【国会レポート】米国視察(前編)日本企業とシェールガス【2014年7号】
私はこれまで農業、職業訓練施設、工場、研究機関、介護施設、保育所・幼稚園など、あらゆる現場を訪れ、現場主義で政策立案に取り組んできました。この7月にはイスラエルとパレスチナを訪問してそれぞれの立場や考え方の違いを知り、中東政策を具体的にイメージできるようにもなりました。
さらに9月には1人で米国視察を行ないました。9月1日に成田空港から米国テキサス州ヒューストンに向かい、そこでシェールガスを取材し、ヒューストンから米国ニューメキシコ州のアルバカーキーへと転じてロスアラモス研究所を訪れました。次のサンフランシスコのシリコンバレーでは起業家と投資家を結びつけるイベントを見て、成田へと戻ったのです。
今回も自費の出張ですが、資金的余裕がないためすべてエコノミーチケットにして航空運賃の総額をどうにか20万円に抑えることができました。
街中にあるシェールガス採掘現場
最初のヒューストンではシェールガス採掘現場を視察しました。
シェールガスとは泥岩の一種であるシェール(頁岩)に含まれている天然ガスのことで、これは地下2000~3000メートルの深さにあるシェール(頁岩)の微細な割れ目に閉じ込められています。以前は採掘が困難だったためにほとんど手つかずだったシェールガスも2000年代に入って高圧の水を使う技術が米国で確立してから取り出せるようになりました。その結果、シェールガス採掘ブームが全米各地で起きたのですが、今ではそのブームも落ち着いて、ガス価格をにらみながら採掘量を調整するようになっています。
ガス採掘現場というと中東の油田、ガス田のように1度掘り当てればずっと出続けるような印象があります。しかしシェールガスの場合、採掘用建屋も移動可能な簡便なものであり、採掘できるガスの量は最初の数年でピークに達し、以後はがくんと減ってしまいます。そのため、一定面積(半径3~5キロ)の地域でシェールガスを取り出したら、別の地域に移るというやり方をしています。
今回視察した採掘現場は郊外にある、日本でいえば鈴鹿サーキットのようなモーターレース場の脇にありました。シェールガスは都市の街中にも存在するので住宅地の地下でも採掘できるのですが、地権者の許可を得るのが大変ですので、地権者の了解が比較的得やすい、今回のような場所や農場の地下などを掘ることが多くなっています。
シェールガスの埋蔵量は中国やポーランドも多いのですが、今のところ採掘では米国が世界の先頭を切っています。というのも米国ではシェールガスが出る前からすでに全長50万キロもの幹線ガスパイプライン網が全米に整備されていたからです。採掘したシェールガスもそのパイプライン網に乗せるだけで消費地まで届くようになっていますし、シェールガスの採掘場所が変わっても近くに必ずパイプラインがあって、それを利用できるのです。つまり、ガス配送コストの安さこそが米国ですぐにシェールガス採掘が始まった最大の要因にほかなりません。
日本企業の液化天然ガス輸出基地への投資
米国では天然ガスの輸出を禁止してきたのですが、国内でシェールガスが大量に出るようになってきたため、米国政府もその方針を一変させて輸出を認めるようになりました。それで、大阪ガスと中部電力がテキサス州フリーポート地区(メキシコ湾沿いの町、ヒューストンから車で2時間)で2013年5月から推進中の天然ガス液化・輸出事業に対してもLNG(液化天然ガス)輸出を認可したのです。
ただしこの輸出認可によって、同地区にもともとあった諸外国からLNGを輸入する基地を輸出用のLNGプラントへと建設し直すことになりました。私が現地を視察したとき、ちょうどそのLNGプラントの建設に取り掛かるところだったのです。LNGプラントは3基あって、1基あたりの投資額は5000億円にもなります。3基のうちの1基に対して大阪ガスと中部電力が各600億円、合計1200億円を投資しています。LNGプラントが完成すれば、大阪ガスと中部電力は2018年から日本向けに年間440万トン輸出する計画です。これは両社の年間使用量の何割かに相当します。
米国の天然ガスの価格は100万BTU(天然ガス量を表す単位)あたり3~4ドルなのですが、日本が中東などから輸入している天然ガスは同16~18ドルもの価格になっています。目下、日本では原発が全面停止しており、その代替として天然ガス燃料の火力発電の比率を高めなければならないため、16~18ドルという高い価格でも相手の言い値で買わざるをえない状況に陥っているのです。
しかし米国から天然ガスを輸入すれば、LNG化と輸送のコストを入れても10ドル以下で済むといわれています。それで大阪ガスと中部電力も独自にその安価な天然ガスの確保を狙って投資しているのです。安価な天然ガスを確保できれば、中東の天然ガスの価格を引き下げる材料にも使えます。
両社にとっては商社を介さずに独自にエネルギーを調達するこの試みは初めてなのですが、私も今後、我が国のエネルギー輸入額を抑えようとするこうした試みを応援していきます。