【国会レポート】政治家の力が問われる今後の日本の成長戦略【2013年1号】

今回は日本の成長戦略について述べたいと思います。私も内閣府副大臣時代に政府の成長戦略の策定に参加し、その中に女性への就労支援を盛り込みました。これは女性が子育てしながら仕事も続けられるようにするということなのですが、現状では、女性は子育てのときに仕事をいったん辞めると、子育てが終わった後もなかなか元の仕事に復帰できないということが多いからです。

また政府の立場からしても、なるべく多くの女性に働いていただいて日本国の税収増を図らなければなりません。男女共同参画部局を持っている内閣府としてもその点に着目し、まず女性の就労者数を増やすことを成長戦略に入れたいと考えたのでした。それが政府で了承されて、女性の就労支援が初めて成長戦略に入ることになったのです。

ところで、成長戦略策定に関わる中で私自身が痛感したのは、政治家が本当に真剣に考えないと成長戦略のための良いアイデアは出てこないということでした。官僚はきわめて優秀で現状分析は完璧にできるのですが、反面、今後どういう社会をつくり、その中で何を日本の成長の源泉としていくかということについては明確な答えを持っている訳ではありません。

ところが、実は成長戦略策定の中心となっているのは官僚にほかなりません。そうなってしまうのは、政府で役職に就いている政治家は公務が忙しいために自ら現場に行って生の情報を取材したりする時間がないのです。とすれば、政治家は政権で中心的な役割を果たす前にあらゆる現場に赴き取材し、成長戦略を策定するための蓄えを整える必要があります。

明治の岩倉使節団から学ぶべきこと

以前、岩倉使節団について取り上げました。1871年(明治4年)12月に横浜を出帆して以来1873年9月まで約1年9ヵ月をかけて世界を回ったのですが、岩倉具視、大久保利通、伊藤博文、木戸孝允など46名の使節のほか、随員18名、留学生43名という100名を超える大きなチームでした。

このチームは欧米およびその植民地を見聞して、世界最先端の科学技術、工業技術、医学、経済、金融、植民地政策などを学んで帰国したわけですが、それに加えて重要なのが1年9ヵ月も同じ釜の飯を食べて、それぞれの能力、人柄、素養などをお互いに知ることができたということでしょう。帰国後に彼らは一つのチームとして機能し、それが明治の建国に大きく寄与することになったのでした。

私は日本の政治でも最も必要なものがこのような核となるチームと思います。しかし、現実には岩倉使節団のようなチームをつくるための密度の濃い時間を政治家に与える余裕はありません。政治家、特に与党の政治家は情報を吸収する時間がないというのが実感です。したがって、野党の間にどれだけ蓄積できたかが与党に復帰すると問われるのです。

60代以上と40代以下のギャップ

さて、政府がなぜ民間の投資需要をうまく喚起できないのかというと、それは40代以下の若手経営者層の考え方を十分にとらえていないからと思います。私は今年、地元で開かれた多くの新年会に出て、40代以下の若手経営者の皆さんと意見交換をする機会が何度もありました。そのときに1人の若手経営者から次のように言われたことが大変に印象的でした。「大島さん、今の40代以下の経営者は景気の良い時代を全然知らないのですよ。ですから、投資をしろと勧められてもなかなか投資をしません」。私ははっとしました。投資をするかどうかという点で40代以下の経営者と50代、特に60代以上の世代では大きな違いがあるのです。この一種のジェネレーションギャップがあることが、高度成長期を経験した世代の感覚で成長戦略や経済政策を立案した場合に、思惑通りにならない一因と気付かされました。

高度経済成長期は黙っていても物が売れました。どんどん投資さえしておけば、次の景気の回復期に投資の回収ができたのです。一方、40代以下の経営者は同じような成功体験はありません。投資をする場合も創意工夫に基づいて慎重に判断します。したがって、いくら金融緩和をしても金利が安くなってもおいそれとは投資しないのです。その結果、高度成長していた時代の経営者の考え方を前提とした成長戦略や経済政策は当たらないということになります。

私は40代以下の若手経営者の人たちと接して、むしろ頼もしく感じています。鋭敏な現状認識と創意工夫に基づいてしなやかにビジネスを行っているからです。

古い政治の発想はもう通用しない

いずれにせよ、40代以下の経営者にはこれまでとは別の考え方を持った人たちが育っているのですから、政治も対応していくことが求められています。

私としては、産業インフラの整備と最新の情報提供をしていきます。地元の交通インフラについて圏央道、上尾道路の整備に一定の決着を付けました。あと三年で、圏央道は東北道から神奈川県藤沢市までが、上尾道路は大宮から桶川までが開通します。さらに上尾道路沿いに地元の農産物や特産品を売る道の駅と直売所をつくる計画も進めることができました。

最新の情報提供については、本レポートで取材に基づいてこれまでリーマン・ショックを予想し、シェールガス革命について紹介してきたほか、地元では先端の経営者や識者にお願いをしてセミナーも開催してきました。今後も情報提供にも一段と力を入れていきたいと考えています。