【国会レポート】エネルギーと食料については海外依存度を下げていく【2007年9号】
党内人事が刷新され、私も党のネクスト・キャビネット経済産業副大臣になると共に衆議院では経済産業委員会の理事に就任しました。したがって、仕事の中心は、我が党の経済産業部門の政策を取りまとめ、どのような政策に重点を置き、どのような議題設定をするのか、ということになりました。私は衆議院議員になるまで鉄鋼会社と保険会社で19年間、サラリーマンとして実際の経済の現場で働いてきましたので、今回の経済産業部門の仕事については非常に大きなやり甲斐を感じています。
なお、ネクスト・キャビネットとは、イギリスのシャドウ・キャビネット(影の内閣)と同様に、政権交代が起きた場合に備えて野党である我が党が今から準備しておく内閣で、現内閣の閣僚と対応する大臣が置かれています。
供給に不安が出てきた石油エネルギー
これから経済産業部門についてはやはりエネルギー問題が、また他の分野では食料問題が将来の安全保障上の大きなテーマとなるでしょう。いずれも海外に依存し過ぎると、国家の自主性に影響が出てくる分野です。
まずエネルギー問題ですが、周知の通り、今、原油価格が高くなっています。原油はバーレルという単位で価格が示されますが(1バーレルは約159リットル)、過去1バーレル20ドル程度で推移し、1991年の湾岸戦争のときに一時的に40ドルになったものの、以後2000年までは20ドル前後で安定していました。
ところが、2000年からジリジリと上がり始め、2004年になって急上昇に転じ、現在は90ドル前後もの価格水準で高止まりしています。今や自動車用のガソリン価格も1リットル150円前後になってしまいました。
この原油価格の高騰は、国際的な投機筋の思惑によって引き起こされているという見方もあります。しかし、一時的ではなく長期的な原油高になっているため、やはり原油の需要と供給とのバランスが崩れてきた結果だという見解のほうが有力です。実際、たとえばイギリスとノルウェーの間にある北海油田は年々生産量が減ってきており、この大油田も近い将来の枯渇が懸念されているのです。といって、採掘しやすい大油田の発見は世界中で困難になってきています。一方、急成長を遂げている中国やインドでは石油需要が大幅に伸びています。
供給が減り需要が増えれば価格が上がるのは当然ですが、エネルギー資源の大半を海外に依存している我が国にとっては重大な問題で、供給に不安が出てきている以上、お金があればいくらでも石油が買えるという状況ではなくなるはずです。今から石油不足に備えたエネルギー政策を打っておかなければなりません。
そこで、原子力政策についても再検討すると共に、日本の科学技術を駆使した代替エネルギーの開発が求められます。太陽エネルギーや燃料電池の広汎な実用化のために国としてももっと予算を投入するべきです。たとえば国として「20年後にはすべての自動車を電気や燃料電池でモーター駆動させる」といった目標も掲げられるでしょう。
自分の住んでいる近郊での地産地消の推進
次に食料問題ですが、現在、先進国のほとんどが食料自給率80%以上という中で日本だけが39%というきわめて低い水準になっています。自給率が低いということはそれだけ食料を海外に頼っているわけですが、この自給率を上げていくにはどうすればいいのでしょうか。
私は地産地消の推進が一つのポイントになると思っています。つまり、まず自分の住んでいる近郊の地域内(県など)の自給率をこの地産地消によって上げていくということです。そのためには、学校や企業などが多くの近郊の農家と長期契約を結んで農産物を買い付けていくことを奨励する政策も必要でしょう。
農家の人たちにも生産意欲を持ってもらう必要があります。最近、農協の組合長から面白い話を聞かせてもらいました。この農協では地元に直売所を出していて、そこに農作物を納めると1週間後には現金決済でお金が入ってくるという仕組みになっています。組合長によれば、この頃では直売所に納めている農家の方々と一緒に旅行などに行ったとき、夕食後は宴会になるのではなく、指導的な農家を中心にどうすれば良い農作物ができるかという話で大いに盛り上がるそうです。皆さん、近郊の消費者に対し、より良い商品を生産して提供していきたいという意欲に溢れています。
地元では梨農家も多いのですが、その一部の農家が20年かけて新品種をつくり、先日、国に登録申請をしました。私も食べてみて、口り大きく実が引き締まり甘みがあって、十分に売れる品種だと思いました。いずれにせよ、元気な農家の育成が非常に大切なのです。
主食を確保できない状況を招いてはいけない
以上は野菜や果物の場合ですが、米については事情が異なります。米にはまだ輸入制限があるものの、消費者の米離れと当時に、中国など海外から輸入米が入ってくるようになったため、国産米をめぐる状況は非常に厳しくなっているのです。
報道によると、米処の新潟でも昨年60キロ1万5000円で農協が米を買い上げていたのに今年は1万円にまで下げるという提案をしているそうです。他の地域も同様に厳しく、私の地元でも1000円程度買付け価格が下がるやに聞いています。米の輸入自由化がもっと進めば、安い輸入米によって国内の米農家は壊滅的な打撃を受けるでしょう。それでも安い輸入米が食べられるのだから消費者にプラスだということでどんどん輸入米の比率を上げていくべきなのかというと、やはり食料安全保障という観点からそれを避けなければいけないと思います。
たとえば小麦の場合、昨年オーストラリアが未曾有の干魃に見舞われたこともあって、今年の小麦の国際価格は昨年の1.5倍以上にも跳ね上がってしまいました。日本は国内消費量の9割近くを輸入小麦でまかなっているわけですが、小麦価格の急騰のために国内では今、パンや麺類などの加工食品の値上げが相次いでいます。
米が小麦と同じ状況に陥っても少しも不思議ではありません。輸入米が安いからといって輸入比率をどんどん上げていくと、千魃による不作や中国などでの需要急増によって、米も小麦のように急騰するでしょう。となると、日本人となると、日本人の主食はどうなるのでしょうか。国民の主食をきちんと確保できない事態になったとすれば、それはやはり政治の責任です。
エネルギーも食料も、どう確保するかは国家の主体性に関わってきます。どちらも海外に依存し過ぎると日本の外交が大きく制限されてしまいます。