【国会レポート】エネルギーのコストを引き下げ有効に利用するのが今後の日本【2012年11号】

島国でエネルギーや資源に乏しい日本はこれまで1つの経済発展モデルに依存して経済成長を遂げてきました。このモデルとは、発展途上国や新興国から輸入したエネルギーや資源を使って国内で生産・加工した製品を先進国や中進国に輸出するというものです。製品を輸出した対価で再びエネルギーや資源を輸入するのですが、このようなサイクルを通じて日本は富を蓄積してきたのでした。

しかし、この経済発展モデルでは、エネルギー価格が上昇すると、日本に富が蓄積されず、反対に日本から富が流失していくのです。

たとえば日本のエネルギー(石油・石炭・天然ガス等)の輸入金額を見ると20年前の1992年は約7兆円でした。それがリーマン・ショックが起こった2008年には約28兆円にまで増大し、以後少しは減っているものの、2011年でも約22兆円にもなっています。ちなみに財貨の輸出入の収支である貿易統計では2011年は31年ぶりにマイナス1兆6000億円という貿易赤字を記録しました。2012年上半期もこの傾向は続いて半期ベースでは過去最大のマイナス3兆円の貿易赤字となりました。この最大の要因はやはりエネルギー輸入額の増大なのです。

日本が原発を推進してきた2つの理由

周知のように東日本大震災が発生し、福島第1原子力発電所で事故が起こりました。それが国内の原発の全面停止につながったのですが、廃炉が決まった福島第1原発の1~4号機を除くと日本の原発は現在全部で50基あります。原発の定期点検による停止で2012年5月に原発の稼働率がゼロになり、その後、大飯原発の2基だけは再稼働したものの、依然として他の原発はすべて停止しています。問題は、原発の代替の火力発電所に使用するLNG(液化天然ガス)や石油の量が急増してしまったことでした。それで前述したようにエネルギーの輸入額が増大し、今やこのエネルギーコストは我が国の大きな重荷になっています。

東日本大震災が起こるまで日本が原発を推進した理由は2つあります。まず1つは火力発電所の燃料である石油価格が上昇してきたということです(LNGの価格も石油価格と連動します)。1973年の第1次オイルショック以前の石油価格は1バレル2~3ドルでした。それがオイルショック後には20~30ドルにまで跳ね上がったため、世界中で石油の代替エネルギーへの転換が図られて、そのとき最も有力視されたのが原発だったのです。特にフランスは原発一辺倒となり、オイルショックをバネに国家のエネルギー戦略を火力発電から原発依存へと大きく変えてしまったのでした。日本もフランスほどではありませんでしたが、原発への依存度を高めていく政策を取るようになりました。

原発推進のもう1つの理由は地球温暖化の防止です。1997年に採択された京都議定書の実現のために温室効果ガスを出さない原発に大きな期待がかけられたのでした。

けれども、日本では原発新設はもとより再稼働も難しくなっています。つまり、貿易収支のみならず経常収支も赤字になるという意味でまさにエネルギー問題が直撃していると言わざるを得ません。

スマートシティなどへの国家的な投資

ところで、そもそも私がサラリーマンを辞めて2000年の総選挙に出馬したのは、日本の富が海外に流出していたからでした。私は鉄鋼会社に勤めていたのですが、鉄鋼会社のようなメーカーは一生懸命に合理化努力を行い、コストを削減し、それで外貨を稼いできました。ところが、その外貨(国富)を日本の政治がうまく機能せずに海外に流出させていたのです。立候補したのもそれを止めなければならないと思ったからで、したがって、日本の富をどう守るか、あるいはコストの安いエネルギーをどう確保するか、ということが私の政治家としての原点になっています。

今日、日本のエネルギーコストは増えていくばかりです。しかし、これは逆に言うと、日本のエネルギーコストを下げていけるなら日本に富を蓄積できるということにほかなりません。米国では目下、天然ガスの一種であるシェールガスが大量に採取できるようになり、いわゆるシェールガス革命が進行しています。シェールガスは米国だけでなく世界中で取れることが分かってきましたから、日本もまず世界中のシェールガスの権利を取得するなどしてエネルギーコストを下げていく努力が求められます。

一方、国内においても、スマートシティを推進しなければなりません。スマートシティとは、最新技術を駆使してエネルギー効率を高め、省資源化を徹底し、環境に配慮した街づくりを行うということです。ここでは電力を有効利用できるスマートグリッド(次世代送電網)が中核技術の1つとなっています。

しかも、こうしたスマートシティやスマートグリッドは日本のように科学技術の開発を得意とする国でこそ実現できるものです。とすれば、やはり政治もそれに向けて可能な限り多くの資金や人材を投入していくことが不可欠でしょう。

実は日本のGDP(国内総生産)に対する輸出比率は14%程度(2011年)とそれほど高くはありません。エネルギーコストを下げていければ、冒頭に述べたこれまでの日本経済の成長モデルも変わっていくと思うのです。