【国会レポート】近代的な政党としての民主党【2004年5号】

このほど私の所属する民主党は菅直人前代表から岡田克也新代表に代り、新しい執行部体制がスタートしました。そこで今回は、今年4月下旬に某全国紙に掲載された記事を題材に取って、民主党とはどのような政党なのかを改めてご説明したいと思います。

記事のタイトルは「両院議員懇談会」です。書き出しは「民主党は『寄り合い所帯』という成り立ちから、党内の意見の一本化がつねに大きな課題となる」でした。マスコミの人たちは「民主党はバラバラだ」とよく言うのですが、その見方が如実に表れている書き出しです。

有権者の皆さんの中にも民主党はバラバラだと思っている人は少なくないでしょう。確かにバラバラなのです。しかし、それは一つの主義主張に固まったいくつかのグループが党内に存在するということではなくて、それぞれの考え方を持った議員個々人が党を構成しているということなのです。

単純に色分けできなくなった議員の考え方

一昔前だと国会議員というのは右派か左派か、護憲派か憲法改正派かといった2項対立的な色分けも可能でしたが、今では、一部のイデオロギー色の強い政党を除いて所属議員の考え方を2項対立的に色分けすることはどの政党でも難くなっています。日本の政党の中で議員の考え方が最も多様化している政党が民主党にほかなりません。

民主党では、法案によって議員一人ひとりの対応は違います。民主党では議員同士の議論を通じてボトムアップで政策を決定します。くだんの「両院議員懇談会」という記事にも「党内をまとめるうえで一定の役割を果たしているのが、党規約にない非公式な両院議員懇談会だ」と書かれています。まさにそうした場で全員が参加して自由に議論を積み重ねていくわけです。したがって、民主党の場合、議員全員が意思決定に参加しているという意識も非常に強くなります。

民主党独自のボトムアップ意思決定システム

このような民主党の意思決定システムについては言葉だけではなかなか理解していただけないかもしれません。多くの人たちには、政党のイメージとしては自民党や社会党、共産党などの伝統的な政党のほうが馴染み深いはずです。逆に、伝統的な政党のイメージには馴染まないからこそ、民主党は極めて近代的な政党だと言えます。バラバラの個人をどのようにして束ねるかについてつねに叡知を絞っており、時には叡知を絞り切れずに新聞やテレビ報道でバラバラだと決めつけられてしまう場合もあるのですが、いずれにしてもそういう営みの中で民主党は党として少しずつ成熟していっているのではないかと、私は考えています。

民主党は新しいタイプの政党なので、バラバラだということもメリットとして捉えられるのですが、古いタイプの政治記者は、バラバラは良くないことだという固定観念をなかなか捨て切れないようです。しかも、面白い政治報道というのは、政策の話ではなくてやはり人事等の話です。一般の会社でも、アフターファイブで会社の経営戦略を話題にする人は少ないでしょう。その代りに、どこの上司がどこに異動したとか、今度こういう上司の下で働くといった人事の話で大いに盛り上がります。同様に、政治報道においても、どうしても人事や議員同士の対立、人物評価の話が多くなっていくのです。政治学者の目で見れば、民主党は日本の政治史でこれまでになかったリーダーシップの取り方が形成されている過程でと言えるでしょう。そして、これからも私は政治を身近に取り戻すために活動してまいります。