【国会レポート】地元の要望を解決するには県と国との橋渡し役も大切【2018年2号】

埼玉県知事と各部局の幹部が年1回、私たち埼玉選出の国会議員(全党派)に埼玉県の要望を伝える会合が東京で開かれます。このときに埼玉県から国会議員に手渡されるのが厚さ1センチ・200ページくらいの冊子の提案・要望書です。そこには社会資本整備、教育、福祉、高齢者対策、消費者保護、中小企業育成、観光など埼玉県の国に対する具体的な要望が全部書いてあります。私はサラリーマンをしていたので、埼玉県庁の職員がこの要望書を作成するためにいかに多くの時間と労力をかけているかがよくわかります。埼玉県の要望書は、まず各部局の部員がたたき台を書いて、それを係長、課長、部長が直し、最後に副知事が手を入れて完成します。ですから要望書は精査された内容になっており、これを読む私も埼玉県の政策や課題を全部知ることができるのです。

とはいえ、要望書です。一読して終わりにはしません。私が得意な分野の県の要望については必ず、関連する中央省庁に「現状がどうなっていて、国としてはどう考えているか」を聞くようにしています。

もっとも、ここまでは他の国会議員でもやっているでしょう。私の場合にはその先があって、必要とあれば、県庁の職員と中央省庁の職員とを私の議員会館の部屋に招き、要望書の具体的な案件について両者に直接自由に意見交換をしてもらうのです。これを通して、県庁の職員と中央省庁の職員はお互いに相手の立場と課題を知ることができ、そのお陰で要望の案件が動くこともあります。埼玉県の課題は日本の課題でもありますので、両者の話を伺うことで、私の理解も深まります。

ネット通販の定期購入問題を解決

埼玉県からは要望書以外にも緊急な要望が単発的に来ることがあります。そのなかで、私が前述のように県庁職員と中央省庁の職員との意見交換の場を設けたことによって解決につなげたのが「インターネット通販の定期購入」に関する案件でした。

例えばネットにはよく「お試し価格」と称して安く購入できる健康食品などの広告が出ています。しかしこれで埼玉県ではトラブルが頻発しました。つまり、消費者が1度限りのつもりでその安い価格の健康食品を注文したところ、健康食品が届いたのが1度では終わらず、一定期間後にまた同じ健康食品が届くことがよくあったのです。それでネットの販売者に問い合わせたところ、「定期購入になっているので、決められた回数の購入後でないと解約できない」などといわれて驚き、埼玉県に相談してくる消費者も少なくありませんでした。一応、販売者は購入条件の注意書きも表示しているのですが、だいたいそれはスマホの画面では見つけにくい場所に置かれ、しかも読めないような小さな字で書いてあります。埼玉県ではこのようなトラブルの相談は2016年には5年前(97件)に比べて10倍近い約800件に上ったのでした。

そこで埼玉県は国に対して「ネット広告での商品販売には、1回だけの購入か定期購入かなど消費者が契約内容を簡単に理解できるようなガイドライン等を示してほしい」という要望を出したいと考えました。ただしこのとき、上田埼玉県知事から「これは消費者問題なので、初代の消費者庁の副大臣だった大島君にぜひ解決に向けて協力してほしい」という電話が私にかかってきたのです。

さっそく私は、担当の埼玉県の職員と消費者庁の職員に声をかけて議員会館の自分の部屋に来てもらいました。ここで埼玉県の職員がトラブルの状況と改善の要望を詳細に話したところ、消費者庁の職員も納得して、それから9ヵ月後の2017年11月、消費者庁は定期購入に関するガイドラインを公表しました。すなわち、定期購入の内容を明確化すること、申し込み内容の訂正の機会を用意すること、定期購入の有無・価格の総額・契約期間などの取引内容を表示すること、定期購入の条件を見やすい位置に表示することなどです。また、これらに違反したときには罰則もありうることになりました。

埼玉県は消費者問題に特に熱心に取り組んでいますので率先して国に要望を出したわけですが、ネットですから埼玉県だけでなく全国的にもあてはまる問題です。したがってこれは全国的な問題解決にもつながりました。

現場の生の情報を国に伝えていく

国会議員の仕事では、国会で政府に厳しい質問をぶつける姿がやはり一般の国民にはわかりやすいでしょう。しかし実際には、国民に見えないところで地元の要望をしっかりと国に伝えながら問題解決に向けて努力する、というのも国会議員の大事な仕事なのです。

地元の要望を国に伝えるときに私が心がけている点の1つが、中央省庁の職員には現場の情報をできるだけストレートに伝えるということ。というのは、忙しい中央省庁の職員はもっぱら自宅と仕事場を行き来する日々を送っているため、現場で何が起こっているかということに疎くなっているからです。中央省庁の職員に生の現場の情報を伝えるというのも地元をよく歩いている私のような政治家の重要な役割でしょう。

それで私は、地元の方を直接、中央省庁の職員に紹介することも行っています。先日も、地元の介護福祉の現場で仕事をしている方から「介護の問題でいくつかわからない点がある。それを厚生労働省に聞きたい」と頼まれたので、私はその方にやはり議員会館の私の部屋に来てもらい、厚生労働省の介護を専門とする30代の係長と意見交換をしてもらいました。その方はもちろん満足し、厚労省の職員の方も現場の人から直接話を聞いてとても参考になったようでした。今後も現場の生の情報を国に伝えていくことを通して現実的な問題解決を実現していきたいと思います。