【国会レポート】今のような危機の時代政治家自ら情報を取るべきだ【2009年3号】

私はこれまで厚生労働委員会や経済産業委員会に所属してきましたが、今国会では予算委員会の委員にも起用されています。予算委員会は、年初の本会議で首相の施政方針演説や各党の代表質問の直後から始まり、2ヶ月ほどの審議を経て予算案が通ると終了し、それから他の委員会が開かれます。

予算委員会はそれだけ特別な委員会ということなのですが、開催日程の面でも他の委員会とは大きく異なります。他の委員会は週に2回の開催ですので、審議のない日は党内協議や法案審議に向けてのヒアリングなどに時間を充てています。一方、予算委員会は月曜日から金曜日の朝から晩までぶっ通しで開かれ、その間、委員もずっと審議に集中しなければなりません。

もう一つ大きく違うのが答弁する大臣です。他の委員会ではおおむねその担当大臣しか出席しないのですが、予算委員会では首相を含めてすべての大臣が出席して答弁します。

又聞き情報では対応に後れを取る

本レポートでも一昨年から「景気は非常に厳しくなる」と述べてきました。残念ながらこの予測通りに推移していると思います。これも私が経営者の方々をはじめ地元の多くの皆さんと直接懇談して得た感触に基づいているからです。そういう認識の下で今回、私も自分にとって初めての予算委員会に緊張感を持って臨みました。この予算委員会では最初、麻生太郎総理大臣や中川昭一財務金融大臣、与謝野馨経済担当大臣への景気認識の質問から始まりました。

これに対する各大臣の答弁から受けた印象は、景気認識が私よりもワンテンポ遅れているのではないかということです。その後、予算委員会が進んでいき、とりわけ野党から質問を投げかけられたことによって、予算委員会の後半では両大臣ともようやく景気への現状認識が追い付いてきた感じがしました。

さて、昨年1月以降、私は何人かのエコノミストに直接会って現状の経済状況についてインタビューしたのですが、その一人から「大島さん、先日ようやく役所の人がヒアリングに来ました。政治家は与野党含めて大島さん以外誰も来ていません」といわれました。役所の人がヒアリングに来ても、その内容が役所の大臣に伝えるときには又聞き情報になりますし、情報伝達も遅れてしまいます。

こんなことでは今のような危機の時代には対応できないでしょう。政治家も自分から積極的に情報を取らないと危機の時代はなかなか乗り切れません。これはビジネスでいうと営業です。私もサラリーマン時代、営業職だったのですが、営業とは要するに情報を自ら取りにいって市場を正確に把握することなのです。

危機の時代は政治家も営業感覚が必要なのですが、今の大臣を見ていると、どうも受け身の方が多いような気がします。そのため、現状認識がずれてしまい、先を読んだタイムリーな政策が出せないのではないでしょうか。

答弁能力でわかる大臣の三つのタイプ

以上が、初めて予算委員会に出席してまず気が付いたことです。次に、私たち質問者の能力も厳しく問われるとともに大臣の答弁能力も実に表れます。その結果、大臣は三つのタイプに分かれることを知りました。

第1のタイプは、役所のいいなりに答弁する大臣で、役所にとってはありがたい人です。

第2のタイプは、野党の質問を巧みに利用しながら、逆に役所を自分の思うように動かせる大臣です。このタイプはかなり力量のある政治家ですが、なかなかおりません。

第3は、功名心があって虚栄心が強いタイプの大臣です。答弁は世間受けするものの、役所を説得できなくて肝心の政策が進みません。

力量のある政治家が少なくなったのは、つまり、「政策を考えるのは役所で、役所が考えたいくつかの政策の中から一つを選ぶというのが仕事」と考えているからでしょう。

一方、私たちのような野党には官僚機構のバックアップがないので、政策は当然、議員が考えることになります。今のような危機の時代には、まさに政治家が政策を考えることが求められています。

言い換えれば、政治家は時代の一歩先を読んで官僚機構に対して課題を設定し、その解決に向けて働かせる力量が必要とされているのです。

「求職者支援法」に向けての取り組み

今国会での私の主要な取り組みについても述べておきしょう。今国会には私が中心となって法案化した「求職者支援法案」を提出しました。今年、100万人から300万人が職を失うと予想されており、再び就職するのが困難となる恐れがありますので、第2のセーフティネットが必要と考え、この求職者支援法を提出したのでした。

現状ですと、失業して雇用保険の受給期間が切れたり、経営者でも会社が倒産してしまうと収入が途絶えて、場合によっては生活保護になってしまいます。その間をカバーするのが求職者支援法なのです。

この法案が通れば、職業訓練を受けた場合、1日当たり5000円が支給され、交通費も出るようになります。現時点では公共職業訓練の座席数は3万~5万ですが、今後の雇用情勢を考えるとこれでは足りないため、審議会などで新たな職業訓練を認定して、医療、介護、農林水産など新しい分野のものも増やしていき、少なとも20万人くらいの座席数を確保していきたいと考えています。この20万人のプラットホームにはさらにさまざまな講座が加えられていくでしょう。いずれにしてもこの取り組みによって日本の産業構造を大きく転換していければと思っています。

また、これまで失業者が増えれば自殺者が増えてきました。失業して会社から離れると孤立してしまい、追い詰められるケースもあるでしょう。この制度を利用することで一緒に職業訓練を受ける仲間ができれば、孤立を防ぐことにもなります。

さらに、失業して国民健康保険に入ると、前年の所得を基準に保険料が決まりますから、失業しているのにもかかわらず、保険料が上がっ.てしまいます。そこで、この法律には「その差分を一般会計から補填する」という規定を入れて対策を講じています。

私は6年前にも同様の法案を国会に提出しました。今回は党内外でも関心を持つ人たちが大変増えて活発な議論となり、法案にもさまざまなアイデアが盛り込まれ、一段と充実したものとなったと思います。しかも、厚生労働委員会で「(私の作った)求職者支援法の趣旨を最大限尊重する」という全党一致での付帯決議が可決されました。今後は制度化できるように与野党および政府との間で議論を進めていきます。