【国会レポート】リタイアした企業OBの活躍で地域が元気になる【2006年2号】

景気が回復基調にあるとはいえ、地域が元気にならないと日本全体の本格的な景気回復もあり得ません。そこで今回は地域の活性化について考えてみたいと思います。

先日、地元の商工会議所で組織する企業OBの総会にオブザーバーとして参加しました。その組織は会社実務や生産技術に長けた企業OBの集まりです。今、選挙区とその周辺に在住している60歳以上の方約120人が会員で、地元の多くの中小企業に出向いて仕事のコンサルティングを行っています。

大企業での経験を中小企業に伝える

総会ではその事例発表がありました。たとえば、大手メーカーの元工場長だったAさんの事例。Aさんは最初、地元メーカーの工場を半日点検しただけで30~40の改善項目を見つけました。以後、週3日ペースでその工場にコンサルティングを行うことで、たとえば3S運動(整理・整頓・清潔)などを導入したりして、スムーズに工場が動くようになり、不良率も激減したのでした。

ISO(国際標準規格)取得の事例もあります。従業員約30人のメーカーに対し系列の親会社からISOを取得するようにとの指示があったのですが、その規模のメーカーではISO取得のための膨大な文書を処理しきれません。自動車会社の元管理職だったBさんがそのメーカーに入って指導した結果、容易にISOが取得できました。

最近、2007年問題ということがしきりに言われています。2007年から団塊の世代が大量に定年を迎えるということですが、私の地元でも2007年から数年の間にリタイアする人が1万人以上いるとみられています。

人間は他人に教えたい、人から評価されたいといった願望がありますし、また企業の中で切磋琢磨して蓄えた知識と経験を活かさないことは「もったいない」と思います。実際、会員によるコンサルティングは普通のアルバイト代程度ですから、会員自身もやり甲斐のために仕事をしていると言えます。

いずれにせよ、このような活動が各地域に根付いていけば地域活性化につながるでしょう。

壊れた系列関係のマイナス面を補う活動も

ところで、以前、日本の企業は強力な系列体制を組んで親会社から子会社の中小企業、零細企業へと技術も移転していました。しかし、ルノー出身のカルロス・ゴーン氏は従来の商慣習とか系列関係にこだわらず、系列外の企業と取り引きするようにしました。このことに象徴されるように、今では日本の企業の系列体制がなくなってきて、コストに重心を置いた結び付きに変わってきたと言われています。

となると、中小企業、零細企業への技術移転をどうするかという問題が出てきます。たとえば、企業の技術者としてしっかりとした技術を持っている人がリタイア後に、その技術を地域の中小企業、零細企業へと伝えていくことが考えられます。それを地域で組織的にやっていけば、系列関係に頼らなくても地域の中小企業零細企業に物づくりのノウハウが集積できます。

圏央道を活用した企業と大学の連携も可能

このほか地域の特性から考える地域活性化があります。その一つが、首都の中心部から半径40~60キロの位置を通り、私の地元も横切る圏央道(首都圏中央連絡自動車道)の活用です。圏央道が開通すれば、厚木、八王子、川越、つくば研究学園都市)が結ばれ、埼玉県では関越自動車道や東北自動車道ともつながることになります。政府は、平成21年には圏央道が八王子から荒川を越えて桶川まで開通すると発表しています。

ここ数年、八王子を中心とする多摩地域では多くの大学や研究所と地域企業との連携構築の取り組みが行われており、それは埼玉県の西部地域を含めた広域的なネットワークになりつつあります。したがって、圏央道が開通すれば、私たちの地域も多摩や埼玉西部の産業クラスタ(産業集積)に含まれていきますし、地元の企業でも最先端の技術を身近に利用することができます。そうすることによって、やはり系列に頼

らなくても物づくりのノウハウの集積を図ることで地域の優位性を保つことが国際競争力の強化につながっていくと考え、私も基盤整備とネットワーク作りに取り組んでいます。

地震に強いという地域特性をアピールする

もう一つは地震に強い地盤を生かした各種の首都機能のバックアップです。かつては首都を那須などに一挙に移転するという話もありましたが、今は各種の首都機能をバックアップするという考え方が主流になっています。文部科学省地震調査研究推進本部の長期評価によればマグニチュード7規模の直下型地震の発生確率は30年以内に70%(50年以内では90%)となっていて、首都圏では直下型地震の危険性が強く指摘されています。そのため、東京近郊の立川市に国は防災機能の拠点を置いています。私は、地盤が安定している我が地域も有力なバックアップ候補地になると考えています。(全国を1km四方に区切って今後30年以内の地震の可能性についてはhttp://www.j-shis.bosai.go.jp/で見ることができます。家屋建築や企業立地選定の参考になります。)

というのも、我が地域は大宮台地という高台にあり、まず治水の点で有利です。地震の原因になる活断層も走っていない可能性が高いので、他地域と比べ安定した地域ということもアピールできます。たとえば、首都が大地震になって機能が止まったときを想定し、バックアップとしての本社機能、生産機能、倉庫機能を誘致することが考えられるでしょう。その場合、停電に備えて発電のバックアップを持つ必要もあるかもしれません。

あのアメリカでの911同時多発テロの後、世界貿易センタービルに入っていた企業のうち他の地域にデータをバックアップしていた企業はすぐに業務を開始できたのですが、そうでない企業は失われたデータの復旧に非常に時間がかかり、業務開始がかなり遅れたそうです。コンピュータ時代であればこそ、バックアップは何より重要だと言えるでしょう。

以上の観点から、私たちの地域の可能性を活かす施策や規制のあり方について検討を始めました。