【国会レポート】物価を上回る賃金上昇。下請け価格を転嫁する、価格転嫁で賃金を増額、賃金上昇で年金が増額。この循環で経済を再興。【2024年5号】
サラリーマンから政治家に
大学卒業後、日本鋼管(現在のJFEスチール)に入社し、14年間製造業の社員として働いた後、38歳でソニー生命に転職し、5年間勤務しました。
北本から新宿まで電車で毎日通勤していたのですが、偶然、政治面の下のほうに「民主党が候補者を公募している」という小さな記事が目に留まりました。当時は日本経済にもまだバブルの後遺症が残っており、多くの企業がリストラを進めていました。サラリーマンには大変な時代だったのです。私が書いた小論文も「雇用対策」がテーマでした。翌2000年6月、民主党公認候補として衆議院総選挙に立候補し、43歳の初挑戦で衆議院議員になることができたのです。
私は公募というシステムによって政治の世界に入ることになりましたが、そもそも普通に暮らしている人のほとんどの方は政治家になろうとは思わないでしょう。政治家を目指す方は自己主張が極めて強い一方で世の中を良くしたいという改革のエネルギーを持った人が多く、政党が議員を束ねるのは大変です。政党が育つためには数々の試練を積み重ねながら互いの信頼関係を深め、個性的な議員を束ねる知恵を蓄えて行く必要があります。そうした政党同士が切磋琢磨し、国民の信託を得て国政を担えるようになります。
私が他党も含めて政治家間の合意形成を図る際には会社生活でつちかわれた本音を見抜く能力と忍耐力が大いに助けとなっています。また、東西冷戦下の統一前の西ドイツで、3年半、勤務した経験は、現在の国際情勢を直感的に理解する助けとなっています。かつてサラリーマンとして仕事ができたことにいつも感謝しています。
日本の課題
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、西ドイツに駐在していた頃に感じた冷戦下での緊張感が再び戻ってきています。現在の国際情勢は緊迫しており、安定するまでには長い時間がかかります。2050年には人口が1億人を下回ると予測される中、自国のことは自国で決定できるよう、国としての基盤をしっかりと整え、国民生活の安定を図ることが日本政治に課せられた課題です。
物価を上回る賃金上昇。価格転嫁で賃金を増額、賃金上昇で年金が増額
日本の一人当たりの国民総所得は、韓国や香港よりも低く、世界的な資源高や食料価格の高騰に十分対応できていません。企業が内部留保よりも給与の引き上げを優先すれば、海外の給与水準に近づくことが期待されます。また、年金は物価と賃金に連動しているため、賃金が上がらない限り年金も増加しません。さらに、政府は過去8年間、下請け価格の転嫁対策に取り組んできましたが、十分な改善は見られていません。その結果、地元企業の賃金も改善していないのが現状です。この状況が続くようであれば、経済法制を見直すなど、考えられるあらゆる政策手段を活用して、賃金アップと下請け価格の転嫁を進めます。
経済は科学技術の創造力を超えては発展しない
日本では過去30年間にわたり、国の研究開発投資と国民の給与所得は、ほとんど変わっていません。一方で、国はコロナ関係費として200兆円を投じました。今後の10年間で、同規模の金額を教育、職業能力開発、研究開発に継続的に投入することで、人材を育成し、産業を創造します。特に、製造業や国の研究機関には、特許やノウハウ、また生産や研究において培われた高品質なデータの蓄積があります。これを生成AI(大規模言語モデル)で活用することで、日本から新たなイノベーションを生み出すことができると確信しています。
学校の先生が足りない
私の知り合いも、定年後も小学校で担任を続けています。公教育の質を向上させることは、社会の活力を高め、所得格差の縮小にもつながります。先生の働き方改革を進め、優秀な人材を引きつけることが大切です。また、大学などの高等教育においても、運営費交付金の増額などを通じて、学ぶ意欲のある人に質の高い教育機会を積極的に提供していきます。国の盛衰は教育にあります。
マイナ保険証の見直し
マイナ保険証は廃止し、紙の保険証を復活させます。そもそも、マイナンバーカードの保有は国民の義務ではなく、当初から無理のある政策でした。将来的には、顔認証や生体認証を活用し、カードを持たずに医療を受けられる仕組みを作ります。
日本は地震の活動期に入った
日本は、地震の活動期に入っています。ハザードマップを見て住むところを決める時代です。首都直下や南海トラフ地震が発生した場合、緊急対応が数ヶ月にわたリます。有事の際には国土交通省を防災省に改組し、首相官邸と一体化して対応する組織を整備する必要があります。
また、震災発生時には、地元市長と連携し、状況を把握するとともに、政府への要請などの危機対応を行います。
これまでの取り組み、結果を出すには長い期間がかかります。
安全保障への貢献
測位衛星「みちびき」の整備
自国の航空機や艦船の位置を、自国の測位衛星からの電波で正確に捕捉することは、独立国として重要な条件です。私は測位衛星「みちびき」の事業化を主導しました。
2022年2月の予算委員会での私の質問に対する担当大臣の答弁は次のとおりです。「今、委員からお話にあったとおり、まさに委員が宇宙政策担当として内閣府でお務めいただいていた際に、衛星測位システム『みちびき』の初号機が打ち上げられたと認識しています。」
「みちびき」は、自動車の自動運転や無人トラクターによるスマート農業といった産業インフラに大きく貢献しています。さらに、現在の安全保障環境を踏まえると、自国の衛星のみで測位を実現できることの価値とその貢献は非常に大きいと考えます。今後は、インドの東側から中国、東南アジア、オーストラリアまでカバーする予定であり、中国全域が含まれることで、我が国の安全保障への貢献は極めて高いものになると確信しています。
事業化に向けた合意形成の際、2000億円を超える予算が必要だったため、当時は測位機能だけでは事業化が難しいと判断し、私の提案で安否確認システムを加えました。今後、フィジー共和国では、この機能により、多くの島々に対して津波や地震の情報を測位衛星「みちびき」から携帯電話に送信できるようになります。
雇用への貢献
求職者支援制度導入(職業訓練を条件に、生活費月10万円を支給)
小林正夫元厚生労働大臣政務官は、自身の著書で「大島敦衆議院議員が中心となり、2001年に初めて『法律に基づく給付制度として、失業手当が終了した者や自営業廃業者を対象に、職業訓練の受講を条件に給付金を支給する』という議員立法を提起しました」と述べています。2011年、民主党政権下でこの制度はついに実現しました。
この制度は、私が初当選時に掲げた選挙公約でもあり、雇用保険と生活保護の間に位置する「第2のセーフティネット」としての役割を果たしています。
求職者支援制度は、雇用保険の対象外であるか、失業手当の受給期間が終了した人を主な対象としています。この制度では、ハローワークに登録し、職業訓練を受けながら再就職に必要なスキルを身につけることで、生活費として最大月10万円の給付金を受け取ることができるという画期的な仕組みです。これまでに40万人の方々が利用しています。 給付額の10万円は、私が制度設計を行い、議員立法を提出した際に決定した金額です。しかし、当時と現在では社会状況が大きく変化しています。そのため、一人親家庭の方が長期間の職業訓練を受講し、資格取得ができるよう、給付額を20万円以上に引き上げるなど、今後は制度を再構築していきたいと決意しています。