【国会レポート】政治家の公約遵守が政策実行への信頼につながる【2003年5号】

政治への信用を得る最大の方法は、政治家が有権者に対して掲げた公約を実現すべく最大限に努力することでしょう。政治への信頼こそが、たとえば日本の景気を回復させる上でも非常に重要なのです。国民が政治を信頼しないと、政治家がいくら「景気を良くします」と言っても、国民はそれを信じません。その結果、安心して消費することができず、景気も一向に良くならないということになるのです。

もちろん景気だけではなくてあらゆる面で政治の信頼を取り戻すことが必要だと思います。私は衆議院議員に当選してから今日まで、選挙で掲げた公約を実現するために一生懸命に仕事をしてきました。

その公約の一つに「健康で安心して暮らせる社会の実現」があります。

ファミレスの料理はコンビニの弁当と同じ

折から、BSE問題をきっかけにして食の安全性を見直す議論が高まってきて、先日の衆議院厚生労働委員会で「食品衛生法等の一部を改正する法律案」についての審議がありました。私は自分の公約を実現する絶好の機会だと思い、そこで質問に立って「セントラルキッチン(集中食材加工工場)で調理される料理の添加物表示の問題」を取り上げました。

このように述べると何やら小難しく思われるかもしれませんが、要するに、ファーストフードやファミリーレストラン、回転寿司などのチェーン店で出される食べ物にはどんな着色料や合成保存料が使われているかという食品添加物の表示がまったくないので、私は審議の席上、この現状を見直して添加物表示をきちんと行うべきだと政府に対して強く主張したわけです。

ご存じの方も多いと思いますが、ファーストフードやファミリーレストラン、回転寿司などでは、各店舗ごとに調理しているのではありません。1カ所のセントラルキッチンで集中的に調理しそれを多数の各店舗に運んでから温めるなり加工するなりしてお客に出しているのです。

つまり、普通の料理店のようにお客の注文に応じて食べ物を出しているように見えるものの、実は調理プロセスはコンビニに並んでいる弁当やおにぎりとまったく同じなのです。

時代に追いつかない法律の現状

しかし、コンビニの弁当やおにぎりには法的に食品添加物の表示が義務づけられており、実際に細かく表示されています。だからこそ、ファーストフードやファミリーレストラン、回転寿司などで添加物表示が義務づけられていない点が、「健康で安心して暮らせる社会の実現」を公約に掲げてきた私には大いに心配なのです。

それにしても、なぜ今のような状況になっているのでしょうか。店頭の弁当やおにぎりの添加物表示を義務づける規定は1970年に設けられたのですが、当時はまだファーストフード、ファミリーレストラン、回転寿司などの業態は出現していませんでした。それらが出現した後も法律的な対応がなされないままで推移してきました。そのため、今は、たとえばファミリーレストランで料理を注文した場合、そのときにお客のほうから「どんな添加物が入っているのか」と訊けば、ファミリーレストラン側がきちんと答えるという建前になっており、食品添加物の表示はしなくてもいいことになっているのです。結局のところ、店内で調理している普通の料理店と同じ扱いなのです。

私は審議に臨む前に、そのような建前が本当かどうか、いくつかのファミリーレストランで自ら試してみました。料理を注文して、「これにどんな添加物が入っているのですか」あるいは「添加物をお客に説明するという教育を受けていますか」と訊いたのです。しかし、そうした問いに答えられる店員は1人もいませんでした。店のメニューにどんな添加物が入っているかも知りませんし、もともとそうした社員教育はまったく行われていないのです。

大臣から引き出した、突っ込んだ答弁

審議では、私は以上のファミリーレストランでの体験をまず話した上で、政府参考人(厚生労働省の官僚)に対して「ファミリーレストランの料理にどんな添加物が入っているか訊いたことがありますか」と質問しました。すると思った通り「ありません」という答えでしたので、現状は合理的ではないのだからファーストフードやファミリーレストラン、回転寿司などにも添加物表示を義務づけるべきだと主張したのです。

さらに最後にこの問題について厚生労働大臣に水を向けると、大臣の答弁は「量産されるものは、添加物について明確にすることができるはずだから検討したい」というものでした。これは非常に重要な答弁だと言えます。というのも、審議が終った直後、厚生労働省の官僚が私のところにやってきて、「大臣は突っ込んだ発言をされました」と打ち明けてくれたからです。大臣も官僚側が用意した答弁を離れて私の主張のほうに歩み寄ったのでした。

食品添加物表示の問題については「ファミリーレストランのメニューで添加物表示をするとしてもメニューのスペースは限られているので、表示はとても書き切れない」との反論もあるようです。けれども、国民の安全を考えるならばやはり全部表示すべきですし、多くの添加物を表示するのが嫌なら、むしろ添加物を減らすように努力していくべきでしょう。

いずれにしても、食品の安全については、事故が起こらないように事前に万全の策を期しておく必要があります。人体の安全に関わることですから、一旦事故が起きてから対策を打っても取り返しがつきません。また、BSE問題の例でも明らかなように、事故が起きてからのコストも非常に高くつきます。

「健康で安心して暮らせる社会の実現」という観点から、私は今後とも、ファーストフード、ファミリーレストラン、回転寿司などの食品添加物の表示の義務化が実現するように、全力を挙げて政府に働きかけていくつもりです。