【国会レポート】政府に関わる政治家には無責任な発言は許されない【2010年2号】

今回は政治家の発言について述べてみます。野党の政治家は政権とは距離がありますから「あるべき論」になりがちですが、与党の政治家あるいは政府に入っている政治家となると、そういうわけにはいきません。発言が行政に直接的な影響を与えるからで、思い付きでしゃべってしまうと、行政を混乱させてしまいます。

したがって、内閣府副大臣を務めている私も公の場での発言には慎重にならざるを得ないのです。去る3月19日、NPO法人「シーズ」の主宰するセミナーに招かれて「新しい公共」円卓会議座長の金子郁容氏(慶應義塾大学教授)、シーズ事務局長の松原明氏と共にパネラーを務めたときもそうでした。

このセミナーは「『新しい公共』はNPOに何を期待しているのか?」と題するものでしたが、「新しい公共」というのは首相の発言がきっかけになっています。すなわち、首相が「官だけでなく市民が参加することによって担う公共、つまり『新しい公共』の中心的な担い手はNPOである」と述べたことを受け、1月には政府の「『新しい公共』円卓会議」が、2月には政府税制調査会の「市民公益税制プロジェクトチーム」がそれぞれ発足しました。

慎重な発言が求められる副大臣という地位

こうした中で開かれたのがこのセミナーです。私は対談の席上、「今後の公益法人税制はどうなるのですか」と具体的な政策の中身について意見を聞かれました。会場にいらした100人ほどの参加者の方々の中には、政治家としての踏み込んだ発言を期待していた方もいらっしゃいましたが、私は今後の公益法人税制の具体的なあり方には言及できませんでした。

これに対しては、進行役が「大島副大臣は慎重にみえますが、昨年の税制改正でもわかるように、意見を聞いてくれて、きっちりやってくれる方です。今では税制改正の結果、国税庁が1カ月に1回地方に出向いて認定資格取得のための相談会を開催してくれるようになりました」とフォローしてくれたので、少し気は楽になったのですが‥‥。

進行役の発言での「昨年の税制改正」については、そこでNPO法人税制が大きな進展を見たことを指しています。従来、税制優遇を受けられる認定NPO法人になるには山のような審査書類の提出が求められ、受付窓口も全国7カ所の税務局に限定されていました。昨年12月の税制改正で、審査書類の数を3分の1程度まで減らし、税務当局が各県を巡回しながら相談業務に当たるように変えたので、NPO法人の負担がぐんと軽減されました。今、それがNPO法人の諸団体からも高く評価されています。

政治家の使命は結果を出すことにある

政治家には目に見える結果をきちんと出していくことが大事です。逆に、結果が出ていないのに大言壮語することはできません。今、私は政府に入っているのですから、なおさら発言には重い責任が伴います。

発言が慎重になるもう一つの理由は、私が副大臣といういわば中間管理職的地位にあるからです。その省庁の方針を打ち出すのはトップの大臣であって、副大臣の仕事は大臣の意向に沿って役所を動かし政府内での意見調整を行うことなのです。セミナーに出席しても政府で決まったこと、あるいは、大臣の発言の範囲内でしか述べることができないと考えています。勿論、大臣との打ち合わせでは、私の意見の多くが取り入れられるのですが。

地元では時々、「テレビに出ませんね」とか「もっとマスコミに顔を出すようにしたほうがいいよ」と言われます。実際、民放のワイドショーなどから出演依頼が舞い込むことも無いわけではありません。しかし、上記と同じ理由から、職務上の仕事として政府や党から指示があった場合を除いて、私は出演を控えています。

今回のセミナーは、NPO法人制度についてご意見を伺うなどお世話になっている団体からの要請でもあり、個人的に出席したのでした。それでも政府の一員という立場には変わりがありませんから、慎重な発言をせざるを得ませんでした。

ここで改めて政治家の公式発言を考えると、大きく2つに分かれると思います。1つは議事録に載る国会での発言です。特に大臣の国会での発言は法律に準じるとされ、政府内では非常に重く受け止められます。そのため、役所のほうも大臣の国会発言に沿って政策を変えていくことが少なくありません。

もう1つはテレビや新聞などのマスコミでの発言です。もちろんマスコミでの発言に役所は従わなくてもいいのですが、マスコミの背後には主権者たる国民がいるわけで、その発言は国会以上の影響力を持つ場合があります。

いずれにせよ、政府に関わっている政治家は特に公式発言では慎重でなくてはなりません。ただし熟練した政治家となると、マスコミで思い切った発言をして、それに対する世論の反応を見ながら政策的な落としどころを探るという手法を取る場合もあります。

役所のレベルを上げるのも政治家の役目

私の職務においてマスコミと恒常的に接しているのが週1回の消費者庁の記者会見ですが、ここでの発言でも、私は基本的に役所が対応できる範囲かどうかを見極めるように心がけています。私が踏み込んだ発言しても結果的に役所が対応できないこともあるからです。とはいえ、この点がとても難しいのですが、役所の実力を高めていくためには役所のできる範囲内のことだけ発言していても不十分だと思うのです。

言い換えれば、「やります」と言って結果的にできないと国民を裏切ることになりますが、かといって、いつも無難な線でまとめていると今度は役所に緊張感がなくなってしまうという恐れがあります。当然、役所のレベルは上がっていきませんから、私は記者会見では一歩踏み込んだ発言を心掛け、役所に高めの課題設定をすることで、私自身にも課題を課しているのです。