【国会レポート】人口戦略シンポジウム(人口戦略会議議長 三村明夫氏/日本製鉄会長)でパネリストとして発言(2024年4月24日)【2024年6号】

【国会レポート】人口戦略シンポジウム(人口戦略会議議長 三村明夫氏/日本製鉄会長)でパネリストとして発言(2024年4月24日)【2024年6号】

シンポジウムでは、各政党の衆議院議員が出席し、人口減少・少子化の議論や対策について政治として何が欠けているのか、何をすべきかについて語り合いました。その中で、経済的な視点や本気度、将来ビジョン、政党間のコンセンサスが欠けているとの意見が出されました。それを踏まえ、立法府として、エビデンス(証拠)に基づく議論を深めて合意を図る必要があり、ラウンドテーブルを設け、党派を超えて目標と情報を共有し、自由闊達に議論していくことで一致しました。

以下、大島の発言を中心にまとめました。

これまで何が欠けていて、今後どうしていくべきか

増田 寛也(日本郵政株式会社代表執行役社長、人口戦略会議副議長):それでは、シンポジウムの最初のセッションを始めます。

このセッションでは、人口減少が進んでいる中、「これまで何が欠けていたのか」、そして「今後どうしていくべきか」、そのうえで「立法府として何をすべきか」の二つについて議論したいと思います。

大島:何が欠けていたかと問われると迷ってしまいますが、私は、1983年に、西ドイツのデュッセルドルフに赴任しました。

最初はあまり刺激のない、面白味のない国だと感じていたのですが、1年間暮らしているうちに、落ち着いていて、一つ一つの歯車がしっかり回っている社会だと感じるようになりました。しかも会社に残業がなく、確固たる社会基盤の上で生活や事業活動が展開されている気がし、非常に良い国だなと思いました。

ドイツに赴任していた当時のことを振り返って考えてみると、私たち日本に一番欠けているのは、どういう国にしたいか、なりたいかというビジョンではないかと思います。例えば、日本の人口が1億人を切ると予測されている2050年には、カーボンニュートラルの実現という課題があり、エネルギー政策や使用済み核燃料の問題などもあります。これまでとは全く様変わりする時代を迎えていくに当たって、私たちが享受してきた豊かさによって生み出された負荷や負担を、2050年の1億人を切った世代に負わせていいのでしょうか。その解決策を考えることを前提としながら、2050年の目指す姿、理想像を掲げなければなりません。

具体的なイメージを描き、その実現に向かって、さまざまなリスク要因を踏まえ、長期的なプランをローリングしながら進めていくことが、これから必要だと考えています。

人口減少対策に、立法府として何をすべきか

増田:次に、「立法府として何をすべきか」に移りますが、人口戦略会議では、超党派で議論すべき国会的課題としてプログラム法案を国会で審議制定したり、国会に人口戦略の常設審議組織を置いて経常的に議論したりしてはどうか、といった提言を行っています。そのことも踏まえて、順次お話しください。

大島:私は国会議員の1期生と2期生のときは、厚生労働委員会に所属していました。結構大変な委員会で、どうしても政争になるのです。それで若い国会議員には、理屈で解決する問題は、この委員会には来ないという話をしています。理屈で解決しない問題を国会で引き取って、ぶつかり合いながら考えて妥協点を見つけています。それがある意味、国会の機能といえます。しかし、今後の2050年、あるいは2100年のことを考えると、少なくとも共通認識は整えたほうがいいでしょう。

実は、与党と野党では情報の非対称性があります。与党の議員には役所が毎日ブリーフィングに来ますし、この資料がほしいと言うと全部用意してもらえ、本音ベースで話せたりもします。一方で、野党にはそのようなことは全くありません。この情報の非対称性を解消して、お互いに正しい情報で議論できるようにすることが必要だと思います。ただ、野党も気をつけなければならないの

は、その情報を政争の具に使うことは慎まなければなりません。そのバランスにはなかなか難しい面はありますが、令和臨調のようなスキームをつくったり、与野党にあっても志を一つにする議員を多くつくり続けたりすることが大切だと思います。

私は、20年以上議員を務めさせていただいていますが、同じ志の議員が集まれるような仕組みがつくれればいいのではないかと思っています。

増田:最後に人口減少・少子化対策へ向けた決意をお聞かせください。

大島:1970年代に子どもを減らす議論が行われていたという話がありましたが、かつての公団住宅が3DKになったのは、子どもは2人までと想定したからで、その住宅政策が少子化につながったのではないかと理解しました。

実は、私はインターネットなどのテクノロジーに興味があり、数年前にNTTの社員から光電融合技術の話を聞いて、次代の技術革新への期待を高めました。光電融合は、半導体に電気を通すことで行ってきた電子機器の制御を光で制御する技術で、エネルギー消費が少なく、これまで以上の高速大容量通信が可能になるといいます。完成するのが2027~ 2028年とのことで、全国に敷設されると本当にリアルなウェブ会議が行えるようになるなど、デジタル化がさらに進化していくでしょう。

また、いま全国で地震などの災害が多発しており、首都直下地震や南海トラフ地震が懸念されています。そのため、大災害発生を踏まえた防災や国土計画を進めなければなりませんが、その一環として、かつての国土庁を新しい形で復活できないかと考えています。これからの日本の国土、日本の未来に向けた取り組みを担っていく拠点となり、そこでは議員は政党色を出さず個人として参画して、自由闊達に議論しながら情報を共有する形になればいいのではないかと思っています。

もう一つ、私が国会議員に当選した2000年から昨年までの間に、全就業人口に占めている給与所得者の割合は83%から90%に増えています。その割合はまだまだ増えるかもしれません。ですから、サラリーマンの心情をしっかりと理解しながら政策を打っていかなければならない時代に入っています。例えば、労働政策や金融政策、社会保障政策、技術政策などにおいて、将来に対する予見性を示すことが大事で、そういうことを超党派で議論しながら共通のコンセンサスを図っていく、そういうチャレンジが大切だと考えています。

増田:本日のこの場が、政治における人口減少・少子化問題の議論の新たな始まりになればと願っています。そして、この空気が今度は地方議会に伝わり、地方議会で同じような場ができればと期待しています。