取材させていただくことも度々あります。最近、若い農業関係者の方、NPO法人で市民農園を運営されている方からお話を伺う機会がありました。

地元の若い担い手となる農業経営者の方々を訪ねると、ドローンの操縦を習得して農薬散布など新しいビジネスにチャレンジされる方、サラリーマンから就農された方など、ビジネスを切り開いていらっしゃいます。私たちが暮らす地域は、生産地と消費地が一体となっていますので、好条件で農業を営める基盤があります。特に感じるのは、高齢化により農業を退く方が増えている一方で、若い担い手が、米麦でも、大根でも、胡瓜(きゅうり)、果樹でも販売数量を増やし、規模の集約を進めていることです。

私の地元にもサラリーマンから農家になった方がいらっしゃったのは驚きでした。大手量販店に勤めていたその方が転職を考えたのは30代になってからでした。ハローワークでたまたま目に止まった「埼玉県農業大学校4ヶ月農業研修」に申し込んだのがきっかけで、次に1年間コースで本格的に勉強し、新規に就農したそうです。

そこで早速、熊谷市にある同校を訪れて取材しました。授業料は毎日通って年間11万円、その他の経費を含めても年間30万円ほどでしっかりとした年間の研修プログラムによって農業を学べるということです。1年間コースには、若くして新規就農を目指す方とともに、定年退職後に実家の農家を引き継ぐために受講されている方もおられました。

新規就農者に対する国の支援

実家の農家を引き継ぐ場合は農業者の認定を受ける必要はないのですが、自分の農地を持っていないサラリーマンは市町村の農業委員会で農業者として認めてもらわないと農業ができません。認めてもらうには自分で農地を借りて耕作機械なども持つ必要があるのですが、市町村によっては、「明日の農業担い手育成塾」を設置して、同校卒業後の農地の斡旋も含めた支援を行っています。

また、新規に就農する方は国の支援策も活用できるのです。すなわち、45歳までなら国が年間150万円の資金を5年間にわたって支給します。この資金を使いながら5年間で徐々に所得を上げていくことで一人前の農業者になることができる制度です。

なお、2014年2月に積雪災害で多くの農業用ハウスが倒壊した際に、地元のすべてのハウス農家から被害状況を聞き取り、国会で取り上げました。このとき、サラリーマンを辞めて実家の農家を継いでいる方が多くいらっしゃることにも気づき、そういう方々のやる気を維持するためにも、政府はできるだけ早く対策を打ち出すべきであると国会で訴えたのでした。

生産地と消費地が一体であることに、地元の農業の可能性を実感しています。これからも担い手の皆さんを応援していきます。

農業指導付き体験農園の利用

ところで、営農というよりもまず農業に親しんでみたい人たちには体験農園という手もあります。体験農園は農家やNPO法人が運営しており、東京都下ですと年間利用料5~10万円で6平方メートル程度の農地を貸してくれるだけでなく、農具、種苗、肥料、さらに農業指導まで行っています。私の地元にも体験農園を運営しているNPO法人があって、そこは年間利用料3万円(24平方メートル)と安いのに、サービス内容は変わりません。農産物は多種多様でそれぞれ育て方が違いますから、やはり独学だけでは難しく、その点、体験農園での農業指導は特に大きなメリットではないでしょうか。なお、地元の利用料3万円の体験農園でも年間6万円くらいの農産物がつくれるそうです。

生産緑地を有効活用していく

農地ついては、売買や賃貸、住宅地や商業地への転用など利活用の点で様々な制約があります。その中でも市街化区域にある農地は、「生産緑地」として農業を継続するために固定資産税を低くする(300坪で1000円程度)など優遇されてきました。しかし最近では生産緑地でも高齢化や後継者不在などで農業の継続が難しくなってきました。といって農地として賃貸することも困難です。それが今回、通常国会で「都市農地の貸借円滑化法」が成立したことで、個人、企業、NPO法人であれば都市部の地主と直接、生産緑地の貸借契約を結べるようになったのでした。

この法律で生産緑地を利活用する企業やNPO法人が増えていけば、体験農園や市民農園も増えていき、それだけ農業に親しむ人たちも多くなるし、都市部での野菜工場や観光農園など新しいサービスも開発されるでしょう。今、バナナは日本の技術(凍結解凍覚醒法)により温室でなくとも栽培できるようになりました。今後は歩いていける距離にバナナが育ち、直接手でもぎ取ることも可能となるかもしれません。加えて、生産緑地を活用して住宅やマンションと農地とをワンセットにして販売する動きも出てくるでしょう。となると、都市部で農作業をしながら健康を保つというライフスタイルも提案できます。

最後に、我が国はエネルギーと食糧を輸入に頼らければならないことを前提に、外交を展開してきました。今後、人口が減少すると、食糧の需要も減少していきます。とすれば都市農業の振興なども一つの手立てですが、食糧自給率を100パーセンに近づける様々な政策を進めることで、少しでも外交の自由度を拡大することに取り組んで参ります。