【国会レポート】信用こそ金融再生の基本【2002年11号】

政府は10月末日、不良債権処理の加速策や雇用対策、中小企業対策などを柱とする総合デフレ対策を発表しました。政府はこれまでにも数多くの「○○対策」を打ち出してきましたが、政府の経済対策はこの10年以上にもわたって、ことごとく失敗するかあまり効果を上げてきませんでした。やはりその失敗の意味をもう一度噛み締めなければ、効果的な政策を打ち出すことは出来ないと思います。

政治への信用を取り戻すことが先決だ

まず政府への「信用」について考えてみましょう。国の経済活動にとってこの信用は非常に大事です。たとえば、政府の設けた年金制度を国民が信用しているならば老後の不安もないので、稼いだお金はそれほど貯蓄せずに済み、消費のほうに回すことができます。そのように国民皆が消費していけば、経済は活性化し景気もよくなっていくのです。

しかし、現実には国民はもはや政府の政策をあまり信用していません。政治家のメッセージにも疑いを持っています。老後になっても年金がもらえないのではないかと思っているのです。そのため、国民は将来に備えてせっせと貯蓄に励み、一方で消費はどんどん冷え込むという結果になっています。

企業も本来は、利益を新商品開発のための設備投資に回すはずなのですが、政府の経済政策が信用できないため、利益は優先的に借金返済に向けています。企業の利益が設備投資という形での消費に使われていない結果、全体の企業の仕事量も減ってきており、ますます景気が悪くなるという循環に陥っています。

以上のような日本経済の状態を改善するには、やはり政府の政策、あるいは政治家のメッセージに対する国民の信用を取り戻さなければなりません。政治家の信用を取り戻すべく、今後、大島も全力を挙げて努力していきます。

銀行の自由度を上げて経済活性化を

また、日本経済のなかで重要な役割を演じてきたのが銀行ですが、目下、銀行経営に対しても厳しい目が向けられています。しかし、これまで日本の銀行は財務省の規制によってがんじがらめに縛られてきました。その規制は一つの銀行では一種類一枚のカレンダーしかつくってはならないというところにまで及んでいます。銀行の一存で利用者向けに幅広い金融商品を取り揃えるといったことなど不可能でした。そのため、お金を借りるという点では一般の利用者にとって銀行は縁遠い存在となってしまっています。むしろ消費者金融のほうが身近でしょう。

日本の銀行には多くの優秀な行員がいます。銀行経営の自由度が上がれば、事業や経営者の可能性を見てもっと融資を増やすことができるでしょう。それが日本経済の活性化につながるはずです。ところが、今、政府は銀行国有化など逆に規制を強化しようとしています(一般の民間企業でさえ国有化の対象です)。改革とは本来、無用な規制を取り払うことです。大島は、官僚と戦い、規制を撤廃した上で、その潜在能力を十分に発揮できるような環境づくりに尽力していきたいと思います。

国や地域の政策トピック 雇用保険とSSK

今年の3月、長崎の造船会社である佐世保重工業(SSK)が、雇用保険料を財源とする「中高年労働移動支援特別助成金」「生涯能力開発給付金」を不正に受給していた疑いが発覚しました。SSKは従業員に教育訓練をしたかのように装って生涯能力開発給付金を不正に受給していたことについては全面的に認め、受給した給付金約3億8千万円を全額返還しました。しかし、関連企業にカラ出向させることで受け取ったとされる中高年労働移動支援特別助成金、約17億2千万円に関しては約4,500万円分についてカラ出向を認め返還するだけでした。

厚生労働省はこの問題については当初、4,500万円以外の分については偽装の確証がないとして、返還要求や警察への告訴を行わない姿勢をとっていました。しかし、全従業員の7割以上が出向するという通常では考えられない不自然な形をとっており、残りの17億円近くの助成金について確証がないからといって返還を諦めるのは余りにも無責任です。そこで大島が7月17日の厚生労働委員会でSSK問題について追求したところ、厚生労働大臣は再調査を行うことを約束したのでした。

その再調査の中間報告が10月21日に公表されました。厚生労働省は助成金制度自体に不備があったことを認めるとともに、中高年労働移動支援特別助成金を受給したSSKを含む合計5332社、総額約154億円について調査を行い、不適切な受給については返還を求める方針を決めました。また厚生労働大臣は当時の担当に対して口頭での厳重注意を行いました。厚生労働省が自らの制度の不備を認めて処分を行うというのは極めて異例のことです。

現在、雇用保険の財政は危機的状況にあります。1997年には約3兆9千億円あった積立金が、長期間に及ぶ高い失業率の為に現在では1,400億円程度にまで減っており、このままでは来年度中に枯渇してしまうのです。そのため、雇用保険制度で設けられている各種助成金のあり方自体を見直すことも必要となっています。

本当に困っている方や企業の為に、手当や助成金が効率よく適正に支払われるよう、大島は今後も監視とともに政策提言を行っていきます。