【国会レポート】「逆」オイルショックが日本に何をもたらすのか【2014年12号】

今回は原油価格が短期間に暴落するという逆オイルショックについてさらに詳しく述べたいと思います。この逆オイルショックの流れは2014年11月27日にウィーンで開かれたOPEC(石油輸出国機構)総会で決定的になりました。OPECは原油輸出国の利益確保を目指す国際的な価格カルテルで1960年に創設されました。現在の加盟国はサウジアラビアなど12ヵ国。OPECは加盟国の生産量を合計した生産枠を守っており、2013年以降の生産枠は世界の総産出量の3分の1の日量3000万バレルです(1バレルは約159リットル)。

原油価格が下落しているのは市場に出回っている原油がだぶついているためなので、一応、「減産すれば原油価格が下げ止まるはず」という理屈は成り立ちます。そこでOPEC総会では生産枠を減らすかどうかが最大のテーマとなったのです。しかし、ベネズエラなど一部の加盟国が減産を主張したものの、サウジアラビアの意見が通って総会では生産枠を据え置くという結論になりました。

これを受けて国際的な原油価格の指標であるアメリカの原油先物市場もたちまち1バレル70ドルを割ってしまい、2015年の年明けには40ドル台に突入したのでした。原油価格のピークであった2014年6月時点と比べると半年で約60ドルも暴落したことになります。

原油価格の大変動と日本経済の関係

このような原油価格の短期間の大変動が世界経済と日本経済に多大な影響を及ぼさないはずがありません。1973年の第1次オイルショックでは原油価格はわずか3ヵ月間で約3ドルから約12ドルへと4倍にも上がってしまいました。そのため石油製品も暴騰し、低価格の石油の大量消費で成り立っていた世界経済が大混乱に陥ってしまったのです。

その後も1978年末に起こったイラン革命でイランの石油生産が中断したことをきっかけに第2次オイルショックが起こり、このときも原油価格は3倍近く上がりました。

以上は原油価格が急騰するオイルショックですが、逆オイルショックが初めて起こったのは1986年です。1980年代に入って世界的に省エネルギー政策が展開される一方、景気低迷が続いたため、1986年を境にして原油価格が下落し、1バレル30ドル近い水準だったのが半年で5ドルにまで暴落したのでした。

今回は円安とシェール革命が同時進行中

2度のオイルショックと1度の逆オイルショックは日本経済に大きな影響を与えたわけですが、過去の2度のオイルショックは日本企業に世界最先端の省エネ技術の開発を促し、それが日本企業の国際競争力を一段と高めることになりました。一方、省エネの技術革新について行けなかったソビエト連邦は崩壊に至ったのでした。

今回の2度目の逆オイルショックでは、最初の逆オイルショックとの大きな違いが2つ挙げられるでしょう。1つは日本が円高ではなく円安の渦中にあるということです。円安で輸入物価が上がって日本の貿易赤字も増えてきましたが、原油価格が下がるとこの貿易赤字も緩和されていきます。ただし現政権が掲げている物価上昇目標2%の達成は難しくなります。やはり原油価格の下落はデフレ傾向を強めます。

もう1つは、アメリカのシェール革命によって原油であるシェールオイルが出るようになったということです。最初の逆オイルショックのときには時間が経つにつれて原油のだぶつきがなくなり再び原油価格は上昇していきました。しかし今回はシェールオイルがあるので原油のだぶつきもなかなか収まらないでしょう。ちなみにヨーロッパでは目下、原油の貯蔵タンクが満杯になってしまい、タンカーから原油を降ろせなくなっています。

前述したように原油のだぶつきをなくすにはOPECが減産すればいいという考え方はあるにしても、現実にはOPECが減産した分だけ世界の原油市場でシェールオイルが増えることになるだけです。その結果、OPECのシェアが縮小してしまいます。第1次オイルショックのときは世界の原油市場でのOPECのシェアは55%でしたが、現在は3分の1しかありません。減産するとOPECのシェアは30%を切ってしまい、世界の原油市場へのOPECの影響力も下がってしまいます。それでOPECは原油価格の下落を受け入れてでも減産しないという方針を決めたのでしょう。

メタンハイドレートの実用化に取り組む

アメリカではガソリン価格が半年で40%も下がったため自動車の売れ行きが急回復してきました。

日本はエネルギー資源が乏しいのにエネルギーの大量消費国です。したがって原油価格の下落はありがたいのですが、だからといって自国でエネルギー資源を確保する努力を放棄していいことにはなりません。

日本産のエネルギーとして最も期待されているのがメタンハイドレートです。これは火を付けると燃えるため「燃える氷」とも呼ばれており、日本の周辺海域には国内の天然ガス使用量の100年分に相当するメタンハイドレートが存在すると推定されています。仮にメタンハイドレートから天然ガスを生産するコストを1バレルの原油価格換算で50ドルにすることができれば、日本は50ドルを超えてエネルギーを購入する必要がなくなります。政治の役割としてはこのメタンハイドレートの実用化とともに、競争力のある価格が実現できるのであれば、採取したメタンハイドレートの天然ガスを海岸から全国の消費地へ送るためのパイプライン網の整備が必要となります。私もこのような日本独自のエネルギー確保にこれからも取り組んでいきます。