【国会レポート】政治家と官僚とのあるべき関係とは協力すると共に牽制するということ【2002年2号】

今、一般の人たちが抱く中央省庁の官僚のイメージはけっしてよくないかもしれません。しかし、大部分の官僚は朝から夜遅くまで一生懸命に真面目に働いているのも事実です。ほんの一部の官僚が不正に手を染めたことによって、あるいは、やはり一部の官僚が政治に大きな影響力を行使することによって中央省庁の官僚全体が諸悪の根元であるかのような報道がなされます。

三権分立の中では、立法(国会議員)と行政(官僚)とは、仕事の面でお互いに協力し合うと同時に、権力のそばにいるということで堕落しないようにお互いが牽制し合わなくてはなりません。逆に、立法と行政とが癒着してしまうと不正を行なう国会議員や官僚が生まれやすくなるのですが、少なくとも国会議員はその職務と国民の皆さんに忠実であればそうした癒着は起こらないはずです。だから、不正や癒着が明るみに出た場合、やはり政治家に大きな責任があると言えます。

官僚のレクチャーで問題意識を伝える

世界的に見て日本の官僚の能力は非常に高いと思います。その能力を行政サービスに十分に反映できるように仕向けることは国会議員の大事な役割だと大島は考えています。そのためには、自分が国会議員としてどんな問題意識を持っているかをしっかりと官僚に伝えなければなりません。1つの方法として大島がよく行なっているのが官僚から政策のレクチャーを受け、その場で意見交換を行なうということです。つまり、大島自身が興味を持った問題、あるいは選挙区の方からいただいた課題や問い合わせについて、その所管省庁の官僚に議員会館の大島の部屋まで来てもらって30分から1時間ほど具体的な説明をしてもらっています。

果最近では、狂牛病問題、中国への技術援助、医薬品の管理体制の現状、武蔵水路の問題、上尾道路の問題、産業クラスター計画などで、それぞれ農林水産省、外務省、厚生労働省、国土交通省、経済産業省の官僚にレクチャーを受けました。レクチャーでは必ず2人以上の官僚が一緒に来て、そのうちの1人は大島との会話の内容をメモします。そうして官僚は大島がどんなことに関心を持っているのかを把握するのですが、大島側からすればそれは官僚に対して自分の問題意識を伝えるとともに、常に厳しいチェックを働かせているいうことになります。

また、大島の求めに応じてではなく、政府として新しく法律をつくる場合には法律の趣旨や目的をレクチャーするために官僚のほうから訪ねてくることも少なくありません。

大島は衆議院議員になって以来、地道にこうした活動を積み重ねてきました。官僚に対して自分の問題意識をしっかりと伝えるだけでなく、官僚のレクチャーによってそれぞれ個別の問題が1つに関連づけられて問題が立体的に理解できるようになったこともしばしばありました。さすがに官僚の持っている情報は量が多いというだけではなく密度も非常に濃いものがあります。

「官僚フォーマット」に陥らない

ただし、官僚は非常に説明が上手なので、その土俵に引っ張り込まれないように気を付けなければなりません。官僚はあくまでも行政の立場で説明する、言い換えれば、政治家を自分の土俵に乗せようとします。それはそれとして当然のことなのでしょうが、前述したように三権分立をきちんと機能させるためには、立法と行政とが牽制し合う関係を維持しておかなければなりません。牽制するのとは反対に、政治家が官僚の土俵に乗ってしまうことを永田町では「官僚フォーマット」と言っています。あたかもパソコンのフロッピーディスクやハードディスクがフォーマットされるように、官僚の論理に従って動くように政治家がフォーマットされてしまうのです。「官僚フォーマット」された政治家は自民党の議員に多く見受けられるようです。

政治家が「官僚フォーマット」されてしまうのは、結局、官僚自身にとってもよくないことではないでしょうか。もともとは政治家に主体性がないことが悪いのに、官僚が政治家を操っているような印象を一般国民に与えてしまって、官僚自身が悪者にされてしまうからです。

