【国会レポート】2020年代の日本に必要な政策を考える【2017年3号】

2020年までの国のビジョンものづくりと雇用の中身が重要

日本の経済・社会は大きな分岐点に差し掛かっています。2020年までの間に、人口は約300万人減少し、国債も従来通り毎年40兆円ずつ発行すれば国の借金も280兆円増となりますから、政治はそれを見据えたビジョンを持たなければなりません。

つまり、日本国債への信認を保つとともに、国民が受け取る賃金の総額を増やして税収入を上げ、財政を安定化させることが肝要です。それには、貿易収支の黒字を維持して稼げる国であり続けなければなりませんので、私は今後の政策の中心も製造業の復権にあると考えます。

これまで日本の製造業は、中国や東南アジアの各国との賃金格差に悩まされていましたが、近年その差は着実に縮まってきています。

賃金格差が縮まれば、日本製品の品質を考えれば製造業は復権できるし、アジアの国々と競争してもやっていけるという確信が持てます。この製造業では何よりも雇用の中身が重要になります。

日本の強みを生かした製造業復権の戦略

某大手エンジニアリング会社で社長のアドバイザーをしている方と米国のシェールガス(天然ガスの一種)事情について意見交換をしたことがあります。その方によれば「米国企業による大型の生産設備の建設発注が急増しており、日本の化学プラント・メーカーに対して、できるだけ短い納期でプラントを建設してくれるよう強く希望している」とのことです。

納期が短いとプラントの稼働もシェールガスを原料とする化学製品の市場投入もそれだけ早くできて、より有利な地位を占めることができます。そして、どこの国の企業よりも短い納期で化学プラントを建設できるのが日本企業にほかなりません。

つまり、そういう点に日本の強みがあって、産業の広い裾野のなかで多くの中小小規模メーカーが優れた製品をつくり、それを納期内に親会社に納めることができるという点で圧倒的な強さを持っているのです。私はこの領域では世界での競争力を維持していけると確信しています。このような中小小規模メーカーは親会社からの「コストを下げろ」、「生産性を上げろ」という指示に歯を食いしばって応じてきました。

しかし、今までのように親会社を頂点に一次、二次、三次以下の下請け部品メーカーという垂直的な関係ではどうしても付加価値がトップの親会社に吸い上げられてしまいます。

そうではなくて、今後は多くの部品メーカー同士が集まってトップの親会社からだけではなく世界中の企業から部品の注文を引き受けていくという形にしたほうが各企業も成長していくに違いありません。これが私の考える製造業復活の戦略です。

人工知能の衝撃と自由な発想の重要性

さらに大きな質的な変化をもたらす重要な要素の1つがAI(人工知能)です。

ネット検索大手グーグルの傘下企業が開発した「アルファ碁」が世界トップクラスの棋士に圧勝したというニュースを覚えている方も多いと思いますが、AIはここ数年で確実に進歩しており、目先の利くグーグルはそこに先行投資をしています。

このまま進歩が進めば、2020年代にはそんなに難しい言葉は使わない旅行や仕事であれば通訳や翻訳のAIを搭載したスマホで外国人と会話もできるようになるでしょう。

人間をサポートするAIは通訳、翻訳だけでなく医療診断や工場生産などあらゆる領域に導入されていきますから、AIが前提となった社会での社会保障制度や労働法制の整備が政治の課題と考え取り組んでいます。

グーグルの傘下企業が囲碁のソフトをつくったように、アメリカでは自由な発想に基づく取り組みがどんどん行われています。それがイノベーションにつながるのですが、イノベーションは経済が発展すれば自ずと起こるのではなくその前提には人間の自由な発想を尊重する言論の自由が不可欠なのです。

中国なども急速に経済が発展しているのに言論の自由が保障されていないため世界を引っ張るようなイノベーションが起こりません。

したがって日本の将来を考えれば、やはり自由な発想の保障が最も重要と考えます。

その点で気になるのが、先日、地元のお母さん方から聞いた話です。今の中学校では進学にあたってはテストの成績よりも内申書が重視されているため、生徒も親も内申書によく書いてもらおうと先生におもねるようになっている面があるそうです。となると生徒から自由な発想が失われてしまいかねません。

同一労働同一賃金が時代の流れである

社会が変化する中で欠かせないのが人材の養成です。

現代の企業に必要とされる人材とは何かという点では世界的なIT企業であるグーグルの採用基準も参考になるでしょう。この採用基準とは重要な順から①学ぶ力、②リーダーシップ、③謙虚さ、④自発性、⑤専門能力の5つであり、これによってグーグルでの大卒者の採用人数も減ったとのことです。つまり、学歴ではなく採用基準を優先しています。

ただしここで重要なのは大学教育に意味がないということではなく、大学教育においても産業が求める人材の養成に努めなければならない時代が来ているということです。

雇用の変化では生産年齢人口の減少以外にもパート・アルバイト・派遣・契約・嘱託といった非正規労働者の比率が男女および各年齢層ともに上昇しています。

そのため、いわゆる正社員と呼ばれる正規労働者と非正規労働者との待遇格差の問題が際立つようになっています。

同じ労働なら同じ賃金ということにシフトしていくべきでしょう。つまり、雇用では正規も非正規もなく同じ仕事をしたら同じ賃金を払うということです。

そうしたことも含めて、労働法制に均等・均衡待遇の規定を織り込むなど新しい時代に合った雇用環境を整える政策を進めます。