【国会レポート】着実に成果を挙げている求職者支援制度の活用【2016年2号】

私が出席したある集まりで40歳くらいの女性からこんな話を聞きました。「離婚して小学生の子供2人と実家に帰りました。安定した仕事に就きたくても、専門的な仕事のスキルがないため、パートしかありません。そこでハローワークで相談したところ、月10万円の給付を受けながら、職業訓練を受けられる制度を紹介されました。その制度を利用して介護職員実務者研修を受け、資格を取得することで、介護サービス会社に正社員として採用してもらえました」

この制度こそが私が実現させた求職者支援制度なのです。2000年6月に初当選した総選挙で訴えた私の選挙公約が制度の基本的なコンセプトになっています。

まず当時、リストラされた中高年、自営業を辞めて会社員として再就職したい人、子育てが終わって仕事をしたい主婦などが、就職したいと思った場合、公費で職業能力をつけるというような制度はありませんでした。雇用保険の対象でなかった方は、無料の職業教育訓練を受けられなかったのです。

また、失業手当が出るのは失業後最長で330日間ですから、その期間を過ぎても新しい就職先が見つからないと生活保護に陥ってしまうケースも少なくありませんでした。そこで、雇用保険と生活保護との間を補う第2のセーフティネットという位置付けの制度が必要だと考えたのです。

職業訓練で月10万円の給付も魅力

要するに、以上の2つの機能を備えたものが求職者支援制度にほかなりません。スタートしたのは民主党政権だった2011年10月です。この制度では、一定の所得要件に基づいて最大で月10万円の給付金を支給します。それを生活の支えにしながら3ヵ月、6ヵ月、1年、さらに最長2年まで民間のスクールの講座を受講することができるのです。

求職者支援制度の利用者は好不況による増減はあるものの、これまで合計約30万人にも上っています。最近では年間約6万人が利用していて、そのうち雇用保険の対象の会社に就職している人が6割くらいで、そうではない会社も合わせると8割以上の人が就職先を見付けているのです。この就職率はかなり高いのではないでしょうか。

なお私は、この制度ではスクールに毎日通ってもらうことにもこだわりました。ですから、毎日通わないと10万円の給付金が出ない場合もあるような仕組みになっています。なぜこだわったのかというと、毎日通えば、規則正しい生活が続けられ、就職意欲も維持できて、9時に出社して5時半まできちんと働くという会社生活の基本も身に付きますし、スクールで同じ立場の仲間に出会うことで孤立することも防げるからです。

就職ではスクール側の努力も不可欠

私が立ち上げた制度ですから大きな責任もあります。それで実情がどうなっているか知るために、ときどき求職者支援制度が実施されている現場、すなわちスクールに足を運ぶようにしているのですが、先日も東京都と埼玉県のスクールのビジネスパソコン基礎科、簿記会計科、医療事務・調剤薬局・介護事務科、介護実務者研修科の授業を見てきました。

いずれも1クラス10~15人で、20代から40代までの男女の受講者の皆さんが例外なく真面目に熱心に勉強していました。受講者から直接、話を聞いたなかでは、たとえばビジネスパソコン基礎科の30代の女性の「学校卒業後3年間働いて離職し、結婚後の子育てのために10年間のブランクがあったので、今の時代に合った専門性を持とうと求職者支援制度を利用して訓練を受けています」というのは一つの典型例だと思います。

また、「他の受講生と仲良くさせてもらっています。同世代だし、仕事や求人について共通の話題ができてやる気もでます」とか、「生活の費用に充てられる給付金は本当に助かっています」といった言葉もいただいたのですが、これらから私の狙い通りの制度として運用されていることが改めてわかって、心強く感じた次第です。

スクール側でも、どんな職場でも決まればいいというのではなく、キャリア・コンサルタントを用意し、その人が受講者と面談して、どういう仕事に就きたいのか、あるいはどういう仕事に向いているのかなどについて対話しながら、受講者に適した職場が見付けられるようにアドバイスしています。スクールは厚生労働大臣の認可で求職者支援制度の適用を受けるのですが、講座の質の向上を図るために就職実績が一定の水準以下のスクールの場合は認定を取り消すこともあります。スクール側も就職実績を上げるために努力しなければならないのです。

制度の導入当初は不正を働くスクールも出ました。それで新聞に掲載されたこともあるのですが、この制度については有識者を入れて、常にフォローアップしながら改善してきました。今では現場の受講者の熱心さと就職率の高さからもわかるように、費用対効果の高い制度になってきたと思います。

求職者支援制度を常に時代の合わせる

私が求職者支援制度の構想を提起した2000年の初当選時に比べ、仕事の環境も大きく変わってきました。かつては、採用した後で仕事を教えるという会社も多かったのですが、今は、どの会社もそんな余裕はなく、専門的な能力を発揮できる即戦力の人材を強く求めるようになっています。しかも技術の進歩で、ビジネススキルを常に向上させていかないと、一定の報酬が得られにくくなってきました。これからも、求職者支援制度を時代の要請に合わせることで、日本全体の働く力を高め、安心して就労できる社会を実現して参ります。