【国会レポート】3年間で民主党の文化をつくるべし【2004年7号】

私の地元でも去年から今年にかけて多くの選挙がありました。去年は統一地方選挙、埼玉県知事選挙、参議院補欠選挙、衆議院総選挙、桶川市議会選挙、上尾市議会選挙があり、今年は上尾市長選挙、伊奈町長選挙、吹上町長選挙、吹上町議会選挙参議院選挙がありました。

この間、私も選挙に明け暮れたという感じです。しかし、この7月の参議院議員選挙を最後にこれから向こう3年間は、衆議院が解散されない限り、国政選挙はありません。向こう3年間、今の議席数が固定したままになるということです。

政権政党に必要なのは「安定感」だ

私たち民主党は皆さんのお陰で今回の参院選において50議席を獲得しました。民主党は議席を最も多く取った政党です。今、与党側は一党単独では参議院の過半数を取れないので過半数を維持するために連立を組んでいます。また3年後に参院選がありますが、そのときに各党が今回と同じくらいの議席数を得るとすれば、参議院では与野党逆転になってしまうのです。となると、与党の政権運営は非常に難しくなりますし、その次の衆院選で与野党が逆転する可能性もかなり高くなるでしょう。

つまり、今回の参議院の結果は民主党にとって政権が近づいてきたということを表しているのです。

そこで、民主党としては、政権に就く政党として自らの言動により重い責任が伴うのだということを自覚するとともに、有権者に政権党として認めてもらえるような党の姿勢を示していく必要があります。では、その党の姿勢とは何か。言葉で表すとすれば、それは「安定感」だと私は思っています。

できるだけ多方面の意見を聞くことが先決

私は今、民主党中小企業局のメンバーになっていて、時間があれば都内の業界団体を訪問しています。私たちとしては別に民主党への支持をお願いに行っているわけではありません。民主党として「ぜび、皆さんのご意見を聞かせてください」というアプローチで業界団体の人たちと会っているのです。

私自身もこれまで、サラリーマンの方、主婦の方、リタイアした方、経営者の方、労働組合の方、業界団体の方など多くの方とお会いしていろいろなご意見を聞かせていただきました。それが現在の政治活動に非常に生きていますし、政治家としての成長を促したと考えています。

同じように、政党として皆さんのご意見を吸い上げられる仕組みを持っていることが政党としての安定感につながってくると思うのです。

民主党は私も含めて政権与党にいた経験のある人が少ない政党です。もちろん政権を担っていける優秀な同僚議員は多いのですが、与党経験がない野党なので、皆さんから見てまだ政党として安定感がないのだという気がします。

政権に就くと野党のときとは違って、複雑多岐にわたる利害関係の下で約80兆円の国家予算の配分について調整する機能が必要になってきます。つまり、民主党内でも、各議員が自分の利害を抑えながら党内で合意形成が図れるような仕組みが不可欠になってくると思うのです。ただ、これまで何度も述べてきたように、党内の合意形成には莫大なエネルギーと時間がかかっても、それを通して党内がしだいにまとまっていくという点が民主党の持ち味なので、政権を取ってもそれを続けられれば問題はないでしょう。

政権党・民主党とっての二つの課題

しかし今の民主党について心配な点が二つあります。一つは、党の執行部が勝手に判断して暴走する場合があるということです。最近のその端的な例が年金問題について与党と合意した「三党合意」でした。これについては合意の前に党内で議論を行うものだと思って、多くの民主党議員は安心していたのですが、突然、執行部が合意してしまい、民主党内も混乱に至ってしまったのです。そこでたとえば、三党合意の前に民主党にはNC(Next Cabinet=次の内閣)があるわけですから、少なくともNCで合意の可否について議論すべきでした。そのような手順をしっかり踏まないと、やはり国民から見て安定感が生まれないのではないでしょうか。

また三党合意は相手の土俵に乗ってしまったとも言えます。万年野党ならいいですが、政権を目指すとなると自分の土俵で勝負しなければなりません。言葉を換えれば、自分たちのことはすべて自分たちの意思で決めるということです。

以上とも関連するのですが、もう一つは、党が大きくなってきて合意形成のプロセスを省きがちになるのではないかということです。

従来だと中規模の政党としてそれなりの国会議員数でしたから党内の合意形成がやりやすかったのですが、昨年の衆議院選挙と今回の参議院選挙を経て民主党の国会議員数は70人近くも増えたのでした。大政党に近づいてきたと言えるでしょう。となると、まかり間違えば、派閥ができてボス同士が決めれば済むということになりかねません。意思決定はそのほうが早いでしょうが、民主党らしさがなくなります。

「オーナー」と「外資」との合意形成を

自民党の強みは曲がりなりにも政治の意思決定において自民党独自の党文化を持っていることでしょう。だから、民主党もいくら大きくなっても話し合いによる合意形成を志向する政党であるという党文化をさらに育んでいくべきなのです。そして、合意形成を意識してやっていれば大政党になっても、それができるようになっていくと思います。

民主党の歴史を振り返れば、最初に核をつくった人たちはいわば民主党の「オーナー」です。だから、この党は自分のものだというような、オーナー経営者的な感覚をときどき持ってしまうことがあります。その後入ってきた二期生、一期生はいわば「外資」なのです。最初に核をつくってくれた人たちに対する尊敬の心は持ちつつも、「外資」が「オーナー」と遠慮せずに議論できる関係を維持していかなければなりません。

いずれにしても、ここ3年間は党内的には党文化をつくり上げる時期だと思います。