【国会レポート】陳情や要望に対しては具体的に対応する【2011年7号】

国会議員という立場から自治体や各種団体から多くの陳情や要望を受けます。たとえば圏央道の北本・鴻巣間の二期工事についても要望を受けて実現のために働いてきましたが、毎年9月から年末にかけては来年度予算を作成し税制を決める時期なので、予算配分や税制について陳情や要望が寄せられています。

陳情や要望が多いとなかなか個別に対応し切れないので、要望書の山を事務所に積んでおくという国会議員も少なくはありません。私は、それぞれが国民の声ですから真摯に受け止めたいと思って対応しています。特に、県や市町村からの要望や陳情は、選挙で選ばれた首長が議会での意見を踏まえて出されるものですので、しっかりと対応させて頂いています。

埼玉県の要望書を例に取ってみましょう。毎年7月頃、埼玉県選出の全国会議員が県知事から来年度の政策と予算の要望について説明を受け、意見交換をする機会が設けられます。私は、まずその60ページほどの要望書に目を通して、私が私の地元事情と照らして納得できるものについて、政府つまり中央官庁に必ず伝えます。その後、要望した結果がどうなったのかもフォローアップもしておきます。今年は、警察官の増員の要望は警察庁に即座に伝えましたし、中小小規模企業への融資制度については、直接、中小企業庁長官に県の事情を説明し対応について要請しました。また、私の国会事務所に県の担当者と中央官庁の担当者を呼んで、両者に議論してもらうという形で中央官庁の回答を県に示してもらうようにもしています。国会議員がそこまでやれば国もきちんと対応するようになります。

内閣府副大臣として沖縄県担当をしていたときも、沖縄県から要望を受けると各部局に回答を求め、私が必要だと思う要望事項については、どうしてできないのか、あるいはどうすればできるのかをサラリーマン時代と同じように一つずつ詰めていきました。それで実現したことが随分ありました。

地元の酒屋さんが取り組む「萌酒サミット」

行政関連の他に地元の皆さんからの陳情・要望にもできる限り応えるようにしています。その1つに、昨年に引き続いて今年10月10日に秋葉原で開催される予定の「萌酒(もえしゅ)サミット」があります。

萌酒とは、可愛い萌えキャラクターをラベルにプリントした日本酒(地酒)です。3年前に福島県で「おじょう」というブランドが発売され、その後、「キャラクターを先にデザインしてその設定とイメージに合う味の日本酒を作り、そのキャラクターに声優が声を付ける」という企画に発展し、その地域のストーリーをいかした萌酒が全国各地で発売されるようになっています。

萌酒サミットでは全国各地の萌酒を紹介するほか、人気声優等によるトークショー、マンガキャラクターによるダンスパーティーなどが催されます。

萌酒サミットの主催者の1人である地元の酒屋さんから誘われて、昨年、私も萌酒サミットに行ってみました。6000人くらいが訪れて大変に賑わったイベントだったのですが、萌酒サミットの主催者から「今年はぜひ政府に後援してほしい」という陳情を受けました。「被災地の観光協会に声を掛けて復興支援にも貢献したい」とのことでしたので、政府の後援が付くよう働きかけたのでした。日本の文化を世界に輸出できることにもつながると、経済産業省と観光庁が後援を快諾してくれました。

政府の後援といっても別に税金が投入されるわけではなく、あくまでも「政府後援」の看板だけです。つまり、政府が後援するというのは「皆さん、このイベントをぜひ助けてやってください」というシグナルなのです。ですから、政府の後援は営利目的ではなく公共のイベントでなくてはいけません。主催者は政府の後援が付けば協力者を集めやすくなります。

そして、この萌酒サミットが成功すれば、結果的に日本酒の認知度が上がって販売量が増え日本酒市場も広がっていきます。これは政府の後援が日本経済の活性化にもつながるという言い方もできるでしょう。

クールジャパンで世界に日本を売り込む

萌酒サミットに関わっている1人に大学の講師をされている方がいらっしゃいます。ある授業で学生たちに向かって「日本酒を飲んだことがあるか」ときいたところ、飲んだことのある学生はほとんどいなかったそうです。それで日本酒の将来に危機感を覚えたとのことです。杜氏が丁寧に作っていく日本酒は日本の文化伝統であり、ワインよりも奥が深い酒だと言われています。

実は世界で最もソムリエの数が多いのが日本なのです。これはフランス人がうまく日本人を誘導した結果なので、そう考えると、世界に日本酒を売っていこうとするとき、日本オリジナルのキャラクターをラベルにするというのは有力な手法と考えているそうです。

というのも、日本のサブカルチャー(オタク文化)は世界でも注目されており、この世界の市場規模はものすごく大きいのです。マンガ等の萌キャラの声優はヨーロッパで大変人気があり、声優が現地に行って萌キャラの言葉をしゃべると、日本語であっても現地の人たちに大受けすると主催者から伺いました。日本政府も、日本の若者文化をクールジャパンということで世界に情報発信し観光客の誘致にも取り組んでいます。

先入観なく時代を捉える

秋葉原は世界で最も時代を反映し、かつ次の時代の胎動が始まっている街と思います。私は昨年夏までAKBが秋葉原の略であり、AKB48の存在もまったく知りませんでした。知人のジャーナリストから「AKB48を知っているか」ときかれて、社会現象になっていることを初めて知ったのです。

経済は、行政や大企業だけではなく社会のいろいろな分野で動いています。先入観なく時代を捉え、サブカルチャーであっても世界に注目され経済発展に寄与するなら、それを後押しすることも必要です。そのきっかけを地元の酒屋さんに作っていただきました。