【国会レポート】安心して働くことができる社会を実現する【2017年5号】

着実に成果を挙げている求職者支援制度の活用

私が出席したある集まりで40歳くらいの女性からこんな話を聞きました。「離婚して小学生の子供2人と実家に帰りました。安定した仕事に就きたくても、専門的な仕事のスキルがないため、パートしかありません。そこでハローワークで相談したところ、月10万円の給付を受けながら、職業訓練を受けられる制度を紹介されました。その制度を利用して介護職員実務者研修を受け、資格を取得することで、介護サービス会社に正社員として採用してもらえました」

この制度こそが私が実現させた求職者支援制度なのです。2000年6月に初当選した総選挙で訴えた私の選挙公約が制度の基本的なコンセプトになっています。

まず当時、リストラされた中高年、自営業を辞めて会社員として再就職したい人、子育てが終わって仕事をしたい主婦などが、就職したいと思った場合、公費で職業能力をつけるというような制度はありませんでした。

雇用保険の対象でなかった方は、無料の職業教育訓練を受けられなかったのです。また、失業手当が出るのは失業後最長で330日間ですから、その期間を過ぎても新しい就職先が見つからないと生活保護に陥ってしまうケースも少なくありませんでした。

そこで、雇用保険と生活保護との間を補う第2のセーフティネットという位置付けの制度が必要だと考えたのです。

要するに、以上の2つの機能を備えたものが求職者支援制度にほかなりません。スタートしたのは民主党政権だった2011年10月です。この制度では、一定の所得要件に基づいて最大で月10万円の給付金を支給します。それを生活の支えにしながら3ヵ月、6ヵ月、1年、さらに最長2年まで民間のスクールの講座を受講することができるのです。

求職者支援制度の利用者は好不況による増減はあるものの、これまで合計約36万人にも上っています。最近では年間約6万人が利用していて、そのうち雇用保険の対象の会社に就職している人が6割くらいで、そうではない会社も合わせると8割以上の人が就職先を見付けているのです。この就職率はかなり高いのではないでしょうか。

フォローアップによって費用対効果の高い制度に

私が立ち上げた制度ですから大きな責任もあります。それで実情がどうなっているか知るために、ときどき求職者支援制度が実施されている現場、すなわちスクールに足を運ぶようにしています。

制度の導入当初は不正を働くスクールも出ました。それで新聞に掲載されたこともあるのですが、この制度については有識者を入れて、常にフォローアップしながら改善してきました。

今では、現場の受講者の熱心さと就職率の高さからもわかるように、費用対効果の高い制度になっています。

求職者支援制度を常に時代に合わせる

私が求職者支援制度の構想を提起した2000年の初当選時に比べ、仕事の環境も大きく変わってきました。かつては、採用した後で仕事を教えるという会社も多かったのですが、今は、どの会社もそんな余裕はなく、専門的な能力を発揮できる即戦力の人材を強く求めるようになっています。しかも技術の進歩で、ビジネススキルを常に向上させていかないと、一定の報酬が得られにくくなってきました。

これからも、求職者支援制度を時代の要請に合わせることで、日本全体の働く力を高め、安心して就労できる社会を実現していきます。

逼迫する労働力の需給がビジネスモデルを変える

日本の生産年齢人口(15歳~64歳)がピークを迎えた1995年、転職して生保の営業を始めた私は、お会いする経営者の方に、総人口と生産年齢人口の推移のグラフを使って将来の人口減少と人手不足を説明することにしていました。以後、生産年齢人口が減少に転じ、ピーク時の8700万人から2016年には7700万人を割り込みました。

2000年代はインターネットの普及で定型的な仕事が情報機器や機械に置き換わって若い人たちを中心に大量の失業者が出るようになったのですが、2010年代には団塊世代の完全リタイアで労働力の減少が顕著になり、労働力の需給が逼迫してきたのです。従来のビジネスモデルも成り立たなくなってきたのです。

2000年代のビジネスモデルは、20代、30代の若い人たちを非正規で雇い、一生懸命働いてもらうように動機付けを行うというものでした。労働力の需給が逼迫する2010年代にはそうした手法では企業は収益を伸ばせなくなってきました。

人口減少でも豊かさを保てる社会をつくるチャンス

私は、人口が減少しているからこそ日本人の仕事の仕方を見直して効率化していかなければならないと考えています。

今のタイミングは日本の次の発展に向けた助走期間であり、人口減少を1つの転機として日本の産業構造をより高度化し、一人ひとりの給与を引き上げ、人口減少でも豊かさを保てる社会をつくっていくチャンスともいえます。

男性でも女性でも、年を取っても、できるだけ多くの人たちに働いていただきたいというのは事実ですが、国が強く政策誘導することは馴染みません。

安心して働ける制度と仕事の効率化によって、より充実した働き方ができる社会を作ることが政治にできることだと思います。

かつては、1つの技術を身につければ安定して仕事を得ることができましたが、科学技術のイノベーションやビジネスモデルの変化によって、一生涯勉強をして常にスキルを磨かなければならない時代となりました。

さらに民間企業も人材育成に手間をかけるゆとりがなくなっている中で、私は効果的に機能している求職者支援制度をさらに拡充することによって、日本を担う産業人材を育成していきます。