【国会レポート】政治家は派手な言動ではなく地道な取り組みをすべし【2002年5号】

国会開催中はあまり地元を歩くことができませんので、大島はこのゴールデンウィークを利用し衆議院議員大島あつして、できる限り地元を歩き回りました。とはいえ、知り合いのところを訪問するのではなく、重さ3.3キロのハンドマイクを自分の肩に掛けて街頭演説をしながら、ボランティアの人たちと一緒に、月1回発行しているこの『政治にパンチ!!』を住宅街などのポストに入れて配布していくという活動を中心に行いました。

地元で改めて知る現場感覚の重要性

そうやっていると、しばしばその住宅街にお住まいの方や通りがかりの方が「国会議員なんですか?」などと声をかけてくれるのですが、これをきっかけに道端での対話となることも少なくありませんでした。そんななかで特に印象的だったのは保険の外交員をしている女性の話です。「私のところは母子家庭で子供が3人いるんですが、今度、母子手当(児童扶養手当)が減額されると、生活が大変です。生活保護をもらえばいいとも言われるんですが、そうなると車を持ってはいけないとか、いろいろと条件があるので、働くことができなくなります」。

また、地元の居酒屋でアルバイトをしているという26歳の女性からも、「子供が1人いますが、離婚して母子家庭になりました。母子手当が減ると本当に困ります」と、同様の切実なご意見を頂きました。

母子手当の問題は、大島が所属する厚生労働委員会で主に議論されます。小泉内閣が国会に提出している「母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律案」が今後議論の予定ということもあり、大島は、早速、厚生労働省に母子手当てに関する政府の方針を再確認すると共に、過去の委員会での議事録を読み直し、これからの対策の検討を始めました。地元を自分の足で回ったからこそ、現場の話を聞けたわけで、改めて現場感覚の重要性を痛感したという次第です。

大島はサラリーマン出身でサラリーマンのことは分かっていますし、友人には中小企業経営者が多いので経営者のことも少しは分かっているつもりです。しかし、女性の方々が何を考え、どうしようとしているのかについては疎い面がありました。このゴールデンウィークの9日間、地元を歩いてみて、そのことを痛感致しました。

ほかに、大変なことになっているなと思ったのは、50代の女性の次の話を聞いたときです。「昔は政治に関心を持っていたので、市長選挙などいろいろな選挙を手伝いました。でも、今は、政治への憤りを通り越してしまっていて、もうテレビで政治のニュースは全然見ていません。これからは投票にも行きたくないという心境です」

政治に対する憤りや不満を通り過ぎ、もはや無関心になってしまっているということです。こういう状況が広がっていったら、非常に怖いことになります。なぜなら、80兆円を超える国家予算の配分を決めるのは政治です。その配分の仕方が国民生活に大きな影響を及ぼしますし、自衛隊の防衛出動の発令を決めるのもまた政治だからです。

権力の暴走を止めるのが国会の役割

残念ながら、今国会では国会議員のスキャンダルが相次ぎ、すでに3人もの国会議員が辞職するという事態になっています。こうしたスキャンダルまみれの政治を目の当たりにすると、政治に憤りや不満をぶつけるのさえバカバカしくなって、ついには無関心になるという人が多くなるのも分からないではありません。

また、政治家に対して「相手のミスやスキャンダルを暴き合うのはいい加減に止めて、もっと建設的な議論をしろ」という声を浴びせたくなるのも無理からぬことでしょう。

しかし、実際の国会で行なわれているのは、委員会や部会での地道な議論が大半です。スキャンダルばかり議論しているような印象を国民に与えてしまうのは、マスコミが大々的に報道するからであって、報道されない国会での議論の大半は、地道ながら大切なものなのです。

やはり、権力の暴走を止めるために悪事を暴くということは必要だと大島は思っています。国家の権力というのは非常に強大で、マスコミも最近は権力にむしろ迎合的になっているように感じます。権力をチェックし、権力のバランスを取っていくためには、野党が政府、与党のミスを追及していくという取り組みも不可欠なのです。

優先順位を無視した的外れな法案

さて、今国会での大きな問題は、政府、与党が優先すべき問題を差し置いて、緊急性に欠ける法案を次々と出してきたことです。すなわち、個人情報保護法案(メディア規制法案)、有事法案、郵政公社法案、健康保険法改正法案(保険料の負担増)といった法案です。けれども、今の不況下で本当に求められているのは、経済を活性化するための法律、消費を喚起するための税制改正など、緊急を要し足下をしっかり固めるための法律なのではないでしょうか。そいうものをすべて放っておいて、将来的には議論する必要はあるものの直ちに成立させる必要性に乏しい法案を政府、与党は国会審議に持ち込んできました。そういう意味で、政府与党は正に現場感覚に欠けていると言わざるを得ません。

小泉政権はこれらを最重要法案として位置づけています。小泉政権のこの優先順位と、大島が地元を回って多くの人たちとの話から得た優先順位は全く異なるのです。この不況下、国会で有事法制やメディア規制法案を論じている間にも、資金繰りに困った企業がどんどん倒産していきます。本来、何よりもまず企業が資金繰りを心配しなくてもいいように政策的な手立てを打っていくのが政治の役割であるはずです。

野党としては、政府、与党が法律を出してくると、優先順位が違うと思いながらもその審議に応じなければなりません。的外れな法案に時間を割かなければならないのは不幸なことです。政権交代が起きて与野党が逆転すれば、大島たちの民主党が主導権を握りますので、もっと現実的な優先順位に基いて法案の議論ができるようになります。もはや、政権交代が無ければ日本を変えることは出来ないのです。