【国会レポート】15年ぶりに3万人以下の自殺者数さらに減らすための今後の取り組み【2013年2号】

2012年の全国の自殺者数は前年比9.1%減(人数では2793人減)の2万7858人でした。これによって15年ぶりに年間3万人を下回ったことになります。政権交代した2009年と比べると5000人少なくなりました。「戦争は外交の失敗、国内で自ら命を絶たれる方が多いのは内政の失敗」と考えています。命を守るということについては、多くの方の協力を得て国民に寄り添うことができたと思います。

私は野党時代から自殺対策に関心を持って何度も国会で質問し、民主党政権が発足した後、内閣府副大臣に就任し自殺対策を担当しました。以後、毎年約千人ずつ自殺者が減少し、2012年に3万人を下回ることができたのでした。私が内閣府副大臣としてまず取り組んだのが自殺対策基金100億円の維持であり、さらに追加の37億円の自殺対策予算の確保でした。

そして、以上の予算に基づいて「自殺対策100日プラン」を打ち出し、さらに「いのちを守る自殺対策緊急プラン」も推進することになりました。併せて、内閣府が警察庁から自殺統計データをできるだけ早急に受け取れるようにし、それに基づいて地域ごとに性別・年代・原因・動機・職業・場所等の状況を整理し公表するようにしたことも効果的な自殺対策が打てるようになった点で大きかったと思います。

具体的な対策としては、テレビやラジオ等のマスメディアを使った集中的な広報活動(「お父さん、眠れてる?」のテレビCMなど)、全国のハローワークでの心の健康相談、商工会議所・都道府県商工会連合会での中小企業経営者向けの法律相談に力を入れました。私も弁護士会や司法書士会、中小企業庁に直接出向いて協力をお願いしたり、東京FMの番組に出演して自殺対策の大切さについて訴えたりしました。

自殺防止への絶え間ないボランティアの努力

また、活動としては私も新橋や地方都市の駅頭に立って自殺対策のパンフレットを配布する啓蒙活動も行いました。このような取り組みを全国的に行ってもらうようにしたのです。やはり他人を思いやる気持ちを持つということが徐々に広まっていったことも自殺者の減少に寄与したのではないかと思います。

今回の自殺者数の減少は、政治や行政だけの力ではなくボランティアも含めた民間の関係者の方々の絶え間ないご尽力なくしてはけっして達成できませんでした。

その一例を挙げれば、民間ボランティアの方の「いのちの電話」があります。これは自殺の恐れのある人からの電話に真剣に耳を傾けて丁寧に受け答えをするという24時間体制の活動ですが、私もその現場を訪れたことがありました。そこでは常時3~4人の方が電話に出て話をしていました。これを交代しながらも24時間体制で行うというのは精神的肉体的に大変な労力を要します。高い使命感がないとできないことです。

経営者への精神的な支援を手厚くする

ところで、中小企業経営者の中には資金繰りに困って自殺に追い込まれるという方も少なくありません。ですから、自殺対策という意味でも日本の景気が良くなってほしいのですが、この点で懸念されるのが3月末で打ち切られる中小企業金融円滑化法の影響です。これは金融機関に対して中小企業への資金融資について返済の猶予などの優遇を求める法律で、この打ち切りの影響について、私は昨年10月に大手信用調査会社から企業の倒産動向について話を伺いました。そのときには「円滑化法の対象企業は約30万社と推定され、打ち切り後には、そのうち3万社が倒産する恐れがある」ということでした。

先日の経済産業委員会では、「これまでに円滑化法の利用事業者が30万社から40万社にのぼる。しかし、その一方で、これから事業再生が必要になる事業者が5万社から6万社ぐらいある」と経済産業大臣も答弁しています。しかも今は急激な円安による原材料費の高騰を販売価格に転嫁できない中小企業も多くなっており、経営者の方への支援を手厚くする必要があります。事業の継続も含めて、精神的な面でも親身になっての支援体制を政府に提案していきます。

連帯保証見直しも含めて政府をリードする

連帯保証が自殺につながるという指摘もあります。たとえば企業が借金をした場合、その企業の経営者が個人保証するというのは日本以外の国でも見られるものの、自分以外の連帯保証人を付けるという国はあまりありません。連帯保証は強い人間関係を前提にして行われるのが常ですので、日本では連帯保証人を引き受けた人が多額の借金を背負ってしまい、破産や自殺に追い込まれるというケースが後を絶ちません。連帯保証人になると、ある日突然、それまでの幸せな人生が台無しになってしまうこともあるのです。

2月26日に法務大臣の諮問機関である法制審議会も「経営者の個人保証などを除いて、連帯保証人制度は禁止の方向で検討する」という方向性を民法改正の中間試案で打ち出しました。法務省は早ければ2015年にも民法改正法案を国会に提出するという方針ですが、私としてもできるだけ早く連帯保証の見直しを盛り込んだ議員立法を行って政府の民法改正を促していきたいと思います。

いまだに2万7000人以上の方が自殺へと追い込まれています。対策はさらに強化しなければなりません。これからも中小企業経営者への支援や連帯保証の見直しなどで政府をリードしていきます。