【国会レポート】機能不全に陥っている国会の予算審議の現状【2001年3号】

目下、衆議院は通常国会(第151国会)の真っ最中です(会期は1月31日~6月29日)。国会には「常会」「臨時会」「特別会」の3種類があります。常会とは通常国会のことで、毎年1回概ね1月中に召集され、会期は150日です。主に次年度の国の予算や予算執行のための法律案を審議します。

臨時会(臨時国会)は、臨時に必要がある時(たとえば緊急な災害対策のための補正予算や法律案の審議を求める時など)に内閣が召集することになっています。しかし、実際は通常国会だけでは数々の問題に対処できないので、夏休み前や秋口などに年2回ほど開かれています。

特別会(特別国会)は衆議院解散による総選挙後に召集される国会です。召集日に議長・副議長を決めるのですが、ハイライトは何と言っても首班指名(内閣総理大臣の指名)です。

通常国会が開かれると、まず本会議場で首相が施政方針演説を行います。これは会社で言えば社長の年頭挨拶。それに対して各政党が代表質問をするのですが、質問に立つのは会社なら役員クラスの議員です。代表質問が終わると、審議の場は予算委員会に移ります。予算委員会では、部長クラスの議員が内閣に対してさまざまな質問をぶつけます。予算委員会の終わり頃になると、他の委員会も開かれます。ここは部長クラスもいますが、課長や担当者レベルの委員会です。

特別な位置付けにある予算委員会

予算委員会と他の委員会との違いにふれておくと、予算委員会は国の予算がらみの話だけでなく、あらゆる問題を取り上げることができます。今国会では外交機密費の問題、KSD問題、水産高校練習船えひめ丸の問題などについての質問が出て、マスコミで連日報道されたのは周知の通りです。しかも、総理大臣が出席する委員会は主に予算委員会のみで、NHKの国会テレビ中継も予算委員会には入ります。政治家にとっては晴れ舞台だと言え、会社なら活きのいい部長クラスの議員が質問に立つところなのです。

ところで、今国会では予算案が31日という戦後2番目のスピードで衆議院を通過しました。その間、長時間の審議が行われたものの、提出された政府の予算案は一円たりとも修正されないまま通過してしまいました。民主党をはじめ野党側は、外交機密費の抜本改革と適正額への大幅削減など6項目にわたる予算案の修正動議を出したのですが、これも否決されました。

というのも政府与党が数の力で押し切ったからです。あれほど問題になった外交機密費ですら減額されなかったのは国会が機能不全に陥っているからだと言わざるを得ません。予算は国会で審議する前に与党3党内だけあるいはその領袖クラスを中心にして決まってしまったのです。議論の中身はまったくオープンになりませんでした。

これは、会社にたとえればまさにオーナー気取りの経営者のやり方です。オーナー気取りの経営者は会社を私物化し、設備投資計画についても自分の一存で決めてしまい、他の役員から言われても絶対にそれを変更しません。与党3党はオーナー気取りの経営者そのものです。国を私物化しているのです。

与党3党はオーナー気取りの経営者

オーナー気取りの経営者の会社、たとえば、そごう、日本長期信用銀行などは結局、没落の道をたどってしまいました。一方、トヨタ、ソニー、松下電器、ホンダなどはオーナー経営から脱し、またオーナー気取りの経営者を排除していて、だからこそ成長し続けているのだと思います。与党3党がオーナー気取りの経営者であり続けるなら、もう没落は目に見えています。没落するのが与党3党だけならいいですが、それに巻き込まれる国や国民はたまったものではありません。

与党であれ野党であれ、すべての国会議員は国民から負託を受けて国会にやってきたのです。したがって、これからの国会運営もオーナー気取りの経営者のやり方ではなくて、開かれた中で株主もきちんと発言できて会社の方針が決まっていくような国会運営にしていかなくてはいけません。

さて、大島は今国会において厚生労働委員会、文教科学委員会総務委員会でそれぞれ30分ずつ質問しました。その中で総務委員会での議論をご紹介しましょう。今、そこでは現行方式のテレビ受像機が10年後には使えなくなるという法案が通ろうとしています。電波が非常に混み合っているので、テレビ電波の質を現行のアナログ方式からデジタル方式に切り替えるということなのですが、以前、この話を私の友人から聞いてちょっとおかしいと思い総務委員会で質問に立ったという次第です。

高過ぎる携帯電話の電波使用料

デジタル方式への切り替えのために国は800億円の予算を投入します。そのうち500億円が皆さんの家にある現行のテレビアンテナを取り替える費用で、後の300億円が資力のない地方の放送局の設備投資に当てるという計画です。

質問に際して下調べをしたところ、予想もしなかったことが分かりました。国は毎年電波使用料を取っているのですが、それが放送局1局当たり年2万3,800円、人工衛星1基につき年2万4,100円であるのに対し、携帯電話は1台につき年540円となっているのです。その上、この電波使用料をテレビのデジタル方式への切り替えに使うらしいのです。携帯電話の電波使用料が高過ぎるのも、それをテレビに回すのも、ほんとうにおかしい。

しかも、政府の800億円のほかに、デジタル方式への切り替えでNHKと民間放送局とで合わせて1兆円を投資することになっています。その1兆円は私たちの受信料アップやテレビCM料アップに跳ね返ってくるおそれがあるのです。

政府は一方で、光ファイバー網の整備を進めており、3年から5年もすれば各家庭に光ファイバーが張り巡らされます。となると、インターネットを通してパソコンで動く映像を観ることができるのです。レンタルビデオを借りてこなくても、いつでも映画が観られるようにもなります。だから、パソコンがテレビの機能を肩代わりするようになるということも十分にあり得ます。政府はテレビを視聴する人口は将来も変わらないと想定しているのですが、動く映像をパソコンで見られる時代になって、どうしてテレビを視聴する人口が減らないと言えるのでしょうか。デジタル方式のテレビのために投資したお金は無駄にならないのでしょうか。

コスト計算なしで1兆円投資の無謀

ともあれ、大島は総務委員会で、「ほんとうに1兆円を投資するという判断は正しいのですか」と片山総務大臣に質問しました。ところが、総務大臣は「利便性が増します」という答えに終始し、結局、その1兆円について政府は何のコスト計算もしていないという民間では考えられない実態が分かったのです。

会社ですと設備投資をする場合、その投資対効果がどれほどか数字によってしっかりと弾き出すのが大前提です。でないと、投資していいかどうかすら判断できません。が、政府は一切投資対効果を考えないのです。サラリーマンから国会議員になった大島としては、そのようなことで政策が決まっていいのかと強い憤りを覚えます。投資対効果をないがしろにするような会社は必ず失敗しますが、日本が同じ轍を踏んではいけません。そうならないためにも、大島は民主党の若手議員と一緒に勉強会を開くなどこの問題への取り組みを始めたところです。