【国会レポート】行政改革とは国による生産性向上運動だ【2006年4号】
現在、国と地方とを合わせて1000兆円近い累積債務があり、そのため増税論議も出てきている中で、今国会においては行政改革が大きな焦点になっています。
行革は政府による生産性向上運動のようなものですから、継続的に絶えず実施していかなければなりません。今回の行革もやはりその一つだととらえるべきです。
行革については、私自身、昨年11月からほぼ毎日、国会に通い詰め、民主党の公務員制度調査会の事務局長として公務員制度でのさまざまな政策立案および政策調整を行ってきました。さらに今年3月16日から衆議院に設置された行政改革特別委員会では理事に就任し、そこでも連日の審議に深く関わってきました。
与党に法案の修正をのませたのは一定の成果
行革特別委員会は委員40人という大委員会ですが、この理事会は民主党(私も含めて)2人、自民党5人、公明党1人の合計8人の理事によって構成されていて、委員会での審議をどのように進めていくかを協議するのがその役割です。私は内閣委員会でも理事になっています。同時期に二つの委員会の理事を兼任するというのは党を問わず異例のことで、そういう意味では非常に貴重な体験を積ませてもらっていると言えるでしょう。
行革特別委員会では、行革推進法案、公益法人制度改革法案、市場化テスト法案(公共サービス改革法案)を審議し、野党である民主党としては、行革推進法案には対案を出して反対し、後の二つの法案には一部修正かあるいは付帯決議を付けて賛成しました。与党は通常、野党による修正には応じないのですが、今回、民主党の理事として市場化テスト法案の修正を求め、その内容で与野党間において合意できたことで公共サービスを享受する国民の立場に立った法律となりました。理事である私としては一定の成果を上げたと考えています。
国会議員の合意形成作業から学んだこと
ところで、民主党の理事は与党の自民党や公明党と法案を協議する前に民主党内で法案についての合意形成を行わなくてはなりません。私は会社員時代、30代のときに企画調整畑にいて部内の多くの人たちに会って意見を取りまとめるという作業をしていたのですが、党内の国会議員相手に合意形成を図るというのも実際にやってみると基本的には会社と同じだと思います。
ただし国会議員はより個性的ですし政策に対する信念も強いので、合意形成も一筋縄ではいきません。しかし、議員会館を回って各国会議員に会うというのは非常に有意義なことでした。というのも、まず一つには各国会議員の私に対する接し方から多くのことが学べたからです。先輩議員はおおむね「よく来たな」と歓迎してくれました。興味深いのは後輩議員の反応です。歓迎してくれる人、ゆったりと構えて受け容れる人、怪訝な顔をする人、私に何か下心があるのではないかと勘ぐるような人・・・・・・竹下登元首相は「国会議員は若いときには靴の底がすり減るまで国会の中を歩け」と言っていたそうですが、今回、その意味が少しは分かったような気がします。少なくとも、国会議員それぞれの人柄だけではなく力量も推し量れると思いました。
何事にも理想と現実はあります。政治家の場合は、理想に現実を引き寄せなくてはなりませんので、そこで求められるのが「説得の技術」です。そこで、もう一つ有意義だったことが、多士済々の国会議員を相手にこの説得の技術を磨くという営みをした点でした。
手を変え品を変えて政府組織を刺激する
再び行革問題に戻ると、最初に述べたように国の行革というのは企業のそれと同じく生産性向上運動とだと思います。
私が鉄鋼会社に入社して最初に製鉄所勤務になったとき、まずJK(自主管理)活動がありました。現場の人たちが業務改善のための提案発表をするという運動です。数年経つと、今度はTPM(トータル・プロダクト・メンテナンス)運動が始まりました。なぜそのように変えていくのかと言えば、同じ手法を使っていると、現場が慣れてきて飽きてしまうからです。
行革もそれとまったく同じで、手を変え品を変えて政府組織に刺激を与えるものなのです。戦後、日本でも折りに触れて何度も国の行革が行われてきました。中でも有名だったのが私が学生のころの第二臨調(メザシがおかずというつましい食事で有名だった土光敏夫氏が会長)で「増税なき財政再建」という旗印を掲げていました。
行革の大きな柱は常に公務員制度改革ですが、国家公務員法は本来、きわめて革新的な法律で、「国家公務員は職務内容を個々に細かく記載し、それに応じて報酬を付け、ポストが空いた場合には下からの昇進ではなくまず新しく公募して採用せよ」と書いてあります。
アメリカの科学的人事管理をそのまま昭和22年に法文化したのが国家公務員法なのですが、以後、さまざまな法規が付いて、今や公募が優先されることなどはほとんどの人が知らないようになっています。
たとえば後に付け加えられたものを取り払うだけでも非常に大きな公務員制度改革になるでしょう。20代、30代の優秀な官僚たちと話していると、国家公務員法が施行されて60年経って、ようやく社会は、国家公務員法が本来求めていたものを受け入れられるようになってきたのかもしれません。今後も、政治が何度も行革を繰り返しながら粘り強く取り組んでいかなければなりません。
新しい工場に変えて飛躍的な生産性向上を
いずれにせよ、今の政府のやっている行革は古い工場のままでの生産性向上運動なので、生産性が大きく向上することはありません。今回、民主党が主張しているのは地方分権を徹底することによって古い工場をいったん潰し、新しい工場に新しい設備と新しいマネジメントを導入して政府を運営していこうということです。
そのことで生産性は飛躍的に上がっていくに違いありません。それを可能にするのが、まさしく小沢一郎党首が主張している政権交代なのだと思います。