【国会レポート】地元の実情をリアルに感じて国政に活かす【2009年2号】
通常国会で来年度予算の審議が始まりました。予算審議の前には衆議院本会議場で、いわゆる四演説(首相の施政方針演説、財務相の財政演説、外相の外交演説、経済財政担当相の経済演説)があり、翌日からさらに2日間にわたって大きな政党から順番に各党の代表質問が行われます。
2日目の後半には社民党や国民新党など小さな政党の代表質問になるのですが、そのころになると、本会議場にもかなり空席が増えてきます。以前なら、そんな中に中曽根康弘元首相や鹿野道彦議員が微動だにしないで座って小政党の代表質問を聞いていました。今でも非常に印象的なシーンとして私の記憶に鮮明に刻み込まれています。
憲法41条に「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」と定められていますから、日本の行く末は国会の本会議場で決まっていくといっても過言ではありません。政治に対する真摯な思いがあればこそ、本会議に毅然とした態度で臨めるわけですし、その意味で、政治への思いが希薄になっているのではないかと危惧しています。
受注減に苦しんでいる中小企業経営者
本レポートでは一昨年から経済への危機感を述べてきました。残念ながら今、それが現実的になってきています。最近、地元にある中小製造業の経営者の方々と意見交換する機会がありました。皆さん口をそろえて、「昨年11月から受注が大幅に減っている」といいます。その中には、売り上げが昨年10月に400万円だったのに11月に38万円、12月に18万円という会社がありました。また、別の会社も11月を基準にすると12月の受注がマイナス5%、1月が50%、2月70%という状態でした。やる気も技術力もある会社の経営者の一人は、「前回の景気後退期は逆に売り上げを伸ばしたが、今回は、朝から晩まで営業活動に飛び回っているけれども、ほとんど注文がない」と嘆いていました。
特に二次、三次の下請けとなると受注の減り方が極端です。今のところ、3月までは一生懸命に持ちこたえようと努力していますが、4月、5月になってもおそらく受注が回復するのは難しいでしょう。多少経済が上向いたとしても親会社や一次下請けに在庫が溜まっているので、二次、三次の下請けに注文が来るまでには半年以上かかると思います。本来、倒産に追い込まれないような会社も危機的な状況なのです。
急激に2002年の状況に戻っている日本経済
日本経済全体はどういう状況なのでしょうか。2000年以降、ドルに対してずっと実効では円安で推移してきました。日本の輸出金額の推移を見ると、2002年に約52兆円だったのが2007年には約83兆円まで増えました。6年間に毎年約5兆円ずつ伸びて約30兆円の増加です。失業率も2002年は年平均5.4%と最も高かったのですが、2007年には3.9%にまで下がっています。この間、雇用保険の被保険者は300万人増えていますから、それだけ雇用も確保されたのでした。ところが今、世界経済の冷え込みから輸出金額も失業率も一瞬にして2002年の水準に戻っているのです。一気に輸出金額が30兆円減り、雇用も最悪300万人まで減る恐れがあるというのは大変な事態だといえます。
たとえば、輸出産業の代表格の自動車の場合、2002年から2007年にかけて輸出が約200万台増え国内販売は約60万台減って、全体では140万台増えました。しかし、現在は輸出が激減し、全体では2002年よりも落ち込んでいるという状態なのです。
危機的な状況を前提にした対策を
私たち政治家としても、去年景気が大きく後退し始めたとき、リスケジューリング(返済期間を延ばすこと)は通常なら事故扱いとなり次の融資が受けられなくなるところを、金融庁や中小企業庁に働きかけて「事故扱いにしない」という通達を金融庁が出すことになりました。ところが、今回はリスケジューリングでは済みません。最低でも半年間くらいの返済猶予を設けないと、おそらく今後、ものすごい勢いで中小企業が倒産していくと考えられます。今、私たちは、急激な倒産の増加を防ぐための政策を提案しているところです。極端な受注減少に対して返済を半年~1年間猶予して、その間に受注が半減しても耐えられるような社内整備を図ってもらうのです。
経済の低迷はここ数年続くと私は考えています。世界経済を牽引してきたアメリカ経済はすぐには立ち直らないからです。アメリカ人の総可処分所得は年間1000兆円(1ドル100円として)なのですが、10年前は可処分所得と家計の負債残高は同じでした。しかし、10年間に収入が増えない一方で、家計の借金は400兆円も増えています。短期間で借金を減らして消費を回復させるのは難しいでしょう。とすれば、米国向け輸出が以前の水準に回復することが見込まれず、日本の雇用もさらに減っていくことが予想されます。政治には危機的な前提に立った政策が求められます。私は今、できる限りの対応を働きかけています。
新たなセーフティネットを法案として準備
私としては新たなセーフティネットとして、倒産で失業した人や雇用保険の給付期間が過ぎた人の中で就職と職業訓練の意思のある方には職業訓練を受ければ1日5000円を支給するという法案(求職者支援法)を出そうと考えています(もちろん、職業訓練の受講料や交通費も国が負担)。今回の景気後退の局面でもう一度、将来に備えてこの時期に職業能力をしっかりと身につけ、次の飛躍に備える時期であると考えています。
いずれにしても、私はこの数ヶ月間、危機感を持って行動しています。これも地元の皆さんのご意見の反映です。私は、自分の選挙区内で起きていることについてリアルな実感を持っていれば、どんな問題についてもそのリアルな実感を日本全体の政策として反映できると考えています。逆にリアルな実感がないと間違った政策になってしまいます。
役所の方は一生懸命に仕事をするのですが、情報がワンテンポ遅れます。会社にたとえれば、役所の方は管理部門で、営業の一線に出るのが政治家です。つまり、営業が管理部門より優位ではないと国は滅ぶでしょう。私たち政治家は営業の第一線でリアルに経済や生活者の情報をつかみ、それを管理部門に伝えてしっかりと仕事させるのが役割と考えています。いわば営業優位というのが政治主導なのです。