【国会レポート】政治家の言動は首尾一貫しているべきだ【2005年7号】
2000年6月の総選挙で初当選して以来、私は毎月1回必ずこの「国会レポート」を執筆、発行してきました。ここ3ヶ月は「高齢化・介護保険法問題」(4月号)「郵政民営化問題」(5月号)「小泉政権以後の政策のパラダイムシフト」(6月号)について書いてきました。
今回の7月号では政策論や社会論ではなく政治家の見識や態度、姿勢などについて言及したいと思います。というのも、周知のように郵政民営化法案の採決をめぐって国会議員の言動よび賛否の投票行動に大きな注目が集まってきているからです。
国会議員の最も重要な投票が首班指名
ところで、私が衆議院議員の仕事として最も重要だと考えているのが首相を決める首班指名選挙にほかなりません。総選挙が終わると特別国会が招集されるのですが、その本会議場の国会議員の机にはハガキよりも一回り小さい厚い紙が置いてあります。そこに自分の名前と首相にしたい人物の名前を書くのですが、私は首相候補の名前を書いたときに衆議院議員の一番大きい仕事はこれなのだと強く実感します。
国会での首班指名によって総選挙で多数を取った党派から首相が出るのですから、総選挙というのは「民意を問う」とよく言われるように日本の首相を選ぶ間接選挙でもあるのです。
わずか5票差で可決の郵政民営化関連法案
首班指名に次いで重要なのが本会議場における法案の採決でしょう。これは普段はあまり話題になりませんが、賛否が拮抗している法案の場合には議員の投票行動が一気に脚光を浴びてきます。最近のその象徴的なものが7月5日に衆議院本会議で採決された「郵政民営化関連法案」です。自民党の党議に反して自民党議員の中から否決や棄権が相次いだために、結局、わずか5票差でどうにか可決されたのでした。
この採決で自民党議員が反対投票を入れるたびに民主党議員の多くは大きな拍手をしていたのですが、私は拍手をせずにじっと自民党議員の投票を見ていました。なぜなら、それは私たちの問題ではないからです。今回、反対投票をした自民党議員はそれぞれ自分の考えに基づいての行動です。とすれば、そういう自民党議員に対して他党の議員が拍手をするというのは礼を失していると考えたからです。
しかし、党にはやはり中枢的な政策というものがあります。郵政民営化関連法案の場合、般の人から見れば優先順位は低いかもしれませんが、日本国の首相である小泉純一郎氏にとって最優先の法案ですし、前回の総選挙でも同氏は郵政民営化を主張して選挙戦を戦い、政権を維持するという結果を出したのです。ですから、選挙で掲げられた中枢的な法案の場合、やはり所属議員は党の方針に従うべきだというのが政党政治の一つの原則ではあると考えます。
また、郵政民営化関連法案の採決で奇異に思ったのは、それまで反対意見をテレビや選挙区で声高に述べていたのに、採決では賛成に投票した議員がいたことでした。政治家にとって自分の主張を公の場で発表するというのは当然であり、逆に主張のない政治家は有権者の心をつかむことはできません。しかし、国会での議員の1票は非常に重いわけですから、反対意見を述べていた議員が何の説明もせずに投票では賛成に回るというのは有権者を戸惑わせます。政治家の言動は首尾一貫していなければなりません。実は、国会での投票で議員が見られるのは賛成か反対かではなく、その議員の言動が首尾一貫しているかどうかなのです。つまり、普段は反対意見を述べながら投票では賛成する(この逆も同じ)という議員は同僚議員だけでなく他党の議員からも信頼を失います。
自分の信念を通すために政治家になった
以上のことを踏まえて振り返ってみれば、小泉首相は就任直後、「8月15日に靖国神社に参拝する」と宣言しておきながら実際に行ったのは8月13日だった、ということを思い出します。そのとき、私は「小泉首相は妥協する人だ」と直感しました。案の定、その後の小泉改革はすべてが妥協に終わってしまっています。
靖国参拝の是非はさておき、政治家が公の場で「8月15日に靖国に行く」と言ったのなら、自分の言葉を守ってやはりその日に行くべきでした。もし自分の言葉が守れないのなら最初から言うべきではありません。15日ではなく13日に行ったことで、私だけではなく自民党や民主党、その他の政党の政治家の多くも「小泉首相は妥協する」と思ってしまったからこそ、足元を見られて、4年経っても彼の主張する改革は中途半端なままになっているのです。
本来、自分の信念を通すために議員になったのであって、選挙に勝つために議員になったのではないはずです。ニクソン元米国大統領はこう述べています。「自分の信念を通したいがために選挙に勝って政治家になるのであって、選挙に勝つために政治家をやっているわけではない」。この点で今の日本の政治は本末転倒しています。国会議員が選挙に勝つために離合集散するような状況は変えていかなければなりません。