【国会レポート】国から地方への権限委譲で重要になる地方自治体の責務【2015年3号】

周知のように、統一地方選挙が実施されました。選挙を通じて自治体が果たすべき責務がますます重くなっていると改めて実感しています。

埼玉県の大きな課題の一つは医療過疎県ということです。これは数字ではっきりと表れており、人口10万人あたりの医師数・看護師数・病床(ベッド)数はいずれも全国でワースト1位、すなわち47都道府県で最下位となっています。

埼玉県は高度経済成長期以降、全国から首都圏にやって来る若い人たちの居住の場となってきたため、最初のうちは年齢層の若い県でした。ところが近年、5年ごとに国勢調査が行われるたびに年齢層が高くなっていて、私の選挙区でも65歳以上の有権者が多くなっています。したがって埼玉県の急速な高齢化への対策が喫緊の課題です。

超党派の議連で埼玉県の病床増を果たす

私は国会議員として医療保険制度や介護保険制度の改革に取り組んできたのですが、昨年夏に埼玉県の国会議員(衆議院議員・参議院議員)約30名による超党派の議員連盟が発足しました。この議連では自民党の方が会長、無所属の方が事務局長、民主党の私が副会長を務め、公明党、共産党、維新の党など全政党の埼玉県国会議員の方々が名を連ねています。

議連として最初に取り組んだのは、埼玉県の病院の病床数の増加を厚生労働省に対して強く要望することでした(厚労省が都道府県の病床数を増やす権限を持っている)。私たちの強い要望に応えて厚労省も、本来は、次回の国勢調査の結果に基づいて病床数を決めるところを、今回は、特別に住民基本台帳に基づいて埼玉県に1502床の増設を認可したのでした。

病床数を増やす取り組みは国会議員の責務ですから埼玉県で1502の病床を増やした点では国会議員としての仕事を1つ果たしたことになります。けれども、次にその増えた分の1502床をどのように埼玉県内で配分するのかを決めるのは埼玉県知事の仕事です。そして、埼玉県の病院で増えた1502床が実際に整備されるのはもっと先の4~6年後になります。

消費税率アップで増えた地方の財源

平成10年に地方分権一括法が成立してから、国から地方に権限を移管するようになりました。たとえば、今国会でも第5次地方分権一括法が成立し、これまで4ヘクタール超の農地転用の許可権限は国にあったのですが、今後は、4ヘクタールを超えたものでも許可権限は都道府県に移譲されます。こうした点でも都道府県にかかる責務と自由度が増してくるのです。そのため私の地元でも、圏央道や上尾道路沿いで、農地転用を図りながら、人口増や税収増を狙って開発計画を策定することが容易になります。

また、これまで国民健康保険の担い手は市町村でしたが、平成30年からは都道府県にそれが移ることになります。したがって国と市町村の間に入って調整的な行政が主だった県も、今後は県民全員の健康管理や医療費についても直接責任を負うことになります。

もちろん市町村の責務も重くなっていきます。2013年に社会保障と税の一体改革が決まりましたが、その結果、消費税率引き上げ後には、地方の受け取る消費税収の割合も高くなりました。消費税率5%のときには国が4%、地方が1%でしたが、8%となった後には国が6.3%、地方が1.7%となって地方が受け取る分が増えたのです。しかも、この増えた分は特に医療、介護の社会保障の給付と少子化対策に充てることになりましたから、市町村もこれら医療、介護、少子化対策などの具体的な施策に対して一段と積極的に取り組まなくてはならなくなってきました。

自治体の役割が大きくなっているのですから、議員もこれまで以上に、地域住民としっかり対話したうえで最も的を射ている政策を提案できるようになっていく必要があります。逆にいうと、そのような地方議員が強く求められているのです。

一方、私たち国会議員には、多くの地方議員の皆さんに医療や介護などの情報を提供することで、県と市町村を継ぎ目なく具体的にサポートをしていくことが期待されていると思います。

地方議員に強く求められる有為の人材

今回の統一地方選の話に戻りますが、1つの特徴は、候補者の応援に駆け付けた団塊の世代の人たちの多くからいろいろな政策的アイデアを出していただいたことです。このような動きは今後の選挙で一段と盛んになっていくでしょう。

また、民主党埼玉県連が擁立した県会議員の候補者のうち14人が当選し、そのうち5人は女性でした。しかし政治の世界ではまだまだ女性議員は少ないため、どうしても女性の視点が希薄という問題があります。特に医療、介護、子育てなどには男性だけでなく女性の視点も欠かせません。

政治の世界に女性が増えることは政治の質的な変化にもつながります。以前、私が副大臣として公務員制度改革に取り組んでいたとき、米国の著名な多国籍企業のアジア地区人事担当役員と面談したことがあるのですが、その方が「当社は社員の男女比は半々です。男女比を半々にすると仕事の生産性が上がる」といっていたことが印象に残っています。

いずれにせよ、地方政治を背負っていく議員には、男女を問わず有為の人材がどんどん増えてほしいし、私も女性議員が働きやすい環境を整えていきたいと考えています。