【国会レポート】21世紀型の産業革命を見据えて日本の国家ビジョンを描く【2014年11号】

2014年12月14日に投開票が行なわれた総選挙では皆さんのお力をいただいて、53%という戦後最低の低い投票率にもかかわらず、小選挙区で当選することができました。これからも、しっかりと政治に取り組んで行く決意を新たにしています。

今回、私は総選挙で「社会的課題解決型国家」を打ち出しました。すなわち「先進国で起こりうるさまざまな社会的問題に対して、最先端の技術を開発したり社会の仕組みを変革したりすることで対応していく国家像」のことです。

目下、グローバルな通信ネットワークを前提として先端科学や先端技術を駆使する形で21世紀型の産業革命が起きています。日本がその成果を先行的に吸収して社会生活のなかに具体的な形で実現していけば、日本は世界のなかでモデル国家になれるし、優位性も保てます。したがって、21世紀型の産業革命の多くの成果をどのように具体化していくかがこれからの政治の大きなテーマになります。そして、貧困、格差、不平等、富の一極集中もこの産業革命がもたらした課題です。世界の政治は、これらの課題を解決するために新しい社会システムを提起する時代に入っています。

政治家が自らビジョンを描く時代に

じつはこれまでの国政において成長戦略を打ち出すときには、そのビジョンや詳細な施策についてもっぱら官僚に依存してきました。たとえ政権が代わったとしても同じ官僚が成長戦略を書いているのですから中身も変わらないということになります。安定して変化のない時代ならそれでもいいかもしれません。しかし、今や21世紀型の産業革命が進行しているなかで、世界の政治と経済も大きく揺れ動いています。とすれば政治家にも「時代を見通す目」が必要であり、それに基づいて政治家自身が成長戦略のビジョンを打ち出さなければなりません。

たとえば2014年6月をピークにして大幅な原油価格の下落が始まりました。国際的な原油価格の指標であるアメリカの原油先物価格は6月の時点では1バレル(約159ℓ)107ドルを超えていたのに、今年に入ると40ドル台にまで下がってしまいました。これは5年8ヵ月ぶりの安値で、わずか半年ほどの間に半値以下になったのです。原油価格の高騰による消費国の経済への悪影響をオイルショックというのに対し、原油価格の暴落で原油生産国の経済が苦境に陥る現象を逆オイルショックと呼びます。まさに今や逆オイルショックの時代に突入したといえるでしょう。

シェール革命と逆オイルショックの関係

この逆オイルショックを引き起こした要因として最も大きいのが、アメリカのシェール革命です。シェール革命によって天然ガスであるシェールガスと原油であるシェールオイルが、全米各地で採掘できるようになりました。特にシェールオイルが中東の原油と競合しており、アメリカでのシェールオイル生産の急増とともに原油価格を引き下げる原動力となってきたのです。アメリカのエネルギー情報局によると2014年にはアメリカの原油生産は日量842万バレルまで増えてきました。これは前年に比べて約100万バレルの増加です。一方、アメリカでの2014年の石油製品の輸入は日量525万バレルであって前年よりも約90万バレル減っています。2015年はアメリカの原油生産がやはり約100万バレル増加し、石油製品の輸入も約90万バレル減少すると予想されています。この予想もアメリカでのシェールオイル生産が増えていくことに基づいているのです。

私は2014年の夏にアメリカに行ってこのシェールガスの採掘現場を見てきました。在来型のガス田や油田と違ってシェールガスやシェールオイルの場合には比較的柔軟に需給調整ができます。したがって、たとえ原油価格の下落でいったんアメリカのシェールオイル生産が減ったとしても、原油価格が上がるようならシェールオイルの生産も再び増えますので、今後ともアメリカのシェールオイル生産は原油価格の上昇を阻害する大きな圧力であり続けるはずです。

日本の基盤である部品メーカーの物づくり

そもそも「21世紀型の産業革命」という言葉も今のところ私しか使っていないと思います。20年前から2020年代にかけては18世紀の産業革命に匹敵するような社会的な変化が進行しています。その産業革命後の世界がどうなっているのかを見据えて今の政策をつくることが重要です。今回の総選挙においてもアルツハイマーを予防・治癒する新薬やロボットの介護への導入などの提案をさせていただきました。

付言すれば、アメリカには豊富な資源があり、シリコンバレーに代表されるようにオリジナリティを持った人材を活用する土壌もあります。一方、日本の持ち味は、多数の中小部品メーカーが物づくりの基礎技術とさまざまな要求に対応できるノウハウを持っていることです。つまり、我が国には物づくりの基盤がしっかりとあって、それが新しい産業革命を具現化する、大きな基盤にもなっています。しかし部品メーカーが倒産してしまうとそこが持っている技術やノウハウも消えて二度と復活しません。ですから私もまず、優れた部品メーカーを維持・成長させる産業政策の立案に取り組みます。