【国会レポート】副大臣の仕事に生きているサラリーマン時代の経験【2010年1号】

内閣府副大臣に就任して以来、地元での活動はほとんどできなくなりました。副大臣になる前なら国会の予定がなければ、朝6時半から地元の皆さんに駅でビラを配ってから国会に通っていましたが、今は朝9時前には内閣府に入ります。それから、役所内での会議を含めたさまざまな仕事をこなして、役所を出るのは午後7時ぐらいになってしまいます。

土日も打合せに出ることが少なくありません。各大臣間の調整が付かない場合、私のほうから各大臣にお願いして土曜や日曜に会議を入れてもらっているからです。内閣府は省庁間の調整業務を行うことになっていますし、私自身も副大臣として複数の大臣に仕えています。要するに、法制上も職務上も政府を支えるのが私の仕事といえるでしょう。ある意味、政府内中間管理職と言えるかもしれません。

権力を生産する過程と消費する課程

私が初当選したとき、民主党の選対委員長は通産大臣を務めたこともある熊谷弘さんでした。熊谷さんは、私が当選して間もなく1年生議員を前にこういいました。「権力には、それを消費する過程と生産する過程がある。野党の仕事は政権を取るまで続くが、それが権力を生産する過程である。だから、野党の議員は選挙運動に力を入れなければならない。政権を取ると今度は政策を実行する段階になる。これが権力を消費する過程である」と。

野党時代は権力を生産する過程で、政権党になったら権力を消費する過程になるということですが、後者では、竹下政権での消費税導入がわかりやすい例でしょう。竹下政権は消費税を導入した後の選挙で負けて崩壊してしまったのです。つまり、生産して蓄えた権力を何かの大きな課題で使ってしまったら、その政権は力を失います。

私たちは今、皆さんのお陰で政権を担わせていただき、かつ、私も政府に入っているわけですから、今は権力を消費する過程にあります。したがって、地元での活動も重要だとは思うのですが、副大臣として政府に入って仕事をしている間はそれを最優先にしなくてはいけません。

副大臣として5人の大臣に仕える

そうした仕事の中でこれまで前原大臣、福島大臣、仙谷大臣という3大臣に仕えてきました。そして最近、中井洽国家公安委員会委員長・内閣府特命担当大臣と枝野幸男内閣府特命担当大臣という2大臣のお手伝いをすることになりました。従って、今、5人の大臣に仕えているわけですが、ご承知のように枝野大臣は私と同じ埼玉県が選挙区でこれまで埼玉県の問題について協議してきた間柄でもあります。

新聞には最近、私が関与している政策に関連した記事が多く載るようになってきました。たとえば、公務員制度改革では国の役所の幹部職員を一元管理する法案、自殺問題では対策としての100日プランの作成、沖縄問題では沖縄の振興策や振興予算などです。沖縄関連ですと特に沖縄の新聞では毎回大きく取り上げられているのですが、私が沖縄に出張すると、やはり沖縄のメディアで多くのスペースを割いていただいています。

省庁間の調整業務のできる政治家は多くない

先日、私と同じく民間企業出身の同僚議員と会った際に話題になったことがあります。それは、省庁間の調整業務を得意とする政治家が多くはないということです。この点は、やはり民間企業である程度働いた経験がないと気が付かないかもしれません。この同僚議員も民間企業では営業課長として活躍していました。

一つの時代の方針を決めるのは政治家にとって大きな仕事です。私もそのために見識を磨いていきたいと考えていますが、私のような副大臣という立場ですと、大臣が出した方針あるいは各省庁の部署の意見を背景にして政府内の政策調整を行うという仕事があります。また国会には各省庁に対応した委員会がありますから、国会との調整も必要になってきます。このように政府内及び国会との調整業務を司っていくのが現在の副大臣の重要な仕事になっています。

役所の人たちに聞いたところ、前政権までは、副大臣や政務官はあまり役所に来なかったそうです。地元活動などに力を入れていたのでしょうか。

その一方、役所では大臣一人しか政治家としての仕事をしていなかったわけですが、大臣の職は国会の委員会などでの答弁、その省庁での会議、外部でのセレモニーなどがあって圧倒的に忙しいため、大臣自身で省庁間の調整をするなどという時間はありませんでした。その結果、以前の政権ですと政治主導をやりたくても、それに割ける大臣の時間が圧倒的に少なく、大臣は官僚の振り付けに頼るしかない状態でした。

今の政権ではこの統治機構が大きく変わりました。各省庁は、大臣、副大臣、政務官という政務三役がチームで働いており、政治のガバナンスが利いています。

サラリーマン時代の企画調整と営業の経験

私の場合、サラリーマン時代に大きな会社の組織内で企画調整の仕事を長く経験しましたし、営業もやってきました。それが今の副大臣の業務に生きていおり、省庁間の調整業務はもちろんのこと、5人の大臣に使えているわけですが、各大臣からの指示を仰ぐべき場合と仰がなくてもいい場合を、これまでの経験に照らして判断しています。概ね当たっているようです。

このほか、役所の人たちと接するときにも、サラリーマン時代の経験は生きています。役所が資料を出してきても、私がそのまま了解することはありません。この資料は別の角度から見直したほうがいいのではないかと官僚に指示を与えると、次にはその資料の質が格段によくなるのです。つまり、議員の質問能力は政府に入っても重要です。そういうことを通じて役所の機能がさらに高まっていくと思っています。

こちらから相手のところに出向いていく

国会へは、法案の審議を支障なく円滑に進むようにすることが副大臣の仕事です。やはり国会の委員会の委員長や理事の皆さんとの綿密な意志の疎通が必要です。省庁間や国会との調整では、こちらから出向くようにしています。私は営業のときには何千社という会社に飛び込みセールスをしていたのですが、その会社にいけば業績がいいか悪いかなど内情がわかったものです。同様に、こちらから各省庁に訪ねていくと、相手の仕事ぶりがわかりますし、こちらもいい刺激をたくさん受けます。いずれにしても、政治主導になって副大臣や政務官に求められる能力が格段に高くなってきたのは間違いありません。