【国会レポート】経済成長中のベトナム・ハノイを視察【2017年8号】
25年ぶりにベトナムの首都ハノイを訪問しました。国会議員の海外出張というと大名旅行と思われるかもしれませんが、今回も議員会館内のJTBで購入したパック旅行による機中1泊・現地2泊の実質3日の訪問でした。
25年前、私は会社の輸出部門で仕事をしていました。それでベトナムでドイモイ(改革・開放)政策が始まった機会をとらえて2週間の日程でベトナム視察に出かけたのでした。ベトナムは南北に細長く、ハノイは北に、ホーチミン(旧南ベトナム時代の首都サイゴン)は南にそれぞれ位置します。当時、ホーチミン市が活気ある都市だったのに比べ、ベトナムの首都ハノイは外国人が泊まれるホテルがほぼ1つしかなく、ガソリンも瓶に詰めて道端で売っているような町でした。もちろん自家用自動車など見かけることは少なく、市民の主な交通手段は自転車だったのです。
このときは20を超える国営企業の総裁と面談を行いました。面談はどれも時間通りに始まってすぐに本題に移りました。ベトナムは仕事熱心で優秀な人材の多い国という印象を持った次第です。また、日本の商社の現地スタッフから「ベトナム戦争時にはソ連製のミサイルが命中しないのでベトナム人たち自身で改造して精度を上げた」とも聞きました。
二人っ子政策による人口構成の歪み
ハノイは漢字で「河内」と書くのですが、この字の通り、ハノイは湖や池が多く川に囲まれている街です。それが今や25年前とは違って高層ビルが立ち並ぶ近代的な都市に大きく変身していました。ハノイにつながる橋梁や空港は日本の援助で建設されたものです。
このハノイの街は活気に溢れていましたが、これまで一人っ子政策ならぬ二人っ子政策を取ってきたため、以前は8~9人兄弟が普通だったのに今では2人になりました。その結果、人口構成がアンバランスになってしまい、平均年齢28歳の若い国とはいえ、将来には少子高齢化が待っています。いったん二人っ子政策のような人口抑制策を取ると、この政策をやめた後も子供をもうけなくなるようです。したがって、向こう10年間の経済成長は良いとしても、その後は少子高齢化に対応できる効率的な国家運営に変えていく必要があります。
民意をつかむ努力の重要性を痛感
私がベトナムに行った目的の1つは、40年間ベトナム政治の中枢にいた元国会議員の方に会うことでした。というのも、その方は米大統領選でのトランプ氏の勝利を的中させたからです。私にはベトナム政府要人と親しい友人がいて、米大統領選の1週間前にこの友人から「ベトナムの元国会議員はトランプ氏が勝つと確信していたよ」と言われました。そのときはまさかと思ったのですが、結果が予想通りだったので、友人にぜひその方を紹介してほしいと頼んで、今回、ハノイで会うことができたのでした。
このとき、「なぜトランプ氏の当選が予想できたのですか」と尋ねても明確な回答はもらえなかったのですが、どうもアメリカの有権者の民意をつかむ努力をしたからのようです。つまり、トランプ氏を強く支持したとされるラストベルト(錆びた工業地帯)の白人有権者の不満がいかに強いかをよく理解していたのでしょう。
ベトナムは共産党一党独裁の国なので政治家は選挙で選ばれるわけではありません。しかし選挙がないからこそ、民意をつかむための努力が必要なようです。同じことを以前、私はやはり共産党一党独裁の中国に行ったときにも感じました。選挙がないから民意をつかまなくていいというのではなく、選挙がないからこそ民意をつかむ努力が欠かせません。つまり、一党独裁の国であっても民意をうまくつかまないと国家運営に支障が出てくるのではないでしょうか。その鍛えられた感性がトランプ氏の勝利を予測できたと思うのです。日本では選挙がありますが、私も同じ政治家として民意をあまねく知るという基本につねに立ち返らなくてはならないと痛感した次第です。
日系企業にASEAN自由貿易圏の恩恵
もう1つの目的はハノイに進出している日系企業の視察でした。日本の大手自動車メーカーが親会社のオートバイメーカーを訪れました。20年前にベトナムの経済成長に着目してハノイでバイクの生産を始め、今や年間販売台数は220万台近く、ベトナムでのバイクのシェアも約8割と圧倒的です。従業員数7000人のうち日本人は20人くらいしかおらず、後はすべてベトナム人です。
日系企業を視察したとき、多くの方から、「ベトナムの労働者は真面目で質が高い。しかも相当大変な仕事でも平気で取り組んで頂ける」と伺いました。また、「やはりベトナム戦争が大きく影響している。あのベトナム戦争のときの苦労を知っているので辛抱強いのでしょう」とも伺いました。
なおASEANの先行加盟6ヵ国(ブルネイ、フィリピン、インドネシア、マレーシア、タイ、シンガポール)の間では、すべての品目の関税撤廃がすでに実現しています。また、後発加盟4ヵ国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)でも関税撤廃が進み、加盟10ヵ国全体の総品目数に占める関税撤廃品目の割合は96%にまで拡大しました。今やASEANは関税撤廃の点では世界でも有数の自由貿易地域になっているのです。従って、日本企業もベトナムに進出するとその恩恵を受けることができるのです。
圏央道が地元から成田空港まで開通したことで、鴻巣駅前からシャトルバスが運行されるようになりました。世界が、特にアジアが近く感じられます。今後、アジアの成長を呼び込むように取り組んで参ります。