【国会レポート】一次情報と人生経験による直感が国会での疑惑追及の大前提だ【2006年3号】
私は、国民の権利と利益を守ることを第一にこれまで皆さまから付託されました使命を議会人として果たしてまいりました。
また、国会において自分の言葉にすべて責任を取るということを肝に銘じて質問者席に立っています。
そして、私は国会議員が疑惑追及の質問をする場合、「一次情報に基づくこと」と「人生経験による直感を働かせること」の二つが大前提になると考えています。
二次情報は必ずウラを取らなくてはいけない
まず「一次情報に基づくこと」ですが、一次情報とは何かと言えば、自分で見る・聞く・触れるなど実際に現場で体験して得た情報であり、資料類についても現物を手に入れてそこから直接得た情報のことです。二次情報は、他人からの伝聞情報あるいは新聞・テレビ・ラジオ・インターネットなどのメディアから得た情報を指します。
したがって、一次情報と二次情報ではその情報の確かさにおいて大きな差があるわけです。いくら有力な情報だとしても二次情報であれば必ずそれを裏付ける一次情報に当たる努力をしなければなりません。これが「ウラを取る」ということです。その努力をしないで、二次情報だけで動いてしまったら、後で大変なしっぺ返しを受けるでしょう。
とりわけ権力の場に近い政治家が不確かな情報で動くとその悪影響は計りしれません。国会ではもちろんのこと、テレビや新聞などのメディアに対しても一次情報に基づかないような発言はすべきではないのです。この「国会レポート」も私個人の体験や私が当事者から直接聞いた話を皆さんにお伝えするメディアだと位置付けています。つまり、私の得た一次情報に基づいて書くのが基本方針で、独自の情報や論点があると自負しています。
国会質問には多大な時間と労力がかかる
最近の私は疑惑追及よりも疑惑の起きないシステムづくりに注力しているのですが、5年前、KSD(ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団)事件の疑惑を追及したことがあります。この事件が起きたとき、まず東京・墨田区のKSD本部ビルに自ら足を運びました。本部ビルの内部を調べて資料類を入手するとともに、周辺のビルにたくさん入っているファミリー会社の名前をメモして帰り、スタッフにそれらの会社の登記簿謄本を取ってきてもらって、KSDとの資本関係を調べ上げたのでした。
さらに先輩の衆議院議員だった上田清司氏(現埼玉県知事)と一緒に冬の寒い中、長野県の塩尻(KSD関連でインドネシア人たちが安い賃金で働いている場所があった)や軽井沢(KSDの保養所があった)に私費でタクシーを飛ばして取材に行きました。やはり現場に行けば質の高い情報が得られます。
一次情報を得るためにそのような労力と時間を費やした後、KSD事件についての国会質問に臨んだのですが、やはり一次情報に基づいたお陰で確信を持った質問ができますし、質問を受ける政府の側もきちんと答えなければいけないという姿勢になります。その結果、事件の全容がしだいに明らかになっていったのです。逆に言えば、国会質問で一次情報に基づかない疑惑追及というのは手抜きにほかなりません。
秀才の頭脳より修羅場をくぐった経験が大事
次に「人生経験による直感を働かせること」ですが、自営業やサラリーマンの営業の仕事で最も大事なのは与信管理だと思います。つまり、相手の会社についてきちんと代金が回収できるかどうかを確かめたうえで取り引きするということですが、そのためには、あらかじめデータ会社が出している企業情報を調べ、実際に相手の会社に行って、社長や従業員の言動、物腰などをチェックしなければなりません。
それでも、ときには相手の会社が倒産したりして煮え湯を飲まされるような経験をすることがあります。しかし、不本意ながらもそういう経験を積み重ねていくと、相手を見抜く直感が養われていくのです。
私は保険の営業に携わっているとき、理屈ではなくて初めて会った人でもその場で信用できる人かどうかがすぐに見抜ける多くの経営者の方と付き合ってきました。すなわち、それが人生経験による直感なのですが、政治家がそういう直感を持っていれば、政治の仕事でも大いに役に立つと思います。
本来、政治というのは人間の生々しい部分と接する仕事なのですから、学校での秀才的な知識よりもむしろ人生の修羅場をくぐって育まれた直感のほうが必要だと思います。それが欠けていると、どんな秀才でも詐欺師のような人に簡単に騙されてしまうのです。
すべて自分で責任を負うのが国会議員
国会の疑惑追及は議員個人の力量に任されています。「このような質問をせよ」と政党の幹部が議員個人に指示することは基本的にはありません。確かにプロジェクトチームをつくって疑惑追及の資料を集めたりすることもありますが、そういう資料に基づいてどのような質問をするのかはやはり議員個人に委ねられています。したがって、ある議員がどのような質問をするかについて事前に他の議員にその詳細を知らせることはありません。それは各議員が党に所属しているとともに選挙区を代表し独立しているからです。
しかも、国民の権利を守るという仕事をしている国会議員は国会で自由に発言することが許されており、国会での発言が罪に問われることはありません。逆に言えば、それだけ国会議員の発言権は重いのです。したがって、質問した内容についての責任は議員個人が全面的に負わなければなりません。国会議員はそういう自覚を持ち、前述した二つの大前提に依拠してしっかりした質問をするべきなのです。
また、国会議員は国の方針を決めるという仕事をしているのですから、自分の出処進退が問われたときには自分自身で決断しなければなりません。自分の出処進退を人に預けるなどというのは自分の仕事を自覚していないだけでなく職場放棄にも等しいと考えて、これからも私は国会に臨んでいきます。