【国会レポート】政党は国民に雇われた『七人の侍』である【2002年8号】

今年1月に開会した通常国会は192日間の会期を終えて7月末に閉会しました。この国会では政府・与党が重要4法案(有事法案、個人情報保護法案、郵政公社法案、健康保険法改正案)を設定しましたが、今国会でこの4法案を優先して議論する必要が本当にあったのか、大いに疑問です。というのも、依然として景気は低迷し、雇用問題も更に深刻になっています。また、日本の景気を牽引するとされてきたアメリカ経済にも陰りが出てきており、最優先しなければならないのは景気対策だったからです。

国会を野球に喩えると、法案というボールを投げるのは政府と与党(自民党、公明党、保守党)で、そのボールを打席に立って打ち返すのが野党ということになります。1月の段階では、小泉政権は国民の高い支持を得ていて、国民の気持ちに近い言葉も発していましたので、大島は、景気をよくするという観点から税制やペイオフ(預金を1000万円まで保護)、雇用などの問題に取り組むに違いないと思っていました。小泉政権はきっとポイントを突いたボールを投げてくると期待して打席に立ったのですが、実際に飛んできたのは、ボールどころか、穴の空いたやかん(有事法案)や歯の欠けた下駄(個人情報保護法案)、挙げ句の果てにはハンマー(医療費の自己負担が1.5倍になる健康保険法改正案例えば、現在、血圧降下剤を服用していて毎月5000円位払っている方は来年の4月から7500円程支払うことになります)等でした。これではとても試合になりません。

ピントはずれのボールが来た国会

民主党の衆参合わせて180人の議員はそれぞれが様々な知識とノウハウを持っているので、政府・与党からきちんとしたボールが投げられればヒットを打つこともできたのですが、そうではなかったために、残念ながら民主党議員の英知が発揮されない国会となってしまいました。しかも、相変わらず政治家のカネをめぐる問題が噴出し、国会議員の辞職や逮捕が相次ぎました。その結果、ほとんど中身のない国会となったのは日本にとって大きな損失です。

今の政府・与党が時代の要請に合った法案を出せない以上、やはり政権交代をしないと日本は大変なことになります。政権交代を実現するためにも、民主党は、リーダーであり将来の首相候補でもある党代表を中心にして、政権担当能力の高い党にならなければなりません。

税金で運営されているのが民主党

民主党には毎月、所属する議員の人数に応じた立法事務費が国から交付されます。それと政党助成金を合わせれば、民主党が受け取っているのは年間約98億円になり、それは民主党の年間予算約100億円の実に98%を占めるのです。立法事務費も政党助成金も出所は税金なので、結局、民主党はほとんど税金で運営されている政党ということになります。また、派閥の先輩議員が後輩議員に政治資金を渡すというような自民党的な親分子分関係は民主党にはありません。つまり、国会議員個々人が独自の判断を下せる政党なのです。

各議員が独立しているので、当選回数別の会合や当選回数を超えた会合、テーマ別の会合など党内の多岐にわたる議員の会合で議論を重ねた後、代表を中心とする執行部が議論を集約して最終的に党としての意志決定をするのです。

皮膚感覚がある政治家になるべき

国民の生活は多様で、一人ひとり変化に富んでいます。そうした国民の生活を理解するには、机上の政策の議論ではなく、国民の生活との一体感によって育まれた皮膚感覚のようなものが必要です。その皮膚感覚こそ政治家にとって一番大切な資質だと思うのです。それがあれば社会で本当に役に立つ血の通った法律がつくれるでしょうし、逆に頭だけで考えた法律だと国民の生活の実情とはかけ離れたものになってしまうでしょう。

経営の神様と呼ばれた松下幸之助氏は「取締役会で秀才型の役員ばかりを集めてもいい答は出てこない。しかし、役員の半分を(秀才型ではない)型にはまらない人間にすると、いい答が出てくる」と言っています。民主党に対して「安心感を持てない」「生活感がない」といった批判があるのも、型にはまらない人が少ないからだと思います。

大島は様々な資質と個性を持った政治家がいてこそ国民の生活に密着したバランスのある政治を行うことができると考えています。ですから、国会議員全員が政策論に秀でていなければならないという意見には少し違和感を覚えます。

国民に選ばれる政党を目指す

以上の視点から政党というものを考えると、黒澤明監督の映画『七人の侍』が思い浮かびます。山賊集団の襲来に悩む農民たちが7人の侍を雇って村を守るという話ですが、7人の侍はリーダー、参謀、剣の使い手、若武者などそれぞれ違った能力と個性を持って役割分担をし、一つのチームとして機能します。山賊集団との戦いで7人のうち4人は死にますが、村には農民が安心して暮らせる平和が訪れます。これを政治に置き換えると、7人の侍が政党、農民が国民でしょう。国民はその時の政治を任せるのに一番相応しい政党を選べばいいのです。

国民に選ばれる政党になるには、民主党が多様な能力を持つ議員の集団だということを国民にアピールする必要がありますし、また、党全体を強力なチームとしてまとめられる度量を持った人を代表に選ぶ必要があると考えています。大島はそうした民主党の中で、樽のタガのような役目を果たしていくつもりです。