【国会レポート】修正を加えることで全会派一致で法案を可決【2006年5号】

今国会の衆議院内閣委員会で、消費者の権利を定める「消費者契約法」改正と探偵業を規定する「探偵業法」立法について審議しました。私は内閣委員会の民主党筆頭理事の立場で国民の利益を守る観点から両法案に修正を加えたのですが、その両法案がこのほど内閣委員会および衆議院本会議で可決されました。この後、参議院でも可決され法律として成立する見通しとなっています。

政府提出法案と議員提出法案の違い

両法案とも一般の市民生活にきわめて身近なものですから、施行後は法律の効果がすぐに目に見えて出てくるはずです。

両法案の具体的な内容をご説明する前に、国会で法律がどのようなプロセスを通じて成立するかを改めて確認しておきましょう。

まず法案には「政府提出議案」と「議員提出議案」(議員立法)があります。政府提出議案は通常、与党内で審議されて法案がつくられ、それは内閣で決議して衆議院に提出されます。衆議院ではその法案に関係のある委員会(今回の消費者契約法なら内閣委員会)で審議されて可決され、さらに衆議院本会議で可決されると、今度は参議院に送られます。

参議院で同様に委員会と本会議で可決されれば法律として成立するのです。

議員提出法案のほうは、議員が法案を作成して衆議院に提出するもので(野党の法案はこちらに含まれます)、その後の流れは政府提出法案とまったく同じになります。

ここで留意しておいていただきたいのは、最後は国会での採決になりますので、言うまでもなく、法律化に当たっては多数の議席を占める与党が圧倒的に有利です。したがって、普通ならば野党の出した法案がそのまま法律になることはけっしてありませんし、与党が提出した法案に対して野党が修正を加えるということも滅多にありません。つまり、政権を取るというのは、法律化にあたっての主導権を手に入れるということでもあるのです。

望外の修正を認めさせた「消費者契約法」

まず消費者契約法の改正案ですが、たとえば、ある業者が東京で訪問販売し、羽毛の入っていない偽物の羽毛布団を本物だと偽って、老人や主婦に売りつけた場合、詐欺ですからもちろんこの売買契約は無効になります。

無効だからと業者に文句を言って、代金が返ってくれば問題ありませんが、偽物を売りつけるような悪徳業者が応じるはずはありません。そこで、裁判という手段が出てくるのですが、略式でも裁判を起こすには50万円くらいかかってしまいます。一般の個人にそんな金額を払えるはずがありません。

そこで、消費者契約法改正の第1のポイントは、国の認定を受けた消費者団体が詐欺にあった人たちを代表し、その業者に対して差し止めを訴えられるということです。こうすれば裁判の敷居が非常に低くなります。

第2のポイントは、業者が実際に売買契約を行った場所で消費者団体が裁判を起こせるということです。

この点については、最初に政府・与党が出してきた法案では、会社あるいは営業所の所在地でしか裁判を起こせませんでした。そのため、業者が不法な契約を行った後に営業所の所在地を変えてしまうと、訴える側は大変になります。つまり、東京で偽物の商品を売りまくった悪徳業者が、その直後に営業所を沖縄や北海道に移すと、訴える側はわざわざ沖縄や北海道まで行かなければなりません。面倒だし費用もかかるため泣き寝入りするというケースも出てくるはずです。

というわけで、やはり大変に不合理ですから、私たちは政府・与党に対して内閣委員会で修正を強く求めたのでした。結局、もっともな理屈だということで、政府・与党も「実際に売買契約を行った場所で裁判を起こせる」よう修正に応じることになったのです。

その結果、各消費者団体からも非常に高い評価をいただいたのですが、消費者団体としてはもともと、今回は第1のポイントが含まれた改正案が通るだけでも大きな前進だと考えていました。それが第2のポイントまで盛り込まれたので、望外の成果だとらえてくれたようです。第2のポイントについては「衆議院の画期的な判断」だという新聞記事も掲載されました。

これまで誰でも始めることができた探偵業

探偵業法については、これまで探偵を始めるのには何の条件もいりませんでした。誰でも探偵という看板を出せばすぐに探偵になれたのです。だから、トラブルも多発していました。たとえば、探偵会社に行ったら、そこが暴力団とつながっていて、逆に恐喝されたという例もあると聞いています。

そこで、この探偵業法をつくって、営業所の所在地のある都道府県の公安委員会に届け出を義務付けるようにしたのでした。これによって暴力団等の介入もある程度防ぐことができます。ただし探偵はいわば個人のプライバシーを詮索する商売です。本来はないほうがいいのですが、人間関係のトラブルが起こったとき、やはり探偵へのニーズがどうしても出てきます。一種の必要悪とも言えるでしょう。そういう意味では探偵業法は風営法などと同じ性格のものではないでしょうか。

この探偵業法は議員提出議案でした。与党が法案を作成し、それを私たちが全面的に修正を加え、内閣委員会委員長提案という形にして可決したのです。

メディアの人たちの取材活動は探偵業と似ている点も少なくありません。だから、修正の一例を挙げれば、メディアの人たちには探偵業としての届け出の必要がないようにしたことでした。

国民の利益の観点から求めるのが法案の修正

両法案とも内閣委員会、衆議院本会議でともに全会一致で可決されました。与党が修正に応じたものですから、それは当然なのですが、与党側に立ってみれば、せっかく与党内で合意し、内閣の決議まで取った法案を修正するというのは大変に手間がかかるのです。ということは、裏を返せば、有力な説得材料を揃えて修正を認めさせたのは私たちのきわめて大きな政治的成果だったと言えます。

野党は与党とケンカするためにあるのではありません。あくまでも国民の利益という観点から与党の法案のよい点は認めつつも悪い点があれば徹底的に修正を求めていくという立場であるべきだと思います。この姿勢は民主党が政権に就いたときのためにもプラスになるでしょうし、私も理事としてその点で今後とも大いに尽力していきたいと思います。