【国会レポート】年金問題については与野党を越えた議論が必要だ【2005年2号】

2005年1月21日、第162回通常国会大が召集されました。会期は6月19日までの150日間です。通常国会が開かれると、まず本会議場で首相の所信表明演説と各政党による代表質問が行われ、その後に予算委員会が開かれます。

私は2月18日に初めて予算委員会で約1時間の質問に立ちました。民主党から厚生労働副大臣として質問をするようにと指名されたからです。

花形の予算委員会で初めて質問に立つ

質問の内容にふれる前に予算委員会について少し説明しておきましょう。予算委員会では、質問者は国の予算関係だけでなく、あらゆる問題を取り上げることができます。首相が出席するのは予算委員会だけです。通常の委員会では所管の大臣しか出席しないのですが、予算委員会だけはすべての大臣に質問することが可能です。そういう意味で、予算委員会は政府の姿勢を最も追及しやすい場でもあります。予算委員会に各大臣が出席するため、その間、通常の委員会は開かれません。

また、ときどきNHKの国会テレビ中継も入ります。委員も与党側だと大臣経験者が多くを連ね、野党側でも中堅クラスのベテラン議員が大半です。

私が予算委員会で質問に立つということが決まった後、民主党の同僚議員たちから「各議員はもちろん各党の国会対策委員や官僚も強い関心を持っている」「政治家としての力量がはっきりと表れる」などと脅かされ、民主党の岡田克也代表からも「注目しているからな」と釘を刺されました。

そこで、私も従来以上に質問の準備に力を注ぎ、厚生年金、共済年金、国民年金の一元化、すなわち「年金一元化」を中心テーマに据えることにしました。ただし細かい質疑は予算委員会後の厚生労働委員会で行われるだろうから、今回の私の質問では、年金一元化についての政府の基本的な考え方を問うことに主眼を置いたのです。

社会保険制度を選挙の争点にしてはいけない

この問題での私の基本的な姿勢は、一つは、選挙のために社会保険の議論を争点にすべきではないということです。昔は経済成長率が年10%を越えていたので道路整備や賃上げなどで国民の要求を政治も受け入れやすかったのですが、現代は不況と国家財政の逼迫によって国民に我慢を強いなければならない局面も増えてきています。そこで、年金や介護保険、健康保険の問題は与野党が一緒になって議論を積み上げていかないと答えが出ない時代になっていると思うのです。

社会保障の議論を選挙の争点にしたために失敗したのがドイツでした。1998年、シュレーダ一政権が発足した直後、前政権の年金改革を白紙撤回したものの、2004年になって撤回前の年金改革を実施し、シュレーダー首相は「白紙撤回は誤りだった」と言わざるを得ませんでした。年金制度は与野党がしっかりとした議論をしないと、結局、国民が迷惑を被ってしまうのです。

もう一つは、政治家自身がしっかりした議論をして解決すべきだということです。通常、政府提出の法案では、審議会にその分野の専門家、学者、経済界の代表、労働組合の代表などを集めて議論してもらい、それがそのまま骨格になります。しかし、社会保障については、政治家同士が与野党を超えて本音で議論し尽くし成案を得るべきです。なぜなら、政治家は日常的にいろいろなお宅を訪問しています。重度の寝たきり老人の面倒を早期退職した老夫婦が見ているケースもあるのですが、様々な社会の実態を肌で感じ知っているのは政治家だけなのです。

各大臣から引き出した前向きの答弁

実際の予算委員会での各大臣に対する質問のうち主なものを端的に取り上げると以下の通りです。

<尾辻秀久厚生労働大臣への質問>

大島 私たち政治家は年金について与野党を越えてしっかりと議論すべきで、そのためには厚生労働省の年金数理局が持っているさまざまな年金の基礎データをオープンにしたうえで、それを国会議員や学者も共有して国民的な議論を展開することが必要ではないか。

尾辻 その通りだと思う。議論をする数字をブラックボックスの中に入れておくのはよろしくないと考えている。

大島 国民年金も含めた年金一元化を進めていくつもりかどうか。

尾辻 これは、私どもも繰り返し申し上げておりますように、最終的には年金全部の一元化だ、こういうふうに思っております。

<中山成彬文部科学大臣への質問>

大島 学校を卒業してそのままサラリーマンになれば厚生年金を納めるが、今はフリーターや派遣労働者、アルバイトの人が増えてきて社会保険制度についてよく知らない。そこで、中学3年生や高校3年生を対象に「社会保険を納めるのは義務だ」としっかり教える必要があるのではないか。また、私の地元では中学校で社会保険労務士が年金について教えるという取り組みも始めている。

中山 児童生徒が年金などの社会保険制度の意義や仕組みを理解して福祉のあり方を在学中から考えるというのは非常に重要だろう。(社会保険労務士などのように)外部の人に話をさせたり、生徒が自ら調査するといった体験的なことも大事だろう。

年金一元化におっかなびっくりの政府・与党

消費税や年金一元化について前向きな答弁を引き出した私の質問は翌2月19日付の毎日新聞でも取り上げられました。年金一元化については政府、与党としてもまだおっかなびっくりだというのが質問を終えた私の印象です。

政府、与党として統一した見解はまだできていません。したがって、年金一元化には、皆さんにお約束した通り、これからも粘り強く取り組んでいきます。