【国会レポート】他国との良好な関係には物ではなくソフト面の援助が大切【2008年7号】

この夏、日本とインドネシアの経済連携協定(2007年に締結)に基づき、インドネシア人の看護師・介護福祉士候補者約200人が来日したのを御存知の方も多いでしょう。

今年は我が国とインドネシアと国交を樹立して50周年ということで、私は国会議員レベルでの友好を深めるため、7月23日から25日まで衆議院訪問議員団の一員としてインドネシアを訪れました。

非常に親日的な国であるインドネシア

私にとってこのインドネシア訪問は2度目です。最初は2004年12月で、当時の民主党代表である岡田克也衆議院議員と一緒にASEAN(東南アジア諸国連合)主要加盟国を歴訪するなかで立ち寄りました(他はシンガポール、マレーシア、タイ)。

インドネシアは非常に親日的な国ですが、それは何より日本がインドネシアの独立に貢献したことが大きいでしょう。

戦前のインドネシアはオランダの植民地でした。戦後再びオランダが植民地化に乗り出したとき、独立を目指すインドネシア人とオランダとの間で戦争が起こりました。この独立戦争で現地に残っていた多くの日本兵がインドネシア人に加勢したこともあり、対日感情がきわめて良好と聞いています。

戦後も日本とは緊密な関係を維持し続けてきました。日本はインドネシアに対する最大のODA(政府開発援助)供与国であり最大の投資国です。日本への留学生も多く、帰国後には政界や経済界で要職を占める人物が多数出ています。

我が国ではあまり知られていませんが、人口約2億2200万人のインドネシアはイスラム教徒が最も多い国なのです。天然資源に恵まれ、日本も天然ガスや石炭の多くをインドネシアから輸入していますし、政治的には中国や北朝鮮にも太いパイプを持っていますので、対北朝鮮外交などを考えるときには日本にとってインドネシアの役割は侮れないものがあります。現在、スシロ・バンバン・ユドヨノが大統領です。

日本の経済的支援への期待感が大きい

議員外交によって各国の指導者と培った信頼関係も国際紛争を解決するという点で大きな助けになります。

今回はユドヨノ大統領にも表敬訪問をしましたが、新しい試みとしてはインドネシア国会の第一委員会メンバーとの会談でした。第一委員会は日本で言えば予算委員会に当たる非常に重要な委員会です。日本側は民主党の私を含め自民党2人、公明党1人の計5人の国会議員。第一委員会は6人の国会議員で、両者が通訳を交えながら会談を行ったのでした。

実は国会議員同士の交流ができるというのはインドネシアにとって非常に意義の大きいことでもあります。2004年までは軍事独裁政権とい色彩が強く、民主主義が浸透していなかったため国会もあまり機能していなかったからで、2004年4月、ユドヨノ政権になってかなり民主化が進み、国会議員もそれぞれ発言力を持つようになったのです。

第一委員会メンバーとの会談のなかで、特に経済面での我が国に対するインドネシアの期待感の大きさが改めてわかりました。

というのも一つには、やはり今年4月1日に経済連携協定が発効したからです。これは、日本がインドネシアからの輸入額の約93%を無税にする代わりに、インドネシアは日本からの輸入額の約90%を無税にするというものですが、日本がインドネシアから看護師・介護福祉士候補者を受け入れたり、インドネシアにおける日本企業のビジネス活動に関する手続きを簡素化することも含まれています。

もう一つは、インドネシアの産業を高度化させるために両国で協力事業を行う枠組みができたことが挙げられます。その結果、インドネシアでは日本からの投資に対する期待感がこれまで以上に高まっているのです。

資源の価格上昇によって豊かになっていく

ただし私の印象では、インドネシアの人たちはまだ天然ガスや石炭などの天然資源の国際価格が上がっていることの重要性に気がついていないようです。インドネシアとしては日本から投資を呼び込んで産業構造を近代化したいという意向が強いのですが、資源価格の上昇によって自然と外貨収入が増えて、インドネシアは放っておいても豊かな国になるでしょう。とすれば、日本からの投資にそれほど依存しなくて済むようになります。

ですから、我が国としてはそういうことも踏まえて、これからはむしろお金や物ではないソフト面の協力関係のほうに目を向ける必要があると思います。前回インドネシアを訪問したときに、日本の警察で研修するインドネシア人警察官の数を増やしてほしいとの要望が寄せられ、私も帰国後、予算委員会で取り上げました。そのように人的な支援に我が国はもっと力を注ぐべきでしょう。

友好関係が維持できるように努力すべき

今回は経済連携協定が発効し、看護師・介護福祉士候補を受け入れることになりました。将来、必ず国を背負って活躍する人たちですので、彼らが3年間しっかりと日本で勉強できる環境を整えなくてはなりません。まだ不十分な面がありますから、この点にも力を注ぎたいと思います。

なお、今回のインドネシア訪問では日本語を話せるインドネシアの政治家が非常に多いことを知りました。多くは日本に留学した経験のある人なのですが、やはり日本語が話せると私たちも強い親近感を感じます。しかし、インドネシアがいくら親日的だからといって、日本が何もしないままでいると今の親しい関係も長続きしないでしょう。

つまり、日本としては、インドネシアはもちろん他国との関係を中長期的な視野のなかで考えて、日本への留学生が自国に帰っても親日的な気持ちを維持し両国の友好発展に寄与してもらえるように制度を整えていくことが大切です。