さて、今まで「政治にパンチ!!」では個別的な政策について書くことが多かったのですが、今回は、衆議院議員になって1年半経った大島のいくつかの中央省庁に対する印象を記したいと思います。もちろん、これは「木を見て森を見ず」という話かもしれませんし、政治家によってそれぞれ印象は異なるのも当然でしょう。だから、これはあくまでも一面から見たものにしかすぎません。要は、会社が違えば社風も違うように省庁ごとの雰囲気の違いといったものを大島の視点から少しでもお伝えできれば、ということです。

<厚生労働省>

昨年1月の省庁再編で労働省と厚生省が一緒になって厚生労働省となりました。大島は一貫して雇用問題に取り組んできたので、ここでは旧労働省について述べたいと思います。戦後ずっと完全失業率が3%以下だったため雇用関連の仕事も少なかったのですが、ここのところ失業率が大幅にアップして仕事も急激に増えてきました。つまり、雇用対策が声高に叫ばれる中、予算もふんだんに付いて、今最もフォローの風が吹いている官庁なのです。労働組合も、賃上げより雇用確保を優先しワークシェアリングも認めるなど1年前と比べて相当柔軟な態度になってきています。

しかし、厚生労働省が自ら主導権を取って日本人の働き方や職業訓練の仕組みを変えていこうという気概はまだ小さいように感じます。1歩でも2歩でも先取りした労働政策を提案していけば与党も野党も必ず乗ってくるはずだから、今が政策官庁として脱皮できる絶好の機会だと思います。仕事に真面目なあまり、経済産業省のような新しい突飛なアイデアをあまり出してこないのが残念です。

<経済産業省>

省庁再編で通産省から今の名称に変わりました。会社で言うと総合企画部、あるいは、ボストンコンサルティングやマッキンゼーなどのコンサルティング会社のようなところでしょう。かつて、リタイアした人を物価の安い海外に移住させるという「シルバーコロンビア計画」をはじめ夢のある計画をいろいろとぶち上げてきた官庁です。ちょっと悪ノリしていると言えばそうかもしれないし、予想の半分は当たらないようなコンサルタント業務かもしれませんが、夢を語る部分は聞いていて非常に楽しいのは確かです。

最近では、労働行政の仕事を引っ張り込もうと職業教育や雇用対策にまで手を伸ばしてきています。厚生労働省も指をくわえてみていては仕事を取られてしまうかもしれません。いずれにせよ、この官庁のそうした積極的な部分を厚生労働省も取り入れていけば、労働行政ももっと活性化していくに違いありません。

<農林水産省>

狂牛病が発生した直後は、自分たちの責任だということについてあまりピンと来ていなかったようですが、狂牛病が大問題となってからは焦って仕事をし始め、今では相当強い問題意識を持つようになってきました。折に触れて、大島にも膨大な狂牛病関連の資料を送ってきます。この官庁は従来から生産者寄りの立場で行政に携わってきたため、消費者への目配りがやや不足している感は否めません。消費者寄りの行政をどう打ち立てていくかが今後の課題だと思います。

<外務省>

今回、外務大臣と事務次官というトップが辞任してまたまた外務省は騒ぎの渦中に置かれていますが、これまで外交機密費などに関して外務省内での不正が何度も明るみに出てきました。残念ながら外務省にはそのように堕落する構造的な問題があるのではないでしょうか。他の官庁では、たとえば文部科学省は学校、厚生労働省は病院、財務省は税務署総務省は郵便局といったように直接国民にサービスをする部署を抱えているので、官僚が庶民感覚からずれたとしてもそれほど大幅にはずれません。ところが、外務省にはそうした部署が国内にないのです。特に海外では外交機密費などのお金をふんだんにもらいながら、仕事と言えばアテンド業と調査だけなので、どうしても気持ちが緩んでしまう面があって、外務官僚も年を経るにつれて庶民感覚とのずれが非常に大きくなっていきます。

また、田中真紀子外務大臣時代、大臣が省内の人事を動かそうとしても官僚の激しい抵抗があって果たせませんでした。これは社長の言うことを社員が聞かないのと同じで、社長の人事権が機能しない会社がうまくいくはずはありません。しかし、以上のような外務省の構造的な問題は外務官僚自身に責任があるわけではなく、むしろそのようにしてしまった政治家に大きな責任があります。これから政治家が率先して外務省の改革のために力を尽くしていかなければならないと思います。