【国会レポート】能登半島地震を経験して【2024年1号】

2022年に、能登半島が選挙区の同僚議員を訪ね、2日間かけて半島を巡りました。海岸沿いには、小さな集落が点在しています。後日聞いたところ1000を超えて集落があるそうです。

半島の中心部に位置する能登空港では、全日空が一日数便、羽田との間を結んでいました。今回の地震で、道路が寸断されると復旧復興に相当の時間を要することは想像できます。東日本大震災でも復旧が遅れたのは半島地域です。

発災時における政府の体制

東日本大震災、熊本地震、今回の能登半島地震でも、首都機能は維持されていますので、首相官邸を中心として、中央官庁の力を結集しての支援ができています。東日本大震災が発生した2011年3月11日午後は、NHKで中継されていた参議院決算委員会が開かれていましたので、霞ヶ関をはじめ、中央官庁はしっかりと機能していました。発災が夜だったり、休日であったりすると、初動体制が組めないのではないかと危惧しています。

映画シン・ゴジラに出てくる、首相が中央に座り大臣が囲む危機管理のオペレーションルームは、首相官邸地下にあります。そして、隣には大きな講堂があり、各府省の名前の入ったビブス(ベスト)を着た職員が情報を集約して、役所間の調整を行い、資料をまとめ、首相に判断を仰ぎます。官邸を機能させるには、まず、地方支分部局(府省の地方出先機関)を含めて各府省が機能していることが前提となります。夜や休日に発災した場合、それでも首都圏での交通網が寸断されていなければ、翌日には、霞ヶ関(中央官庁)、市ヶ谷(自衛隊)、大手町(気象庁)の各府省に駆け付けて対応できるでしょう。しかし、首都直下地震では、難しいのではないかと推察します。

NHKは、時々首都直下地震や南海トラフ地震のドラマなどを放映して国民の注意を喚起しています。首都直下地震を含む南関東エリアにおけるマグニチュード7クラスの発生確率は今後30年間で7割です。南海トラフ地震は7割から8割です。いつ起きてもおかしくありません。南海トラフ地震は、四国の太平洋沿岸から太平洋ベルト地帯を含むので、両地震が起きると、日本の機能は麻痺する恐れがあります。能登半島地震が発生したことや南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が初めて発表されたこともあり、政治家として身構えています。

私は、東日本大震災発災後、東京で自転車を購入して、国会、議員会館、霞ヶ関(中央官庁)を走り回っていましたし、状況が落ち着いてからは、自宅に発電機を用意しました。今でも、議員会館の部屋には自転車が置いてあり、地元に自転車でも帰れるようにしています。

また、固定電話や携帯電話が不通になった場合の地元と国会との連絡手段を調べたことがあり、知り合いのアマチュア無線愛好家に伺ったところ、距離が50㎞も離れているとアマチュア無線での通信は難しいとのことでした。国交省、自衛隊、警察、消防など政府が保有する回線を使用しないと連絡は困難です。内閣府副大臣として防災担当を仰せつかっていた際には、自宅には衛星電話を設置し、夜でもすぐに出動できるようにしていました。気を張った一年だったことを思い出します。

発災時初期については、中央官庁をどのように機能させるかが重要です。中央官庁で地方の部局も含めて、防災に関連する職員全員に衛星携帯電話を持ってもらうことも一考の余地があると思います。特にこれまでの衛星携帯電話は,ビルや山など障害物があるとつながり難かったのですが、スターリンク衛星を利用した衛星携帯電話は山間部などこれまで通信が不安定な場所でも利用できるので、夜間や休日に発災した際の情報共有などには、費用対効果を考慮しても有用と考えます。

そして、南海トラフや首都直下地震が発生した際には、緊急対応が数ヶ月にわたる可能性が考えられます。私は、首相官邸だけで長期間の対応を行うには限界があると考え、国土交通省のビルの建て替えを委員会で提案しています。現在の建物は免震構造と聞いていますが、古く手狭で、席がぎっしりと並べられており、大規模災害時に長期間の泊まり込みで対応するのは困難だと思います。したがって、複数のヘリコプターが離発着可能で、震度7を超えても配管や通信ケーブルが損傷することなく機能し、仮眠施設も整備された籠城可能なビルが必要です。普段は国土交通省として機能しますが、発災時には内閣府の防災部局も統合した「危機防災省」に移行すると考えれば、わかりやすいと思います。

首都直下地震対策の再検討を行う

町内会の新年会で、こちらに引っ越して6年の40歳代のご夫婦と話す機会がありました。「どうしてここを選んだのですか。」と聞くと、「ハザードマップ」を参考にして決めたそうです。また、ビルの構造設計にたずさわっている建築士の方からは、湾岸の高層マンションは、地震が起きても倒れないだけで内部の配管類は脆いので、ご自身は購入を控えると伺ったことがあります。自然災害を考慮して住宅を購入する時代になっています。

2016年、熊本地震発災後、震度7で家屋が倒壊した集落を訪れたところ、誰がどこに住んでいるか、互いに分かっていたので、皆さん無事だったと伺いました。地元自治会では、加入率が下がる傾向にあり、改めて自治会活動など地域コミュニティの重要性を再認識しています。

さて、議員会館の私の部屋に、防災科研(国立研究開発法人防災科学技術研究所)が作成した、これからの地震のリスクが濃い赤色から薄い黄色に段階的に色分けされている大きな日本地図(基準日2020年1月1日/最新版)を掲示しています。首都直下地震や南海トラフ地震は、濃い赤で危険地域が塗られていますが、能登半島はノーマークでした。

私の選挙区の東側には「綾瀬川断層」が走っています。また、日本最大の断層は、日本列島を南北に、新潟県糸魚川から静岡県に抜けるフォッサマグナと、東西に、九州から四国、紀伊半島を通り、長野から南下する中央構造線です。国の研究所で断層や火山を研究している研究者の方に伺うと、ボーリング調査を行い、人工的に振動を起こし、関東の地下3500メートルを通る中央構造線を推測したところ、埼玉県の下を通って千葉県に向かっているようです。地震に備えて身の回りの点検が必要であるとともに、国の首都直下地震対策を再検証し、耐震診断や耐震補強に対する国の対策も促していきます。