【国会レポート】ヨーロッパ実態調査報告国会派遣の一員として【2002年10号】

大島はこの夏、衆議院の厚生労働委員会の派遣で超党派議員団(7名)の一員としてヨーロッパに行って来ました。イタリアでは保健省や療養施設、イギリスでは病院、オランダでは保健福祉スポーツ省等を訪問し、各国の医療制度の実態を調査しました。

日本では国民皆保険制度のおかげで公的な保険に入っているのは当然のように思いがちですが、ヨーロッパでは必ずしもそうではありません。イギリスでは公的な保険が9割私的な保険が1割、イタリアでは公的保険8割私的保険2割となっています。私的保険の保険料は公的保険に比べてどうしても高くなりますので、私的保険が公的保険に取って代わるようになると、保険料が払えず保険に加入できない方が多く出てくる可能性があります。財政問題等、難題を抱える日本の医療保険制度ですが、やはり国民皆保険というシステムは今後も維持しなければならないことを改めて感じました。

オランダでは、ハーグに行って、安楽死の問題について聞いてきました。ヨーロッパに住んでいて「無宗教だ」と言うのは、結構勇気がいることです。私がサラリーマン時代に駐在していたドイツの場合、所得の1%を宗教税として納めなければなりませんでした。オランダはそういうことはありません。それどころかオランダ人の4割くらいは「無宗教だ」と答えます。

オランダでは安楽死は既に制度化していますが、無宗教の人が多いので安楽死についても抵抗なく議論が積み重ねられてきたのです。また、積極的に死を迎えたいという自己決定権を尊重する、言い換えれば、自分の人生は自分で決めるという独立心の強い国民性がオランダにはあることも安楽死制度導入の背景にあるようです。

オランダでは議論を30年間ほど続けた後に安楽死を制度化したのですが、無宗教の人が多いという点に加えて、オランダ人には徹底的に議論してから妥協点を見出していくという気質もあります。要するに、そういう文化的な背景の中で生まれてきたのがオランダの安楽死制度なのです。ワークシェアリングにもオランダモデルというものがあります。日本にも安楽死制度やこのオランダモデルを導入したらどうかという話がありますが、やはり文化的な背景が違うので、それらをそのまま直ちに日本に導入するというのは難しいのではないか。それがオランダを訪ねた大島の実感です。

現在、ヨーロッパでは統一通貨ユーロが使われています(イギリスでは未使用)。国を越えて同じ通貨が使えるというのはやはり便利でした。物価の比較も簡単です。企業にとってもヨーロッパ域内でのコスト比較が容易になりましたので域内でのダイナミックな企業統合が今後進むことでしょう。このユーロによる経済統合から政治統合へというヨーロッパの歴史的な試みについても、今後も注目していきたいと思います。

国や地域の政策トピック 谷間問題

こんにちは。

6/7の厚生労働委員会での質問を拝見しました。

労災保険と健康保険の給付の谷間の問題についてです。

保険者内部の問題で、国民皆保険制度下で又、憲法に保障されている平等の下で、国民が不利益を受けていたことに対し、非常な憤りを感じているところです。

私の知り合いも、保険の谷間の問題で300万円程度を自己負担しました。

大島議員の質問を拝見し、これが国民の代表である国会議員の活動であると感動しました。サッカー日本代表のプレーを超える感動です。

この件に関し、法律改正・通達は、時間がかかるでしょうけれど、早期に全ての県で社会保険審査官への審査請求の段階で容認されることを期待しております。

ますますのご活躍を期待しております。

直接存じ上げない方からこのメールを頂きました。「谷間問題」とは、健康保険(健保)と労災保険(労災)の制度の間に「谷間」があるために、けがや病気が健保と労災の何れの対象にもならず医療費の全額自己負担を強いられてしまう問題を指します。日本では昭和36年4月から「国民皆保険」つまり国民全員が国民健保や組合健保等の公的な保険制度によって守られる制度となっていますので、「谷間」は本来存在しないはずです。例えばサラリーマンの方は健保と労災の両方に加入しますが、「業務上」つまり仕事中のけがや病気については労災の給付の対象になり、業務外のけが等は健保の対象となります。また国民健保の場合には業務上、業務外の区別無く適用されます。このように一般的には谷間問題は生じない形になっており、谷間問題の存在自体広く知られていない所以です。

しかし実際には、谷間問題のために百万円以上もの医療費を全額自己負担しなければならない等の事例が、特に中小企業の事業主の方が加入する政府管掌健保において多く発生しています。その要因は、労災は雇われている労働者のための制度であり、社長や事業主の方は対象でないことにあります。全ての法人事業所あるいは5人以上従業員のいる個人事業所は健保に加入することが義務付けられていますので、事業主の方も政府管掌健保には入っているはずですが、業務中のけがに対して政府管掌健保は適用されませんので全額自己負担となるのです。

実は中小企業の個人事業主も労災に加入できる「特別加入制度」もあるのですが、これは任意加入であり、全国約270万の労災適用事業所のうち約65万人の事業主の方しか特別加入していません。そのため業務中に大けがをしてから多額の医療費を全額自己負担しなければならないことに気付く事業主の方が多いのです。

また、特別加入している事業主、あるいは一般の労働者の場合でも、労災では業務外の事故とされ、健保からも給付を拒絶される場合もあり、健保、労災の両方に入っているから絶対大丈夫とは言えないのです。これは、健保と労災の間で「業務」に関する解釈にずれがあるためで、明らかに国民皆保険の主旨とは矛盾します。

大島は、6月7日の厚生労働委員会でこの谷間問題を取り上げ、労災の対象とならないものについては全て健保の対象とするように主張しました。これに対し、厚生労働大臣は「(労災と健保の)どちらかにするかということを至急検討したい」と谷間問題の解消を約束しましたが、大島は一日も早く谷間問題の解消が具体化するよう、引き続き政府に働きかけていきます。