【国会レポート】「特定秘密保護法案」よりも成長戦略や経済対策が重要【2013年10号】
2013年10月から11月にかけて私は国家安全保障特別委員会で野党側の筆頭理事(責任者)を務め、党の対案を作成し、何を優先して議論するか、法案の修正協議など、政党間折衝で中心的な役割を担いました。与党側の筆頭理事は中谷衆議院議員(元防衛庁長官)です。
この特別委員会では「国家安全保障会議設置法案」と「特定秘密保護法案」の2つを扱いました。「国家安全保障会議設置法案」は、首相を議長とし、官房長官、外務大臣、防衛大臣をメンバーとする外交・安全保障政策の基本方針や中長期的な戦略を決める会議を設けるというもの。「特定秘密保護法案」は、日本の安全保障に関する情報のうち「特に秘匿することが必要であるもの」を「特定秘密」に指定し、それに接することのできる「特定秘密の取扱者」について適正評価や漏洩時の罰則などを定めたものです。
両法案は2013年10月15日~12月6日に開かれた臨時国会に提出され、「国家安全保障会議設置法案」(民主党は賛成)が11月27日に、「特定秘密保護法案」(民主党は反対し、対案を提出したものの否決)が12月6日にそれぞれ可決され法律として成立しました。
国民の知る権利と秘密保護法制のバランス
国会では、両法案とも委員会等で繰り返し質問に立ちました。特別委員会での質問はNHK国会中継で放送され、また、党の責任者としてNHKの日曜討論やBS日テレの報道番組(深層NEWS)にも出演しました。
両法案のうちマスコミが強く批判し、各方面でも多くの議論を呼んだのが特定秘密保護法案でした。民主主義では、国民が国のオーナーで行政が持っている情報は国民のものであり、国民があまねく国の情報を知ったうえで国の方向を決めるというのが原則です。しかし、国には公にできない外交や安全保障の情報があるのも確かですから、それを秘密に指定してしっかり守ることも国民の利益につながります。この相反する考えをどのようにバランスを取るかが秘密保護法制の難しさなのです。
今回の特定秘密保護法案の問題は、大臣や警察庁長官が何を秘密にするのかを決める点にあります。そうなると行政が勝手に都合の悪い情報を「特定秘密」に指定してしまい国民が知る事が妨げられる恐れがあります。
民主党政権時代も秘密保全の法整備が必要と考え、有識者会議を立ち上げて報告書も作成しました。したがって今回、私たちも「国民の知る権利」と「国の秘密保全」との間でどのようにして緊張感を持たせることができるかを検討し、民主党として対案を提出したのです。
この民主党の対案では、秘密の範囲を明確に限定し、行政から独立した委員会を設置し秘密の基準をつくるなど行政の恣意性を排除し、国会が必要な措置(秘密会)を講じた形で議長が必要と判断すれば行政機関の長に情報提供を命ずることができるようにしました(特別安全保障秘密適正管理法案、情報適正管理委員会設置法案、国会法改正案)。
臨時国会で急いで議論する法案ではない
ただし、もう1つ大きな問題があります。すなわち、外交・安全保障の秘密保全の法律が必要だとしても短い臨時国会のなかで十分に審議をしないまま数の力だけで可決・成立させてしまって良いのかということです。今回、同法案を成立させることが最優先され、来年4月の消費税アップを見据えた景気の問題などの議論はほとんどできませんでした。本来、臨時国会は通常国会での積み残し案件を審議するものなのです。
じっくりと国会審議を行うというのは政府にとっても大いにプラスになります。質問者側も真剣にその問題について考えて質問をつくりますので、政府もそれまで気が付かなかった論点を知ることができるからです。しかも国民の代表者たる国会議員が首相を含めた閣僚に質疑を行うことを通じて、国民の問題意識も政府に伝わっていきます。その結果、国民の目線からの多様な論点を政策に反映することができ、政府が実施する政策自体も安定してくるのです。
消費税アップを前提とした景気対策が重要
私も特定秘密保護法案などの審議のために朝から晩まで国会審議や調整業務を国会で連日行っていたため、議員会館の自分の事務所にも戻る時間さえありませんでした。私自身の政治家としての時間も能力もすべてそこに使わざるを得ませんでした。本来なら消費税増税を見据えた対策や原発事故の収束、食品虚偽表示など切迫した課題に全力を投入したかったのです。
私が10月に独自に地元の企業に対して行ったアンケート調査によると、地元企業の9割近くが景気が悪いと感じています。大手輸出企業では円安で業績が上向いておりますが、まだ地方の中小小規模企業が実感するには至っていません。来年4月に消費税が上がることを考えると、消費税価格転嫁問題や下請けへのしわ寄せ問題についても今のうちに国会として十分に議論しておくべきでした。特定秘密保護法案などのためにその時間が取れなかったのは残念でなりません。今後も経済政策については国会で積極的に取り組んでいきます。