【国会レポート】女児殺人事件が続発する中地域の安全をどう守るのか【2005年12号】

ここのところ小学生女児が殺されるという本当に悲惨な事件が続発しています。昨年11月に奈良市で小学1年生女児の誘拐殺人事件がありましたが、1年後に広島市で同じく小学1年女児の殺人事件が起きました。その直後、栃木県今市市でもやはり小学1年生の女児が殺害され、さらに京都府宇治市の学習塾で講師による小学6年生女児の刺殺事件が発生したのです。事件に巻き込まれて被害者となったお子さんのご両親の悲しみと怒りは如何ばかりか。そして、日本の社会にとっても非常に甚大な打撃です。

国会閉会中でも内閣委員会を開く

私は衆議院内閣委員会で民主党の筆頭理事をしています。筆頭理事は内閣委員会での自党の活動を取り仕切る運営責任者ということです。内閣委員会の扱うフィールドは非常に幅広く、経済財政、規制改革、少子化問題、IT戦略などのほか、治安も扱っています。国家公安委員会を所管していますので、今回の女児の事件を受けて、この問題を国会でもしっかりと集中的に議論すべきだと考え、民主党の筆頭理事として与党の筆頭理事と協議しました。年明け早々には、国会は閉会中ですが、内閣委員会を開いてこの問題について審議する予定です。

まず女児の誘拐事件の場合、性犯罪がからんでいることが多いのですが、性犯罪者の再犯率は他の犯罪に比べて高いという傾向があります。「性衝動は止められないから子供の側には行かせないでくれ」というのが、どうも再犯する性犯罪者側の心理の一つでもあるようです。そのため、性犯罪者はどこかに閉じこめておくべきだとか、米国のように社会の中でもずっと監視するような体制にすべきだという議論も出ています。

とはいえ、一方では、「性犯罪者といえども、どこかに一生閉じこめておいたり、人権問題もあって四六時中監視しておくことはできないから、やはり性犯罪を再び起こさないようにきちんと再教育するプログラムをつくって、刑務所の中にいるときなどにしっかりとそれを施すべきだ」という意見があります。

以上の点を踏まえて、国会としても、性犯罪が起きないようにするにはどうするか、また再犯を防ぐにはどうすべきかについて実効のある議論をしていかなければならないと思います。

対人関係が稚拙になっている若者たち

加えて、性犯罪者も含めて執行猶予中に保護観察処分になることがあり、その場合、保護司の方々が彼らの面倒をみるのですが、この仕事は精神的肉体的に非常に大変な割にはほとんど無給で、保護司の方々に過大な負担をおかけしているというのが現状です。この点についても改善していく必要があります。

一方、宇治市の学習塾での事件では犯人の大学生の被害妄想的な動機が明らかになっていますが、ちょっと前に起こった事件で東京・町田市で女子高校生を刺殺した男子高校生の場合と同様、犯人の若者には対人関係の稚拙さがあります。まったく自分中心の論理で相手を傷つけてしまっているのです。言い換えれば、自分の置かれている立場や状況をきちんと正しく把握できないということにほかなりません。防犯だけでなく教育の面からもこの問題を深刻に受け止めたいと考えています。

地域社会の防犯の力を高めていく

ところで、私の地元でも今年、ある法案の賛否をめぐって「その法案を可決したら学童を殺すぞ」という脅迫状が選挙区内の小学校に送られてきた事件がありました。そこで私も政治家として、小学校の校長先生と話をし、警察庁にも対策を求めました。学校としてはPTAの防犯チームをつくり、同時に地元の自主防犯ボランティアの方たちとも一緒になって児童・生徒の安全を守る取り組みに力を入れるということです。心より感謝申し上げます。

警察庁も埼玉県警とともに今回の事件に対して警戒の強化をしてくれるということになりました。実は埼玉県は全国でも警官の数が少なく、私の選挙区はさらに手薄になっています。

現状では警官が少ない以上、地域の防犯を考えるとやはり自主防犯活動を充実させ、地域のカを上げることが求められてもいます。(埼玉県から警察官の増員について陳情を受け、国に要請しています。予算の内示では、来年度は、全国で3500人増員される中で330人が埼玉県に割り当てられることになりました。)

すでに他地域では老人クラブの中には児童の登下校に付き添うといった活動をしているところもあります。そのように地域社会の協力体制を再構築するほかに、もう一つは、これから団塊の世代の警官の退職が増えていきますので、その人たちの再雇用も考えられると思います。いずれにせよ、来年の自分の大きな課題として、警官の再雇用なども含めて治安の問題に積極的に取り組んでいきます。

首相のキャラクターが社会に投影する

私のサラリーマンの経験からすると、社員というのは社長の後ろ姿をみて自分の行動パターンを決めていくという傾向があります。国の場合も同様です。国の指導者である首相の言動が国民に影響していくと思います。

たとえば、周知のように今回の総選挙で小泉首相は自分に反対する自党内の候補者の選挙区に対立候補を出すといった冷酷な対応をしました。それをマスコミは「刺客」と呼んでセンセーショナルに報道しましたが、刺客という後ろめたい言葉をもてはやすような風潮自体に寒々しいものを感じます。

やはりそこでは、思いやりや相手を思う気持ちが感じられないのが残念です。現在の首相になって早や5年。そういう意味では、社会の中には彼のキャラクターがもうかなり投影されているのではないでしょうか。

アメリカの大統領選挙ではそれぞれの候補者の家族が前面に出て選挙戦が行われます。家族というものを大切にする人が大統領であってほしいとアメリカ国民は願っているのでしょう。私はこれから、思いやりと品のある社会をつくっていきたいと思いを新たにしています。